第5話 そうっと近寄った

 チャリでえっちらおっちら来てみたはええが、緑地てこんな広かったか。久々で忘れてしもた。最後に来たん、子どもらがチビの時分ちゃうか。


 せやせや、バドミントンやろう言うて、打った羽が風で返ってくるもんやから息子が大泣きしよったんや。

 わしは大笑いして、トラウマがどうのて嫁はんにこっぴどう怒られた。

 

 おもろいもんをわろて何が悪いねん。

 人生、笑てなんぼや。笑たらアカン言われたら病気になる。


 それにや、すぐバットとグローブにのめり込みよったから、ええやろ。トントンやな。あれからうちでラケットも羽も見てへんような気ぃは、せんでもないけんど。


 いやそれどころか、かえって良かったか知らん。早うにバドミントンの才能がないことを分かったから、甲子園の手前まで行けたんやからな。

 塞翁も頷きよんで。


 さてと。とりあえず売店探そか。喉が渇いたし、潤してからブラブラしょう。


 毎日「何でおらんねや」言いながらあちこちガサガサしとったら、白い目ぇで見られるようになってしもた。

 しばらく、ここによか。この広さやったら、どっかにおってもおかしない。












 おった。











 まだ探してへん。売店を目指しただけや。それだけや。

 やのに。お。

 おった。

 おったわ。

 一匹、白にトラの模様入ったのん。




 わし、そうっと近寄った。

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