22 無間対抗空中艦隊
コンサート・ホールをそのまま縮小したような
各々は平滑なモニターに目をやりながら、両手を半球型のデバイスに添えている。半球は、いくつかのキースイッチとダイヤルが備え付けられた入力器であった。
無駄なく洗練された入出力のインターフェイス。そして、艦橋内の壁面には淡く発光する白色のパネルがしきつめられている。
――数年前のクァズーレにあっては存在すら考え及ばなかった“未来”の設備が、今やアヤ=ルミナにとっての日常風景になっていた。
「わからないものですね」
アヤは自分のデスクから振り向いて、このコンサート・ホールの最上席――艦長のシートに座る男に話しかける。
「なになに、どうしたんだい突然」
長身痩躯を猫背に丸めた男が、いかにも不健康そうな窪んだ眼窩をアヤに向けた。彼の眼差しは穏やかである。
「あなたに、こうして私達の指揮をとっていただいていること、です。ナメラ=エラーフェ大佐」
「ハハ、まったくまったく。だが、その大佐、という呼び方はいささかナンセンスだね? 階級も、かつての敵味方の区別も、関係がないことじゃないか――この『
ファーザーがもたらした、正しい
――『
宇宙を破壊し、混沌へと戻す者達。
遍く生命から、
ファーザーの正体とは、
自らの落とし子、ひとりの無垢なる
ファーザーは、惹かれたのだ。
かつての
ゆえに絆を求めた。
混沌を攪拌し、世界を廻し続けるための。無間の円環を螺旋へと変じるための。
同胞の絆を。そして、同志の絆を。
「お出ましだ」
ナメラの窪んだ眼窩の奥がギラリと光る。
モニターに映し出されたのは、空の果てから飛来する無数の怪物だ。
喩えるならば、コウモリの翼を持ったオオトカゲ。頭部だけが上下逆さまの人面である。
おぞましい姿をした全長20メートルにおよぶ怪竜は、まるで渡り鳥の群れのごとく大挙してクァズーレ東部沖合いの空を埋め尽くした。
「
冷静な表情のまま、アヤが眼鏡のフレームに手を添える。
数年前の美少女は、今では知的な美女へと成長していた。
「全艦、対空射撃と同時に離水せよ」
ナメラの号令で、超界の周囲に展開された艦船が一斉に、海面に同心円状の波紋を生じさせる。
各艦の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます