14.Whenever you are a gentleman.Ⅱ

 生まれた国がイングランドで良かったような、悪かったような……。

「分かった。悪かった。僕が謝る。二度としないから」

「本当だからね」

「嘘は言わない。本当だから」

「本当だからねぇッ!?」

 僕は謝り続けた。視えない彼女が、本当に涙を流しているのかなんて確認のしようがなかったが、それを言えばまた怒られる。全て僕が悪いのだと、全部決めつけられて終わりだ。

 魔女狩りが、魔女じゃない、魔女じゃないと主張しても、魔女だと決めつけられて死ぬように、僕は冤罪でも謝らなければならない。理不尽で、この世界は納得がいかないことばかりだが、誠意を示すには、相手が望むことを自分が嫌でもしなければならないのだと思う。

 それは自分の心を殺すことに等しい。

 僕が歪んでいるからかもしれないが、案外人を騙すための嘘は慣れれば無意識にできるものだ。――僕は最低だと、僕は思う。

 僕は、案外、裏切り者なのかも。

「ね。嘘じゃないと、証明して見せるから」

 ああ、ごめんよ。ケイティ。

「うん。本当だからね」

 僕は、案外、簡単に、嘘をつけるみたい。

「大事な君に嘘なんて、つくわけがないだろう」

 僕は、どうしようもない、最低な奴。

「だから協力してくれるだろう。君と僕は運命共同体。僕の使い魔は君で、僕は君の主人なんだから」

 僕の本性は誰にも分らない、と僕は思う。自惚れかもしれないが、僕は完璧に騙し通す気であった。

 彼女が完璧に信じていると疑わず、僕はその後も調べ続けた。図書館に行き、そういう本を読み漁る僕は、すぐにそういう奴らに目をつけられる。自殺行為だと彼女は言っていたが、僕は絶対に譲らず、「していない」と言いながら彼女の見えない場所で繰り返す。疑いがかかればすぐことは起きると高を括っていたのだが、案外そのようなことはなく、不思議に思って更に大胆になる。引っかからなければ意味がない。

 餌を撒いても、スカでは意味がない。何度も繰り返し、その度に日々は過ぎていく。

 そうして、ようやくそれは来た。

 でもそれは、やっぱり自殺行為だった。

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