あの素晴らしき世界

あの素晴らしき世界に、神はいた。僕こそが神で彼女こそがたった一人の信徒。命ずるまま、描き出すまま、彼女は美しくあったのだ。僕が、僕だけが見ていたあの素晴らしき世界。暗闇という暗闇を足して掛けて彩った世界。でもそんな世界は彼女の美しさのほんの一滴の雫、一握の砂に過ぎなかった。真っ黒な世界でしか美しくあれないのは僕の方だったんだ。


「嗚呼、女神様」


いつしか信徒になったのは僕。暗黒の中で滑稽に踊って、笑っている。あの素晴らしき世界はもう影も形も塵に還った。

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