4粒

窓ガラスを風が揺らしてカタカタと音を立てている。

ノートにペンを走らせていたコリンズ氏が、手を止めて眼鏡をそっと押し上げた。

フェリシティが手にしたハンカチーフに顔をうずめる。


「いやぁ、是非とも採集したかった。......その泪」


急に沸き起こった小男をひっぱたきたい衝動を、なんとか押しこめて睨むに止まる。鈍い男もその殺気には気がついたのか、ノートから顔をあげ苦笑いを浮かべた。


「失礼、不謹慎でしたな」


根っからのコレクターとはこのような者かも知れない。

記録が終わったのかノートを閉じて、万年筆を胸ポケットへ戻す。


「さてと、これで由来の記録諸々が済みました。」


男は鞄にノートを収めると、代わりに一枚の誓約書をフェリシティの前に置いた。


薄い水色の厚紙に、見たこともない文字が刻印されていた。それなのに、見たこともない文字で綴られた誓約書の内容がわかる。

不思議な感覚だった。


*****

この涙を、ティアーズコレクション協会に譲り渡すことに同意する。

また、この泪にまつわる一切を譲渡することを誓う。

*****


「これにサインをお願いします」

「え?」

「後で返せと言われても厄介ですからね。念のため」


フェリシティは、コリンズ氏から万年筆を受け取ると、誓約書にサインを書き込んだ。


これで気持ちの整理ができるのかしら?

もう、泣かずに居られるかしら?

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