恋煩い?いいえ、姉煩いです。
お姉ちゃんに事件が起きた。
今まで男の人の影なんて全く見えなかった…、
いや、見えないように人事を尽くしていたお姉ちゃんに遂に魔の手が忍び寄ってきたのだ。
「誰よ、あの男は〜!!」
思わず一人部屋で暴れる。お姉ちゃんの妹として変な輩からは全力で守ってきたし、これからもそうするつもりだ。
「あー、わからん!」
ボスッと後ろ向きのままベッドに倒れこむ。
「別にそんなに良い雰囲気っていう感じでもなかったけど…」
ベッドの隅にあるお姉ちゃんから貰ったぬいぐるみを抱きしめる。
『お姉ちゃん隙だらけだから…』
お姉ちゃんはモテる。ふわふわして可愛いし、優しいし、料理が得意だし…良いところ満載。
でもはっきり言って隙がある。いや、ありすぎるのだ。
「天然が困る…」
そう言って思い出すのは様々なエピソード。
—————————————……
『今日の朝ご飯はふりかけでもいい?』
『うん。大丈夫だよ!自分でやろうか?』
『ううん!すぐだから座って待ってて〜』
『ありがとう』
そう言われて目の前に出されたものはラップの上にふりかけが乗ったご飯だった。
『お姉ちゃん…?』
『あれ?卵味のふりかけは苦手だった?』
『そうじゃなくて、これラップ…』
『え?……あっ!ごめんね〜!!』
——————————————…
『もしもし、トモちゃん?』
『どうしたの?お姉ちゃん。何かあった?』
『携帯電話をなくしちゃったんだけど、トモちゃん何処かで見てないかな?』
『……お姉ちゃん何でかけてきてるの?』
『……あっ!そっか!携帯あったよ!』
『もう、しっかりしてよね…』
———————————————……
あの時は恐らくラップをつけて温めたご飯の上にそのままふりかけをかけてしまったんだろう。それに携帯電話のことだってうっかりなんだろうとは思うけど…先が思いやられる…。
「別に阻止したいわけじゃないけど…」
お姉ちゃんは騙されやすいのだ。この前も怪しい勧誘に足を止めてたし…。何から何まで心配になる。きっとそれはお兄ちゃんの愁も同じ気持ちだ。
優しいだけではいけない。それに男絡みの女程面倒なものはないと中学の時に学んだ。
もう泣いてるお姉ちゃんなんて見たくない。
だから警戒するに越したことはないのだ。
「私が守る!!!!」
ベッドの上に立ってガッツポーズを取ると一階からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「トモちゃーん!お風呂沸いたよ〜?」
「はーい。今行く〜!」
それに対し部屋の扉を開けて返事をすると、私はパジャマを持って一階に降りていった。
リビングに顔を出すとお兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒にテレビを観ていた。
「勉強は捗ってる?ゆっくり疲れ取ってきてね〜」
「たまにはちゃんと休息しろよ」
「……うん」
私の野望。
それは…大切なお姉ちゃんを守ること。
「お姉ちゃん、お風呂出てきたら一緒にアイス食べよう」
今はまだ甘えたい年頃なんです。
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