第24話

「平川、親御さんはなんて言ってるんだ?」

「賛成しています、というよりかそもそも母の提案です。」

放課後の教室、担任と向かい合う。

「そうか…。じゃあ、平川は成績も優秀だし、語学も得意だから僕に言えるようなことはないね。そもそも平川の将来だし。」

「はい。」

「お金の面も平川なら多分僕よりずっと考えているんだろうし…。わからないことがあったら英語の東谷先生に聞いてみると良いと思うよ。あとは先輩なら紹介できる。」

「ありがとうございます。」

担任の言葉に素直にうなずく。

進路を決めているし、母とも意志は統一している。ただ背筋を伸ばして向かい合うだけでこの時間は終わりだ。

担任はまだ若く、古典教師でお世辞にも留学について詳しいわけでもない。それでも、私たちのことを決して否定せずに手を貸してくれる。

「思ったより早く終わったな…。次リツだからもし会ったらもう空いてるって言っておいてくれ。」

「はい。…あ、あと先生。」

「なんだ?」

「私が留学志望なこと、みんなに言わないでくださいね。なんか恥ずかしいんで。」

「別に恥ずかしいことではないけど、もとより言いふらすことでもないしな。平川が黙っていてほしいなら誰にも言わねえよ。」

「感謝します。」

軽く頭を下げる。

とは言ったが、要するに凛月に知られたくないだけだ。

帰り道に凛月にも会わないだろう。

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