第22話
「凛雪~進路決めた?」
ほぼ眠れなかった夜が明けて、次の朝。梓は何の気なしもいいとこだが、私にとってはタイムリーだ。
「んー。ちょっとね。」
凛月が聞き耳を立てている気配もする、迂闊なことも言えない。
「凛雪は頭いいからね…夏川はどうするのかな?」
「知らないわよ、凛月の進路は。それは凛月の決めること。」
凛月が会話に入る前に。遠回しに釘をさすためにわざと聞こえるように。
凛月は私の”口を出すな”という意図に気づいたのだろう。微かにしかめっ面を浮かべている。
梓もそれに気付いたのかは定かでないが、私の耳元に口を寄せる。
「でもさ、夏川結構人気あるのよ?面倒見がいいからかしら、年下から特にね。支持率高いわ。まあ、ちょいちょいあんたを見かけてるし、夏川もあんた以外に揺れないから…でも、離れたら食いつく女は少なくないわよお~。」
「そうね。」
そうとしか言いようがない。むしろ少し安心した。私が凛月のもとを去っても、凛月は一人にならない。春陽ちゃんたちだけじゃない。ちゃんと今の私の場所に立てる人がたくさんいる。それくらいの自惚れは許されるだろうか。
「それでも、選んだ道を妨げたくはないし、妨げられたくもない。」
それが、私の本音だった。
「ラブラブねえ…。」
梓はいい方に誤解したらしい。そもそも私は凛月のことは好きだが、付き合ってると一言でも言った覚えはないのだが。
この愛が、肉親に向けるものだ、と誰かに言われてしまったら違う、という勇気は正直、ない。
「それに…。」
私も梓に倣って耳元に口を寄せる。
「どこまで行ったって、運命は追いかけてくるんだよ。」
「何それ。」
そう言って梓は笑った。私も同じようにクスクスと笑ってはみたけれど、私の元に10年越しで追いかけてきた運命がある以上、笑える話ではなかった。
凛月に触れるたび、愛しさがあふれる。
もう触れられない場所に逃げてしまえば、愛しいと思う気持ちもなくなるのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます