第11話
「母さん。」
「なんです?凛雪。」
葬式を終え、家に帰って母と相対する。
「もうお気づきかもしれませんが…私の話に時々出てきていたリツキ、というのは、私と同じ凛に月、と書く少年です。そして、私のかけがえのない唯一無二の大切な恋人です。」
彼のことを母に恋人、と称したのは初めてで、そんな状態じゃないというのに、照れ臭い。
「それが許されない関係であったなんて思ったことはなかった。似た名前も、趣味も運命だとすら思っていたんです。それは、凛月もでしょう。それが血が半分でもつながった兄妹だなんて思ったことはなかった。」
母は苦悩を浮かべる。同じ父親を持つ子が、同じような土地で生き、恋人になるなんて確率が低すぎる。
今どきシングルなんて珍しくはないが、今は母の重荷だろう。
「私たちが、離れるべきだなんて、重々承知。許されないことも。それでも、離れたくないんです。…きっと凛月も。凛月がこのことを知っているのかはわかりません。でも、許してください。約束します。禁忌に触れるようなことはしません。だから私と凛月が同じ学校に通う最後の時間を許してください。あと、ほんの少しだから…。」
凛月の気持ちが手に取るようにわかって、正解だと確信できた。これは、私たちが兄妹であるゆえなのか、恋人であるゆえなのか。後者であればいいと願わずにはいられない。
私たちが同じ学校に通える時間はあとわずかだ。進学先のことなんて考える甘さはもう捨てるしかない。
「凛雪…。」
母は苦痛を浮かべる。
「私の決められることじゃないわね…。ごめん、凛雪。私も正直嵐が死んで、あんたの恋人も嵐の子と聞いて、混乱してて…。でも、私はあんたが決めたことに反対はできない。凛月君と二人で決めなさい。」
「母さん…。」
確かに無神経だった。私ができ、産むために家族と縁を切るくらいには愛していた人が死んだのだ。母の混乱は私とさして変わらないだろう。
「凛月…。」
どうしようもなく、彼に会いたかった。
別れのためのカウントダウンを、彼と共に刻みたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます