第10話

この絶望と怒りと哀しみをぶつけるべき人は呑気に死んでしまった。

母にも、凛雪にも義妹にもぶつけられるわけがない。もちろん春陽にも。春陽はまだ、俺と半分しか血が繋がってないことすら知らないのだから。

叶うことなら、凛雪がこのことを知らずにいて欲しい。

父が死んだと言う事実よりも、異母兄弟が2人もいたことよりも、父が他に家庭があったことよりもなによりも、凛雪のことがショックだった。

「俺と凛雪の誕生日4月違いだし。」

なんと言うわけでもない。ただ俺のことを母が妊娠していることをわかっていて凛雪の母と関係を持ったのかもしれない、とふと思っただけだ。

最も父のことだ。

たまたま俺が先に宿ったと言うだけなのかもしれない。

父は二股に罪悪感など毛ほども抱かない人間だったのだろう。

じゃなきゃ、違う女に子供を3人も作れはしない。

「俺にも同じ血が流れてる…。」

叶うことなら、凛雪と共に生きたかった。

なぜ、それだけだったのに罪になってしまうのだろう。

凛雪と幸せになりたかった。

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