第5話 俺と私の強
私は、自分の部屋のパソコンで、輝君にメールをした。
[輝君。今日は、突然、私と付き合ってくれて、有難う。そして、ありのままの私を受け入れてくれて、有難う。輝君が、3回も会えるという事は、縁があるのかもと言ってくれた事、私に会いたいと思ってくれていた事、とても嬉しかった。今だから言うけど、本当は、私も、あなたに会いたいと思っていたの。会って、3月の時のお礼が言いたいと思っていたから。それが叶って、良かった。また、会える時を楽しみにしています。]
5分後、輝君からメールが届いた。
[スズメ。メールを有難う。いつ来るかと、楽しみに待っていたよ。昼食で、君が鶏の唐揚げを爆食いしているのを見て、楽しいと言ったけど、本当は、それだけじゃないんだ。可愛いのに、爆食いするというギャップに惹かれたんだ。これから、付き合う内に、君のどんな姿が見られるのかワクワクするよ。初デート記念写真を添付するね。俺、普段は、写真を撮っても、無表情な事が殆どなんだけど、今日の写真を見てみたら、笑顔になっていたんだ。どうしてだろう?きっと、君が傍に居たからかもしれない。俺は、そう信じてる。また、メールするね。]
早速、添付された写真を見た。背景には、鯉のぼりが写っている。私は、学校で、輝君の笑顔を見ているけど、それと全然変わらない。ダイヤモンドの様に輝いている。私といるからではなく、元々、輝君の心が綺麗だから、自然と笑顔になれるんだと思う。私の場合は、好きな人の前では、笑顔を絶やさずにいたいという意識があるけど。でも、私と居るから笑顔になれるのかもしれないと言ってもらえるのは、とても幸せ。
幸せに浸っている最中、園から電話があった。
「強。真癒君とは、上手くいったの?」
「園。彼氏募集中だなんて、嘘言わないでよね。私が輝君の彼女になりたいと思われるじゃない。」
「あれ?あれれれー?輝君?」
「名前で呼んで欲しいって言うから・・。」
「で、強は、何て呼ばれたの?」
「自分で偽の名を作り、それで呼んでもらったわ。」
「どんな名にしたの?」
「・・スズメ・・。」
「女の子らしくて、可愛いじゃん。」
「スズメと言われる度に、ドキドキするの。」
「昼食は、どうしたの?」
「・・女の子らしく出来なかったけど・・」
「何々?早く言ってよ。」
「唐揚げを30個も食べちゃったの。」
「初デートで、早速やっちゃった訳ね。で、彼の反応は?」
「可愛いのに爆食するというギャップに惹かれたと・・。」
「超良い人じゃん。外見については、何か言ってた?」
「私らしく居る姿を見る事が、幸せだと言ってたわ。」
「絶対、強に気があるよ。」
「そんな事ないよ。」
「もう、何照れんのよ。愛されてんだから、自信持ちなよ。で?次は、いつ会うの?」
「まだ未定。でも、メールのやり取りをする事になったの。」
「良かったじゃん。距離がぐっと近付いたね。」
「でも、学校で毎日会うけどね。」
「男としてと女として会うのでは、違うでしょ。それに、男でいる間は、女としての強の存在は、記憶から消去される訳じゃない。悲しいよね。ただの男友達としか見られないんだよ。」
「例え、外見が男になったとしても、心は、輝君を想う女のままだもの。彼の中から、一時的に、女の私が消えたとしても、私の中に、彼とデートした思い出が残ってる。それで良いの。」
「さすが、強だね。」
「そうよ。私は、強。心を強く持ち、前に進むぞー。GO!」
ゴールデンウィーク後の最初の登校日。今日は、暫くぶりに、早朝の7時50分に教室に着いた。輝君が先に教室に居る。
「おっはー!輝。」
「おっはー!勇飛。ゴールデンウィークは、楽しめた?和村と遊んだんだろ?」
「ああ。ゲーセンでな。」
そういえば、輝君の記憶は、どう変わってるんだろう?気になる。
「輝は、何してたんだ?」
「俺は、和村に、彼氏募集中の友人がいるから会ってくれないかと言われ、和村の友人に会っていたんだ。」
そこは、変わらないのね。
「差し支えなければ、その子の名前を聞いて良いか?」
「スミレ。」
お嬢様っぽい名前になってる。
「あのさ、外見は、どんな感じだった?」
「赤いリボンのカチューシャをして、ツインテールで、ピンクのフリフリのスカートだった。」
随分、女の子らしい。実際の私は、カチューシャはしてないし、ポニーテールで、黄色のTシャツに、Gパンだったのに。比較するのが面白くて、つい、笑ってしまった。
「勇飛、どうしたの?」
「いや、思い出し笑い。」
だって、普段の私と対象的な女の子らしい人の記憶に変わってるんだもの。
2時間目の前の10分休み。姫音が、私の所に走って来て、抱き着いた。
「勇飛君、久しぶりね。どれだけ会いたかったか。」
「離れろ。」
「嫌よ。会えなくて、淋しかったんだから。」
「友人と、国内旅行して来たんだろ?」
「友人には、申し訳ないけど、勇飛君と二人で行けてたら、数倍楽しめてたと思うわ。」
「おいおい。本当に失礼な事を言うな。」
「それで、強に愛の告白でもした気になってんの?」
「あら、和村さん。勇飛君を私に取られ、嫉妬してるのね。」
その時、輝君が、姫音の腕を掴み、私から離した。
「勇飛に触れるな。彼は、僕だけの大親友なんだからな。」
輝君の言葉が嬉しい私。
「ちょっと、勇飛君。何故、顔を赤くするの?相手は、あなたと同じ男よ。まさか、恋をしてる訳じゃないわよね。」
「強、僕は、君だけの大親友だよね?答えて。」
「いいえ。強は、私だけの大親友よ。あなた達より、一番長く強の傍にいるんだからね。ね?強。」
今度は、私達の会話を聞いていた私のファンクラブの女子達が、強様は自分のモノと入り込み、更に、男子達が、俺だけのスターだと入り込み、クラス中が私を巡り、大喧嘩に。
「あーもう!頼むから、皆、仲良くしてくれ!」
昼休みになり、屋上へ。そして、姫音から、おかかにぎりを20個渡され、輝君からも鶏の唐揚げのカレー味にぎりを20個貰った。そういえば、スミレちゃんは、爆食いしたのかな?
「なあ、輝。ゴールデンウィークの時さ、スミレちゃんは、どんなのを食べてた?食べた量は、普通だった?」
「勇飛は、スミレの事に、随分、興味を示しているね。」
今迄は、普段の私とは、正反対
だったんだもの。きっと、今回もそうよね。
「野菜好きで、ご飯の野菜サラダサンドというのを食べていたよ。少食で、それしか食べてなかったよ。」
やっぱり、私とは、正反対ね。
「強。話してる間に、おかかにぎり5個と唐揚げにぎり5個食べたのね。」
「ワイルドでス・テ・キ。」
姫音の目は、輝いた。
「そうか?」
「僕は、ワイルドな女性が見てみたい。そのスミレって子がさ、突然、大食いに変身。しかも、肉好きになり、ステーキ100個食べるんだ。」
「あら、レディーたるもの、大食いだなんて、はしたないわ。」
元の姿の私なら、姫音に、完全に嫌われてる。だって、好きなものは、爆食いするもの。
時が経ち、体育祭当日。椅子の置場は、クラスの指定位置内であれば、自由なの。園・輝君・姫音・マッヒーは、私の右か左隣の位置を狙い、ジャンケンで争っているわ。
「ヨッシャー!勝ったー!僕は、強の右隣。」
次に勝ったのは、姫音。
「オーッホッホッホ。今日は、ツイてるわ。勇飛君の左隣は、この私よ。」
ウワー!姫音が隣だと、ワーワーギャーギャーうるさそう。一方、輝君は、悲しそうな表情だった。
「俺、勇飛の隣になりたかった。」
「暗い顔すんなよ。隣でなくても、すぐ近くに座んだから。」
「勇飛は、僕の隣に座るのが、嫌なのかい?」
「そんな事言ってないだろ。俺も、残業だよ。輝の隣になれなくて。」
「それは、本心かい?」
「当たり前だろ。輝は、心配性だな。」
「真癒君。強の隣になりたかったのは、私も同じよ。私達二人は、前に座りましょう。後ろを向けば、すぐに、強が見れるわよ。」
「そうだね。」
「ええ、そうなさい。二人で慰め合うが良いわ。」
姫音・・そこまで言わなくても・・。
いよいよ本番開始。
まずは、吹奏楽部の吹く『星条旗』に乗り、入場行進。
「ターララターラララー。ラララーラララーラーララーラ。」
「強。随分楽しそうだね。」
「自分がペットを吹いてるつもりでな。」
「そういえば、強は、小学時代、ブラバンやってたって言ってたよね。」
「ああ。小学の運動会の時の入場行進は、『鉄腕アトム』と『アンパンマン』を吹いてたな。」
「強は、カレーパンマンが好きなんだろ?カレー好きだし。」
「分かり易過ぎだよな。マッヒーは?」
「僕は、ジャムおじさん。あのほんわかした表情に癒されるんだ。真癒は?」
「当ててみて。」
「俺が当ててやるよ。アンパンマンだろ。・・ていうか、アンパンマンは、輝そのものって感じだからな。自分の事より他の人を救おうとする優しい所がな。」
輝君は、赤面した。
「勇飛に、そう言われると、嬉しいよ。」
次は、大玉送り。私のクラスは、絶対勝つぞと盛り上がっていた。更に、また、喧嘩が始まった。
「真癒君。いつかの練習の時の様に、ぼーっとして、玉を落とさないで頂戴。」
「たった1回だけ起こった事に、まだこだわってるのか?」
「当たり前よ。もし、また同じ事をしたら、あなたから、勇飛君の親友の権利を剥奪するわ。」
「親友になるのは自由だ。権利は、存在しない。」
「さすが、私のライバルね。それでこそ、いつものあなたよ。」
あれで、一応は、輝君の心配をしてるつもりなのかな?
何はさておき、白組は、誰も玉を落とす事なく、赤組に勝利した。
騎馬戦。
「園!頑張れよ!」
左隣では、姫音が、つんざく声を出していた。
「体ボロボロになるまで燃えろー!」
「刄魔。うるさいぞ。隣の勇飛に迷惑だと思わないのか。」
「ここまでしなければ、勝利しないわ。」
「白組!ファイトー!」
「真癒君は、普通過ぎよ。しかも、声が小さいわ。そんなんじゃ、勝利の願いは、届かないわよ。ね?勇飛君。」
「姫音は、応援で、随分凄い事を言うな。」
「勇飛君は、どんな応援をするの?」
「輝の様な、普通の応援で良いだろ。」
「獲物を見たら、何も考えるな!ただ、前だけを向いて、突進せよ!」
「それ、イノカイザーのサビの部分じゃねーか。マッヒー。やるな。応援にピッタリだぞ。」
「中学の体育祭で戦隊モノだなんて、幼稚過ぎるわ。」
今度は、同じ部分を私が歌うと、姫音は、コロッと変わった。
「カッコイイ!勇飛君の魂の込もった声に惹かれたわ。私も歌うわ。」
「じゃあ、一緒に歌うか?」
「はい。」
今度は、私と姫音の二人で歌った。
「ああーん!歌詞が素敵!」
「僕が歌った時は、幼稚だとか言った癖に、何なんだよ。刄魔の奴。」
「俺は、普通過ぎだと言われた。」
「真癒は、まだ良いよ。まあ、確かに、この歳になって、人前で、堂々と、戦隊モノ歌う方が、どうかしてんのかもしれないよな。」
園は、騎馬の一番上で、相手に鉢巻きを取られそうになりながらも、必死で耐え、ワーッと大声をあげながら、相手の鉢巻きを取る事に専念していた。園の勝利への強い執念のおかげか、誰にも鉢巻きを取られず、見事に、相手から鉢巻きを奪いました。
「園。やったな!」
「強・広君。有難う。イノカイザーの歌が効いたよ。」
「ちょっと。私も歌ったのだから、お礼なさい。」
「あら、歌ってたの?知らなかった。」
「まあ、何てしらじらしいのかしら。勇飛君と広君の声だけ聞こえ、何故、私の声は、聞こえないの?」
「アンタが戦隊モノを?信じらんない。くだらないと言ってそう。そんな事より、アンタ、随分酷い事言ってたわね。体がボロボロになるまで燃えろですって?人を死なせる気?」
「立派な応援よ。あなたは、考え過ぎよ。」
「何だとー!」
園と姫音は、互いの頬をつねり合っていた。
「ウワッ!痛そう。僕は、あんな事されたくないな。」
玉入れ。
「ウッヒョー!待ってましたー! 玉を沢山入れるぞー!」
「マッヒーは、張り切ってんな。」
「勇飛。」
輝君が、私の手を握った。
「俺と一緒に楽しもう。」
「そうだな。玉入れは、争いというより、楽しむ方だよな。」
「ちょっと、真癒君。その気の緩みが、負けへと繋がるのよ。白組を勝利へ導く気が無いの?」
「そう言って、俺と勇飛を引き離す気かい?」
「話を反らさないで。」
「僕は、絶対に引き離す為の台詞だと思うね。そもそも、体育祭の前、真癒が強を独占しないか、監視するって言ってたもんな。」
さあ、玉入れの始まり。マッヒーは、一つ一つ慎重に投げていた。自分の持った玉の全てを籠に入れる事にこだわっているみたい。私は、最低一つ位入れば良いと思いながら、ソフトに投げていた。まだ、籠には、入っていない。
「勇飛。投げ方が可愛い。」
赤面する輝君。
「輝は、投げないのか?」
「投げながら君を見ていたよ。僕は、玉を入れる事なんて、どうでも良いんだ。ただ、君が玉を投げる姿を、傍で見ていたいだけだから。」
「真癒君、ふざけるのも程々にしてちょうだい。私を見ていなさい。」
姫音は、玉を4つ持ち、マシンの様に、素早くバババっと投げ、全て籠に入れた。
「スッゲー!まるで、漫画の世界から出て来たみたいだな。カッコ良かったぞ。」
「勇飛君に褒めてもらえるなんて、とても幸せ。」
赤面する姫音。姫音の玉投げを見た輝君は、嫉妬。
「俺だって、勇飛の前でカッコ良く投げてやる。」
輝君も、玉を4つ持ち、姫音の投げ方を真似てみたけれど、彼女の様には行かず、1つも籠に入らなかった。
「クッソー!めっちゃ悔しい!カッコ悪過ぎだよ。」
「あれは、私だけの得意技ですもの。あなたに真似出来る訳ないわ。」
「輝。気にすんなよ。普通に投げれば良いだろ。姫音は姫音。輝は輝。自分らしく投げろよ。」
輝君は、笑顔になった。
「有難う、勇飛。」
今度は、1つの玉を持ち、籠を狙い、慎重に投げた。そして、見事、籠の中に玉を入れた。まるで、バスケのシュートを見ているみたいだった。
「勇飛。今の俺、どうだった?」
「今の方が、輝らしくて、良いよ。」
「本当?勇飛にそう言ってもらえると、嬉しいよ。」
「よし。俺もやるぞ!」
輝君を見ていたら、絶対にシュートしてやるって、欲が出て来たのよね。そんな時、後10秒という声が響いた。私は、急いで、玉を投げたけど、1・2回目は、入らず。3回目は、籠に入りそうで、少々跳ね返ったものの、時間ギリギリで籠の中に入った。
「勇飛!やったな。」
輝君は、私の手を握った。
「ああ。サンキュー。」
「ちょっと。私の勇飛君に触らないで。」
姫音は、輝君の手を掴み、私から離した。そして、私の手を握った。
「勇飛君がシュートをする時の熱い眼差しに、心を打たれたわ。」
「そう・・それは、どうも。」
「おーい。僕を忘れてないかい?」
「マッヒーは、1つも落とさずに、シュート出来たか?」
「2つ落としたけど、後は、全部入ったよ。」
「楽しめたみたいだな。」
「うん。強は、楽しめた?」
「争いでも楽しむでもなかったな。まあ、1回、ギリギリで籠に入ったんだから、それで良いかな。」
そうは言ったものの、時間ギリギリで玉が籠に入ったという事が嬉しい私でした。
昼食の時間。いつも通り、屋上で過ごしたわ。今日の私の昼食は、輝君の作った豚肉弁当なの。以前、私と一緒に食べる条件として、輝君と姫音が争いをしない事だと言ったんだけど、行事の時位は、お弁当を作らせてくれと二人して言いだしたの。しかも、ジャンケンで決めたいと言うの。私は、前みたいに、私の口に食べ物を運ぶなんて行為をしなければ良いと許可したの。それで勝ったのが、輝君なの。
「あーあ、悔しい!何で白が負けちゃったのよ。」
「姫音、まだ言ってんな。」
「玉入れ位で、何怒ってんのよ。」
「やはり、白は、皆、やる気が無いのね。」
「強。真癒の作った弁当、美味い?」
「こんな味の肉、初めて食べた。なんか、山葵っぽい。辛さはなく、味がって事だけど。」
「今回は、山葵醤油風味にしてみたんだ。」
「スッゲー美味い。力が湧いてくる。午後の100メートルリレー、頑張れそうだぜ。」
「僕の作った弁当が、勇飛のエネルギーになる事が、とても嬉しいよ。」
「そうよね、私達が出るのは、後、それだけよね。マッヒーは、最初の方だっけ。」
「僕は、タイムが遅いから。皆と離れちゃったね。」
「ウチの中学は、不思議よね。一部の競技は、男女混合だもんね。私の出た騎馬戦は、男子と女子と分かれてたけど。玉入れもだったけど、リレーも男女混合じゃない。私は、真癒君にバトンを渡すのよね。」
園が羨ましい。私が輝君にバトンを渡したかったのに。私は、普通の女の子として、ここに居る。輝君は、アンカー。私が息を切らしながら輝君にバトンを渡した時、輝君が、よく頑張ったねと笑顔で言い、私の頭を撫でてくれるの。そして、俺が勝利をプレゼントするから任せてとカッコイイ台詞を言って走って行くの。
「強、大丈夫か?ボーっとして、別世界に行ってるぞ。」
「いつかの真癒君みたいね。」
「きっと、私の事を考えているのよ。」
「は?アンタの事?絶対無い無い。」
「アンカーの勇飛君にバトンを渡すのは、この私。皆、走るのが遅いから、他のクラスに負けているんだけど、私が初めて追い抜かすの。そして、1位で勇飛君にバトンを渡すの。そしたら、それでこそ俺にふさわしい女だと言って、頬にキスしてくれるの。」
「アンタがやらなくても、強が必ず1位を取るわよ。彼が、100メートルを2秒で走る事を忘れたの?」
体育祭の午後の部。今のところは、赤が勝っている。
「オラー!白!負けてんぞ!優勝あるのみ!倒れるまで速く走って、燃え尽きろー!」
「刄魔の奴、また、酷い事言ってるな。倒れるまで速くとか、燃え尽きろとか、人を死なせる気かよ。つんざく声も変わらないし。」
「真癒君。刄魔さん、応援に夢中になってるみたいよ。今なら、強と二人切りになれるんじゃない?」
「勇飛。ここを離れよう。」
「本気で二人になるのか?」
輝君は、私の腕を掴み、席から遠く離れた。
「何すんだ?」
「ここにしゃがんで。」
「・・はあ・・」
輝君は、私に、石を渡した。
「これで、絵を描こう。」
「砂で絵を描くなんて、懐かしいな。小学の低学年の頃、やってた。中学になって、砂のお絵かきだなんて、輝は、可愛らしいな。」
「嫌かい?」
「俺は、構わないぜ。輝が、どんな絵を描くか楽しみだからな。」
暫く経ち、輝君の絵を見る私。
「栗鼠じゃねーか。輝、こんなん描くんだな。」
「可愛い動物には、癒されるんだ。」
「栗鼠も可愛いけど、それを描く輝も可愛いぞ。」
「そうかい?君にそう言われると、照れるよ。勇飛は、兎を描いたんだね。」
「俺も、可愛い動物見てると癒されるんだよ。」
「二人して、動物を描くなんて、俺達、心が通じ合っているのかもしれないね。」
輝君と、動物園デートもしたいな。
「俺、最初、輝は、ゴッドレンジャーを描くんだと思ってたけど、まさか、動物を描くとはな。」
「勇飛。もし、俺が神の弟子で、一時的に、地球に居たけれど、今日の深夜に天に戻らねばならなくなったら、どうする?」
「どうするって・・天じゃ、メール出来ないだろ。あ・・でも、神には、魔力があるよな。メールじゃ、顔が見えなくて淋しいから、テレビ電話みたいな感じでさ、魔力を使用すると、俺の前に、天に居る輝の映像が出る。そうなれば、いつでも、お互いに、顔を見ながら会話出来るから、お互いに淋しくならない。」
「そこまで考えてもらえて、とても幸せだよ。最初は、別れたら、そこで終わりだと言われるんじゃないかと、心配だったんだ。」
「そんな事言う訳ないだろ。遠く離れるから、そこで縁が切れるだなんて、有り得ねーよ。親友だしな。」
「勇飛。」
輝君は、涙した。
「輝は、心配性だな。俺の事、薄情者だと思ってんのか?」
「俺、勇飛の事になると、何故か、欲が出るんだ。刄魔の君に対する想いは、尋常じゃない。だから、彼女に、君を独占されないか、心配なんだ。君の心が刄魔に奪われるんじゃないかと心配なんだ。」
「そう言う輝も尋常じゃないぞ。抱きしめてきたり、姫音の真似して、おにぎりを、俺の口に運んだりとな。俺ら、男同士なのに。でも、そうやって熱くなる輝も良いと思う。輝が姫音と争うのを見る度に、俺の事を一番の親友だと思ってくれてると嬉しくなるからな。」
「勇飛。大好きだよ。」
何か、愛の告白をされている様で、とても幸せ。
「俺も、輝が好きだぜ・・って、男同士で何言ってんだよ。キモいよな、俺ら。」
「有難う。勇飛の口から、はっきり好きと言ってもらえて、幸せだよ。よし、これからも、刄魔に負けないぞ。」
「誤解すんなよ。決して、喧嘩は、勧めてないからな。」
「これからも、君の目の前で、俺が一番の親友だってメッセージを送り続けるから。」
「しなくて良い。輝のメッセージは、十分に伝わってるから。」
「俺、刄魔に負けないから。」
「だから、喧嘩すんなよ。」
いよいよ1年生のみの100メートル走となった。私が居れば、我がクラスは1位だと、走る前から喜ぶファンクラブの女子達。他のクラスの同じアンカーの男子達から、私を目指し、精一杯走るから宜しくと握手される。部活の先輩方が、陸上部の期待の星と、大きな声で叫んでいる。
100メートル走スタート。
「マッヒーは、3番目だな。」
「どうでも良いわ。」
「でも、姫音は、白に優勝してもらいたいんだろ?」
「私は、勇飛君のミラクルランが見られれば良いわ。」
とか言いながら、随分と騒音だけど。
「オセーぞ!もっと焦ろ!エンジン全開!5秒で走れ!」
キツい事言うなー。
「ギザ村ー!2位で安心してんじゃねー!それでスーパーボーイの友人かー!」
園の苗字は、和村だから・・。園の心がギザギザしてるって?姫音と園は、会えば、喧嘩ばかりだもんね。
「ヨッシャー!よくぞ抜かした!そのまま突っ走れー!」
勝ちにこだわると、姫音は、別人格になるのね。
ところが、輝君の何人か後で、順位が3位に下がってしまった。そんな中、次に姫音が控えている。
「あーもう。許せない。何でまた、順位が下がる訳?」
「姫音。無理すんなよ。」
「勝てと言って。私、必ず1位を取り返すわ。」
「姫音らしくおもいっきり走れよ。」
「勝てとは、言ってくれないの?」
「姫音には、姫音の走るペースってもんがあるだろ。素直に、それに従って走れよ。」
「私、勝つから見てて!」
「人の話を聞いてたか?」
バトンを貰った姫音が走り出した。前との距離が、かなり離れている状態である。彼女は、私の走りを真似ようと思っているのか、無理に速く走っている様に思われる。
「ウォー!」
走りながら、大声をあげて走る人を初めて見た。まあ、それが、彼女なりの気合いの入れ方なのかもしれないけど。そのおかげなのか、現在は、2位。
幽霊!いよいよアンタの出番よ。走りたくて、ウズウズしてたんでしょ?皆が、アンタの活躍を期待してる。仕方ないから、アンタのワガママに付き合ってあげる。おもいっきり暴れるがいいわ。
私の隣で、現在1位のクラスが、アンカーにバトンを渡した。それから、5秒後位に姫音がやって来た。
「勇飛君。後は、頼んだわ。」
「ああ。任せとけ。」
バトンタッチ!その瞬間、空中に浮いているかの様に、体が軽くなった。走っているという感覚が無い。不思議な事に、今では、前を走る人の姿が少し見える様になっていた。以前は、走る事で精一杯で、周りが何も見えていなかったのに。動体視力が鍛えられたのかな?一瞬で前を走る人の横に並んだ。その瞬間、ファンクラブの女子達が強様と叫ぶ声や、陸上部の先輩方がミラクルランナーと叫ぶ声、その他の生徒達が頑張れと叫ぶ声が聞こえた。
「強!カッコイイぜ!」
「強!もう少しよ!」
マッヒーと園の声が聞こえる。
「勇飛!好きだー!」
もう、輝君ってば、皆の前で大声で言われたら、恥ずかしいよ。実際は、私でなく、幽霊の意志の力だから、皆の応援を受けて一番喜んでいるのは、幽霊な筈なのに、何故か、元々、自分に超速力が備わっていたかの様に思えて、応援される事が快感なのよね。快感に浸りながらも、目の前にゴールが見える。良かったね。幽霊!アンタは、学校中のスターだよ。
あっという間にゴール!大歓声がわいた。そして、私は、1位万歳・白組万歳と言われながら、クラスメイト達に胴上げされた。ウワッ!ちょっとー!落とさない様に気をつけてよ!更に、陸上部の先輩方からも、陸上部のエースだと言われながら、再び、胴上げされた。違うクラスの人達からは、自分のクラスを応援する筈が、私の走りに釘付けになり、つい、応援してしまったと言われた。同じアンカーの男子達からは、握手を求めれ、更に、弟子にしてくれとまで言われてしまった。勿論、お断りよ。私の力ではないから。
「強!先生がストップウォッチで測ってたんだけど、今日も、いつも通り、2秒だったって。良いなー。僕も、強みたいに走れたら良いのに。」
「勇飛。1位おめでとう。強くなったな。」
「そうか?サンキューな。」
「それにしても、珍しい事に、刄魔さん、強が走ってる時、声を出して応援してなかったよね。ただ見てただけ。一体、どうしたのかな?」
「僕は、罪悪感を感じていると予想するよ。自分が1位の状態で、強にバトンを渡す筈が、結局、2位だったしね。それに、勝ちにこだわってたから、1位の人を追い抜けなかった事で、プライドが傷付いたんじゃないかな。」
姫音は、皆から離れたところで、ぽつんと一人でいた。
「そんな悲しい顔すんなよ。」
「勇飛君。」
「最終的に、1位になれたんだから、良いじゃないか。」
「私、醜態をさらしたわ。勇飛君に、1位の状態で、バトンを渡すと言っておきながら、結局2位だったのよ。自分が情けなくて。あなたに、何とお詫びすれば良いか・・。」
「自分を責めんなよ。姫音は、姫音なりに、精一杯走ったんだから、それで良い。」
私が姫音の頭を撫でると、姫音は、泣し、抱き着いて来た。
「どうして・・どうしてそんなに優しいの?」
「順位ごときで、何で責めなきゃなんないんだよ。よく頑張ったな。お疲れ。」
姫音は、暫く、泣し続けていた。
今年の体育祭は、白組が優勝した。本来なら、白組の応援団長の3年生が優勝旗とトロフィーを受け取るのだが、今回は、特別に、私が受け取る事になった。2秒で1位を獲得し、白組を優勝に導いた事をたたえての事らしい。校長から、優勝旗とトロフィーを渡され、校長からおめでとうと言われた。すると、大きな拍手をされた。
体育祭が終わり、教室では、皆でどこかで優勝食事会をやろうと盛り上がっていたのだが、私が断った為、主役が居ないんじゃつまらないと、無しになったが、代わりに、また、白組万歳と言われながら、胴上げされた。
学校帰りの事。
「なあ、強。皆とは駄目でも、個人的になら良いだろ?僕んちで、一緒に夕食しない?」
「広君。人の話を聞いていたかしら。勇飛君は、早く、帰宅したいのよ。私達は、さっさと帰るわよ。真癒君もよ。じゃあね、勇飛君。」
「ああ、またな。」
「それにしても、私の家に来てとか争わないなんて、彼女らしくないわね。」
「おそらく、リレーの後、慰めたから、それが効いてるのかもしれないな。」
その時、後ろから、私を呼ぶ声がした。
「勇飛。待って。」
「輝。どうした?」
「学校に忘れ物したと、ごまかして来た。」
「あのさ、俺の家に来ない?勇飛の好きな物をご馳走するよ。」
「強、折角だから、行って来なよ。邪魔者は、去りますから。」
「何言ってんだ。さっさと帰るぞ。輝。お昼の弁当サンキューな。山葵醤油風味の豚肉、凄く美味かった。また明日から、カレー唐揚げおにぎり、頼むな。」
「うん。勇飛の力になる様に、心を込めて作るよ。今日は、お疲れ様。」
「輝もお疲れ。また明日な。」
「また明日。」
輝君と二人切りで、砂に絵を描いたり、リレーで走っていた時、輝君に好きだと言われてドキドキしたりして、素敵な日だったなー。後、もう一つ言うならば、私は、幽霊の生前に叶えられなかった事を叶える為に、付き合ってやっただけなのに、少し嬉しい気分になれた不思議な日だった。
中間テストが近付いている。今、家で勉強中です。
「あー、もう。何これー。訳分かんないよー。もー、やーめた。」
勉強を放り出した私は、パソコンのメールをチェック。すると、輝君からのメールが入っていた。
[スズメ。中間テストの勉強は、はかどっているかい?もし良かったら、二人で、図書館で勉強会をやらないかい?]
嬉し過ぎるよー。今月2回目のデート・・いや、勉強会。勉強の事は、考えたくないけど、女として、輝君に会える事が嬉しい。
[勉強会のお誘い、有難う。今週の土曜日は、どう?]
[今週の土曜日だね。良いよ。そうしよう。君に会えるのを楽しみにしているよ。]
ああ、早く土曜日にならないかな。
土曜日。輝君が、私の家に迎えに来てくれたわ。
「わざわざ、ここまで来てくれて、有難う。ここまで歩くの、疲れるでしょ?」
「スズメに会えると思えば、疲れなんて、感じないよ。それに、良い気分転換になる。」
輝君。いつも、私を気遣う優しい言葉を有難う。大好きよ。
私の家から、5分歩いた所にある図書館に行ったわ。
「数学だよね。」
「本当をいうと、化学も英語も全然わからないの。でも、今日は、数学で。」
「俺と教科書が同じなんだね。」
「偶然ね。」
本当は、男として、同じ学校に通ってるけど。
「範囲は、どこまで?」
「ここまでよ。」
「範囲も全く同じだね。どこが分からない?」
「まずは、ここなんだけど。」
「ここは、こーすると、こーなる。ここまでは、分かる?」
「うーん・・もう一度良い?」
「分かるまで、何度でもやろう。」
午前10時に待ち合わせ、お昼を食べずに、午後3時まで、ひたすら、輝君に数学を教えてもらっていた。
「じゃあ、ここは、こーして、こーなるという事?」
「正解。お疲れ様。」
「お昼の事、すっかり忘れてた。お腹空いてる筈なのに、付き合わせて、ごめんね。」
「スズメと過ごす時間が、俺のご馳走だよ。美味しく頂きました。ご馳走様。」
何て素敵な台詞なのかしら。私と過ごす時間がご馳走なんて。
「そろそろお昼にしない?私、急に、お腹が空いて来ちゃった。」
「良いよ。そうしようか。」
私と輝君は図書館を出て、喫茶店に入った。
「輝君は、グレープジュースなんだ。」
「スズメは、イチゴジュースだね。ジュースが好きなのかい?」
「オレンジ・イチゴ・アップル・グレープジュースが好き。」
「俺も全く同じ。」
「本当?好みが一緒で、嬉しい。」
「スズメは、グレープフルーツジュース、飲める?あれ、苦くて、口に合わないんだ。」
「分かる。私も苦いのが苦手なの。医者にかかった時、小さい頃は、オレンジ色の甘い粉薬を貰って、デザート感覚で、美味しいって飲んでた。でも、体が成長したら、急に、白い粉薬になって、恐る恐る飲んだら、急な苦さに堪えられなくて、早く、口の中から、苦さが消えてくれないかなと思って、水を15杯も飲んでしまったの。」
「15杯もかい?余程、苦いのが苦手なんだね。薬といえば、トローチは、なめた事ある?あれは、一口なめたら、ハマる甘さだと思わない?」
「そうそう。やみつきになって、沢山なめたくなるのよね。でも、回数が決まってるから、欲を抑えなくてはならないのが大変なの。」
注文の品が到着。私も輝君も、ホットドックを注文。
「輝君は、2つなんだよねって、普通だよね。」
「スズメは、15個も注文していたよね。店員さんが最初、二人でですねと聞いたら、君が、私だけですと言い、店員さんが、目を大きくして、驚いていたね。」
「驚くのは、当たり前よ。私が普通じゃないんだもの。」
「前にも言ったけれど、スズメらしくいてくれたら、それで良い。」
「有難う。」
「じゃあ、食べよう。頂きます。」
私は、食べ始めると、食べる事に集中し、あっという間に15個完食。
「輝君、食が進んでないみたいだけど、大丈夫?まだ、1つ目の途中?」
「君が元気に爆食している姿がカッコ良くて、見取れていたんだ。どうしたら、そうなれるの?俺も、やってみたい。」
「いや・・その・・私は、元々、そういう体質だから。輝君は、真似しない方が良いよ。お腹を壊すよ。」
「可愛らしい女の子なのに、好きな物を食べる時は、止まらなくなる君が大好きだよ。」
体育祭のリレーの時も好きだと言われたけど、また言われちゃった。とても幸せ。
昼食後、再び図書館へ。
「これは、どうするの?」
「ここは、こーして、あーして・・・。」
午後5時5分。私の家の前。
「今日は、私の勉強に付き合ってくれて、有難う。」
「お礼を言うのは、俺の方だよ。君を誘ったのは、俺で、それに付き合ってもらったんだから。」
「輝君、個別指導塾の先生になったら?輝君は、説明するのが、上手だから。」
「そんな事ないよ。」
輝君は、赤面した。
「もう、輝君ってば、照れちゃって。そうだ、いっそ、私専属の先生になってもらおうかな。数学だけでなく、他の苦手科目も、教えてもらうの。」
「君の専属なら、喜んで引き受けるよ。なんてね。」
「宜しくお願いします。大先生。」
「大先生なんて言われたら、益々照れるよ。スズメ、今度、勉強会する時は、俺の家に来ないかい?あ、いや・・その・・ただのデートでも構わないけど。」
「行きたい。是非、行かせて。輝君の部屋を見てみたい。」
「良かった。大切な友達を、家に誘いたいと、ずっと思ってたんだ。じゃあ、約束だよ。勉強会でもただのデートでも、今年中には、僕の家に来る事。」
「はい。」
「また、メールするね。」
「うん、待ってる。ところで、今日も、私が家の中に入るまで、見ているつもり?」
「うん。君をずっと見ていたい。」
「じゃあ、またね。」
「うん。またね。」
私は、家の門に入り、前を向いて歩きながらも、時々、後ろを振り返る。すると、輝君は、笑顔で私に手を振っていた。なので、私も手を振り返す。再び、前を向いて歩き、玄関の扉を開けた時、輝君の声がした。
「スズメ。大好きだよ。」
今日、2回目だよー!幸せ過ぎるー!輝君の方に振り返った私は、「輝君は、私の大切な友達だよ。」と言った。好きという言葉は、今は、言わない。いずれ、彼に対する恋心を打ち明ける時に取っておくの。
月曜日の昼休み。
「輝、化学教えてくれよ。」
「ちょっと、勇飛君。私の事は、頼ってくれないの?」
「刄魔。勇飛は、俺に話してくれたのに、何で邪魔するんだ。」
「以前、勇飛君が一時、学校を休んでいた時、私は、一度も、ノート当番になれなかったのよ。」
「そうだったな。じゃあ、今日は、姫音に教えてもらうか。」
「勇飛。俺は?」
「明日の昼な。で、姫音は、何を教えてくれんだ?」
「英語よ。」
「助かる。まず、この問題集から頼む。並び替えが全然分かんないんだよ。やってみたけど、Aの問題は、これで良いか?」
「これとこれを離したら駄目。これら2つを合わせて、1つの熟語なの。」
「そっか。熟語とか、全然分かんねー。」
「じゃあ、まず、今回の範囲で出て来る熟語を復習しましょう。教科書を開いてもらえるかしら。」
姫音は、輝の方を向いて、ニヤッとした。輝は、怒りの表情をした。顔の表情だけで、羨ましいでしょとか、俺が教える筈だったのに、勝手に奪いやがってと、バトルしているみたいだった。
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