第25話 協力そして出発
「……ユリウス。法則が見えたぞ。ここら辺を巡回してるのは3人だけだ。その3人が30分ごとに見回ってる」
「つまり1人過ぎれば30分程度は来ない、か」
ユリウスは外の監視をリックに任せ脱出経路を考えていた。
土地神に操られているのは自警団員なので、彼らと顔見知りのリックなら何かしら法則が見えてくるだろうと思い立ちリックに任せてみたところ、予想通り収穫はあった。
顔見知りが操られているのを長々と監視させるなどリックに対して酷な作業を強いているのはユリウスも理解している。
しかしこれ以外にユリウスの考え付く良案が無かったのだ。
「リック。もう下がれ。次の巡察が過ぎ去ったら動く。それまで短いけど休憩だ」
ユリウスはリックを後ろに下げ、扉の前に立つ。
「なら私が見張りを……」
「ダメ。敵の狙いがコリンなら、コリンは十分に体力が無いと」
コリンの申し出をユリウスははね除ける。
今回の見張りをリックに任せたのも狙われるリスクを考えたからだ。
現状でリックとコリン、単独で見つかるとより危険なのはどちらかと考えるとコリンの方が危険と言わざるを得ない。
そのためリックには多少無理してもらうのはしょうがない部分があると納得させられるが、コリンの体力は出来るだけ温存したまま行動を開始したいのがユリウスの本音だ。
「それはあんたも同じだろ」
「うん?」
扉前にいるユリウスを押し退けてリスマルがユリウスのポジションに立ち見張りを始める。
「ボクが見張る。3人は休憩して王子さんの言う作戦に備えて」
「リスマル。僕は君のことをそれほど信用してない。そもそも2人を捕縛したのも君が原因だろう?それでもまだ君の好きにさせるなんてことは僕はしない」
立候補したリスマルをユリウスは即座に却下するが、リスマルもそれだけでは諦めずにユリウスに食い下がろうとする。
「でもボクは……」
「だから君が主で見張りをやる。僕はそれの補助だ。それで良い」
しかしユリウスから出された提案は意外なものだった。
頭から全て却下されると思っていたリスマルは思わず言葉を失う。
「え?……あ……」
「どうした?早く見張り位置につけ」
ユリウスが指し示す位置にリスマルは少し困惑しながら座る。
ユリウスはリスマルに密着してリスマルだけに聞こえるぐらいの小声で言った。
「君のしたことは許されるとは思わないし、僕は許すつもりはない。でも信じないわけじゃない。過ぎたことは変わらないからこれからで改善してくれ」
ユリウスはリスマルの返答を待たずにリスマルの背後に腰を下ろす。
「よし、見張れ。怪しい動きをしたら今度こそ切り捨てるからな」
「……わかった」
リスマルが視線を扉の先に見える外の方へと向けたのを確認し、ユリウスは二人へアイコンタクトを送った。
『見張りは自分がやるから二人は休め』の意味だ。
ユリウスから合図を送られた二人は休息のために目を閉じた。
「……来たね」
「……ああ、来たな」
見張り始めて20分弱、ユリウスとリスマルが同時に巡察に来た自警団員を視認する。
視線は外さないままユリウスは床を指で叩き二人を起こす。
そして巡察の団員が過ぎ去った頃合いでユリウスは二人を見る。
「動けるかい?」
「ん。大丈夫」
「ああ、俺も動ける」
コリンとリックは装具を整えて立ち上がった。
二人の返答を聞いたユリウスはゆっくりと穀物庫の扉を開け、顔を出して見回した。
数度見回しても巡察の気配はない。
「よし、今だな」
ユリウスは穀物庫から出て、その通りの真ん中へ移動する。
するとそのユリウスの様子を他の穀物庫から見ていた自警団若年組の面々もそれに合わせて穀物庫から出てきた。
ユリウスはコリン、リック、リスマルとその他若年組へ向いて言う。
「これから外柵沿いに移動しながらファーノ地区に一番近い門を目指す。そこにたどり着くまでにこれからの動きについて説明する」
そしてユリウスは体の向きを反転させて外柵の方へ向き、その先を指差す。
「各個、前進」
「よっしゃ!」
リックが我先にと、いの一番に駆け出し、それに続いて他の若年組も駆け出す。
「よし、遅れないようにしないとね」
「ん。わかった」
それを追うようにユリウスとコリンも駆け出した。
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