第21話 真偽そして突入

ユリウスはリスマルから知っている限りの情報を聞き出そうと試みる。


「何でだ?コリンは集落の人間だろ?」

「わからない……コリン姉とリック兄が話してたら、部屋にいきなり大人たちが入ってきて捕まえて出ていったんだ」

「それでどこに?」

「長老の家だよ。あそこは集会所として使われるスペースがあるぐらい広いんだ」

「何人ぐらいでコリンを捕まえてたんだ?」

「5人……ぐらいだったはず」


これで位置と大体の人数の規模を聞き出すことができた。

何故集落側がコリンたちを捕まえたかは不明なままだが、とりあえずコリンたちの解放を目指せば首謀者も割り出せるだろう。

ユリウスはそう考え、集落の長老の家に歩き始める。


「僕も行く。僕もコリン姉を助けたいから」

「……どうぞ勝手に」


リスマルもユリウスに続いて歩き始める。

集落を見回る大勢の兵士を見て目撃情報が無いか聞こうとしたがそれならもっと騒然とするはずで、一緒に来てもらうか考えたが、今から戦いにいくわけではない。

結局自分で解決しようという結論に落ち着いた。

やがて長老の家の前に到着する。


「着いたよ。きっと地下の部屋に居ると思うから」

「……行くか」

「少しお待ちください」


ユリウスが身構えて長老の家へ入ろうとしたとき、後ろから声が聞こえた。

ユリウスは顔をしかめて振り向く。


「シンドウ。僕はお前に構っている暇は……」

「ですから一旦落ち着いてください。最初から状況を整理しましょう」


シンドウの進言を聞いてユリウスは身構えていた体から力を抜く。


「……お前、どこから見ていた?」

「比較的最初からですね」


ユリウスはため息を吐いたがシンドウはそれを気にする様子もなく、視線をリスマルに移して話し始める。


「まず最大の疑問があります。そちらの少年はコリン殿が捕まった理由を聞いたとき、何と答えましたか?」

「わからない、と言っていた」

「そう、わからないという回答は不自然なんですよ。少年が仮にも仲間が捕縛される光景を見たなら当然捕縛する理由は聞いたはずですので、その時に回答がもらえなければユリウス様ならどう報告しますか?」


シンドウの問いにユリウスは少し考える素振りをして答える。


「……『聞いたけど答えてくれなかった』、ぐらいか」

「そうですね。少なくとも聞いたという事実は言うはずです」

「そんなの言い忘れただけだ!それの何が重要なんだ!」


リスマルはシンドウに対して反論した。

しかしシンドウは表情を変えずに続ける。


「では私からも質問を。コリン殿とリック殿はどのような話をされていたのですか?」

「え?そ、そんなの知るかよ」

「そんなにヒソヒソと話していたのですか?」

「その部屋に居なかったから話してる姿なんか見てないし知らねえって話だよ!」


リスマルの言葉にシンドウが口角を上げて反応し、リスマルを揺さぶる。


「嘘、ですね。部屋には居たはずですよ。部屋に入って『きて』捕まえたと言ったぐらいですから。何故嘘をつくんです?」

「うるせえ!お前なんなんだよ!」


リスマルはシンドウに激昂するが、ユリウスは固い表情ながらも焦った様子はなくシンドウに聞く。


「それでお前は、これから僕はどうするべきだって言うんだ?」

「私と二人でこの家の地下に向かいましょう。そこの少年は待機で」

「なんでだよ!僕にも手伝わせろよ!」

「手伝えることならありますよ。他の集落の人間に協力を仰いできてください」

「同行させろよ!」

「それが怪しいんですよ。何で同行したがるんです?そもそもそれほど助けに行きたいのなら、ユリウス様に頼らずとも一人で行けば良い。戦力的に不安だというなら私とユリウス様に任せれば良い。ユリウス様にあれほど反発してた貴方がこれほど同行に執着することが既に怪しいんですよ」

「…………お前本当にどれだけ僕の周囲の話知ってるんだ……?」


ユリウスはシンドウを不審者を見るような目で見るが、長老の家に足を進めながらシンドウに命令する。


「お前らは要らない。僕が見に行く。シンドウ、そいつが入ろうとしたら力ずくで止めろ。これは命令だ」

「御意」


ユリウスの命令にシンドウは丁寧に頭を下げる。

ユリウスは家の中へ入っていき、シンドウはその玄関口に蓋をするように立つ。


「待てよ!お前らだけで話を……」


中へ入ろうと向かってきたリスマルを、シンドウが見下す目をして言う。


「ユリウス様から命令が出た。私は子供でも容赦はしない」

「う……」


シンドウの言葉が出任せではないことはその目からリスマルには伝わった。

リスマルはシンドウの気迫に圧されて足を動かすことが出来なかった。

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