第20話 予定そして前兆
「近日中に王都へ帰還しますので、そのつもりで」
ある日の朝、ユリウスの宿を訪れたユラリアがユリウスにそう告げた。
ユリウスは内心では予測通りと思いながらも不本意そうな表情を作る。
「僕は何をしにここへ?」
「本来の目的が達成できない状況になった。それだけです」
ユラリアは目線を集落へ向ける。
「予期せぬ襲撃による被害は軽いものではありません。私たちが居座っても、復興を阻害するだけでしょう」
「質問の答えになっていませんが」
「知る必要はない、ということです」
ユラリアは聞く耳を持たずにユリウスの宿を後にした。
話が終わるとユリウスの後ろからコリンが出てくる。
「ユリウス……」
「王都に行くのはそろそろらしいね。行くのは怖い?」
「怖くは、ない。集落に居続ける方が怖い」
「そう……まあそうだね」
コリンの返答を聞いたユリウスは台所へ歩きながらコリンに言う。
「もし、別れを言いたい人がいるなら早めに言っておくと良いよ。姉上はいつ行動に移すか分からないから」
「……わかった」
ユリウスが台所へ姿を消した後、廊下でコリンは小声で呟いた。
「リックと別れるのは……寂しいかな」
その数時間後、ユリウスは宿の外にあるベンチで耳を済ませていた。
今もまた、何とも言えない嫌な予感がしているからだ。
最初の襲撃、最近の集団での攻撃行動とこの嫌な予感は今まで外れた試しがない。
そうなれば今回もまた何か起こるはずだ。
魔物の襲撃があれば村人なら悲鳴が聞こえるだろうし、兵士ならば増援を呼ぶ声が聞こえるはずである。
しかし現在ユリウスの周囲にはそういった類いの喧騒は全くなく、村人は荒らされた村を修復する作業に勤しんでいる。
「気のせい……?いや、そんなはずは……」
どこかから来る不快感を胸に思考に更けるユリウスのブーツに石ころがぶつかる。
無風ではないがそよ風しか吹かない今、自然と石ころが飛んでくるなどあり得ない。
ユリウスが石ころが飛んできた方向を見ると見覚えのある少年が立っていた。
「……確か、リスマルだったかな?」
リスマルはユリウスが自分を見たのを確認すると手招きをした後に集落の林に駆け出していった。
「遊びに付き合っている暇はないんだけど……」
ユリウスはそれを追って林のなかに入る。
少し深いところへ来たところでリスマルは立っていた。
「僕に何の用だ?今は……」
ユリウスが忙しいと言うより前にリスマルは草が生い茂る地面に頭をつけて叫んだ。
「コリン姉とリック兄が長老に捕まったんだ!助けて!」
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