第11話 国家そして集落
リスマルと口論をしてから一時間程度たった頃。
ユリウスはちょうど休憩に入ったコリン、リックと共に集落の中心に来ていた。
リックは石像を示しながらユリウスに向けて説明をしている。
「前回説明し忘れたけど、この石像のモデルになった守り神的な存在は昔から集落を守ってくれてるんだ。今は長老様を介して集落に魔物が入らないような仕組みを維持してるらしい」
「へえ。土地神と国王みたいなものかな?」
「土地神?」
リックとコリンが首をかしげたのを見たユリウスは今度は説明する側に回る。
「今、国の王として世界的に認められるには、もちろん求心力とか知識とかも必要だけど、何よりその国のある土地の土地神に認められる必要があるんだ。認められたらその土地神が持ってる固有の魔法が使えるようになる。それを使って土地神と交信しながら自分の領土に魔物が出てこないようにしたり、攻めてくる魔物を排除したりするんだ」
「へぇー、本当にこの集落みたいなんだなー」
ユリウスは石像を先から先まで眺める。
土地神は何かを依り代にして人間なり魔物なりに影響を与えている。
一番分かりやすいのは神殿だ。
土地神は神殿に意識を払い、そこへ契約者が来たときに効力を発揮するという仕組みが土地神信仰のスタンダードな形となっている。
だが目の前の石像からは土地神の雰囲気は感じられない。
依り代は別の場所にあるということになる。
「その守り神が祀られている場所とかあるの?」
ユリウスは二人なら知っているだろうとただの興味本意で聞いたが、二人とも曖昧そうな表情をして答える。
「……そういえば知らないな。長老様がどうやって交信?してるのか」
「気にしたこともなかった。でも確かに謎だね」
親のいないコリンはともかくこの集落の普通の青年であるリックまで知らないとなると何か理由がありそうだが、リックたちが知らない理由を鑑みると詮索しない方が良いのかもしれない。
詮索する理由はユリウスにはないし、集落内であまり面倒な印象を持たれたくないので、ユリウスは意識を逸らすことにした。
「ま、まあ。ただ教えられてないだけじゃないかな?それほど理由はないと思うよ」
「……ま、それもそーか」
ユリウスの言葉を聞いたリックは特に気に留めないような素振りで再び集落の説明を始める。
「で、あっちの方が備蓄エリアになってていろんなものが保管されてる。行こう」
リックが先陣を切って歩き出し、ユリウスとコリンがそれについていった。
その後ユリウスは集落をほぼ一周することになり、二人の休憩が終わるまで集落の説明を聞いていた。
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