第4話 「出会い」

今日は月曜日、学生である僕は当然学校だ。


学校なのに……


「……え⁉︎ もう10時⁉︎」


寝坊した。 もちろんアラームはセットした、だが昨日夜遅くまで能力者の事を考えていたから朝起きれなかったらしい。


まずい……


「うっわ…カイからいっぱいメール来てる…」


メールの数20件、着信の数3件。


まずいな、心配させてしまった。


とりあえず僕はカイに返信しようと思い、1番上のメールを開いた。


『おい! 何かあったのか⁉︎』


やばい、思った以上に心配されてる……

土曜日にあんな事があった2日後にこれだもんな……


『ごめんカイ! 寝坊した! 今から行くよ』


僕はそう打ち込み、送信ボタンを押した。


「は、早く準備しないと…!」


僕は素早く制服に着替え、カバンを持って家を出た。


朝ごはん? そんな物を食べている時間はない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


家から走る事約30分。


「つ、ついた……!」


やっと学校についた。 いつもは30分以上かかるが、今日は走ったから30分でついた。


ここが僕が通っている空海第一高校そらみだいいちこうこうだ。

公立高校だが、何故か設備や校舎は私立並みで、校舎がとても大きい事で有名だ。


「は、早く行かないと…」


とりあえず校舎内に入り、階段の前まで行く、空海第一高校は3階建てで、上から見ると、”コ”の字になっている。

僕は2年生なので2階に教室がある。


2階に着くと、少し歩けば教室が見えて来て、僕の教室の2組の前には……


「か、カイ…お、おはよう」


「あぁおはよう。 寝坊野郎」


カイが腰に手をやり、満面の笑みで仁王立ちをしていた。


そうか、今は休み時間なんだな。


「か、カイ…悪いんだけど、ノート見せてくれる?」


「貸し1な」


「いつも見せてあげてるでしょ。 それでチャラだ」


「うぐっ…」


そんな話をしながら教室に入る。


誰かが教室に入ると、必ず教室に居た誰かが入って来た人の方を見る。 そしてすぐに目を逸らす。


僕はこれが嫌いだ。

だから僕は誰も見ない、誰とも目を合わせずにまっすぐ自分の席へ向かう。


「あ、ちなみに次数学だぞ」


「そっか、ありがとう」


カイから次の授業を聞いたので、数学の準備をする。


そのままカイと話そうとした時……


「おーい涼太! ちょっと来てくれよ! 」


カイの名前を呼ぶ声が聞こえた。 あれは…よくカイが話している人だな。


「えっ、あー…」


カイは分かりやすいほどオロオロしている。


「行って来なよ」


「……悪りぃな。 おーう! なんだ?」


僕がカイにそう言うと、カイは申し訳ないような顔をした後、カイを呼んだ人の元へ向かった。


……さて、暇になったし、いつも通り寝るか。


カイは僕とは違い、クラスでは人気者だ。 誰とでもすぐに仲良くなる、僕にはそれが羨ましい。


だが僕にはカイ以外に話し相手が居ない、だから1人になった時は、机に突っ伏し、寝たふりをする。


これが僕なりの休み時間の過ごし方だ。


「あのー…」


寝たふりをしていれば誰も話しかけてこないし、周りを見なくてもいい。


……まぁ、こんな事しなくても話しかけてくる人なんて居ないけどね。


「あのー…黒神くん?」


誰かに肩を触られた、それに僕の苗字を……


まさか⁉︎


「きゃっ⁉︎ びっくりした〜…」


急に顔を上げた為か、驚かせてしまったようだ。


いや、そりゃ驚くだろう。 なんだ、なんでこの人は僕に話しかけてきたんだ…?


しかもこの人は……肩まである青い髪……同じクラスの人だ。 名前は………知らない。


「え、えーと…僕に何か用ですか?」


「あっ、うん。 急で悪いんだけど、君…本当に 黒神 雷斗くん だよね?」


「…………は?」


何を言ってるんだこの人は。


失礼な人だな。


「……当たり前でしょ」


「あ、ごめんね! こんな事聞かれたら怒るよね…」


なんだ? 僕をからかいに来たわけじゃないのか…?


てっきり嫌がらせかと思ったけど……


「えっと…それで、僕に聞きたい事はそれだけですか?」


「えっ⁉︎ 違う違う! えっとね…今日の放課後、帰らずに教室で待っててくれないかな?」


「教室で?」


彼女がそう言った時、クラス中でガガッ!という音がなった。


あれは机が動いた時の音だ。


僕はそれを全く気にせずに彼女を見る、彼女は驚いた様に周りを見ていたが、すぐに僕の方を向き……


「うん。 どうしても君に言いたい事があるんだ。 お願い」


なんと彼女は頭を下げた。


急な事で頭がパニックになる。


そしてまたクラス中でガガッっという音がなる。


「ちょちょ、ちょっと! 頭を上げてください! 残ります! 残りますからっ!」


「ほ、本当⁉︎ ありがとう!」


僕がそういうと彼女は顔を上げ、笑顔になった。


………うん、何この人、可愛い。


絶対に口には出せないが、僕は彼女を可愛いと思った。


「じゃあ放課後にねっ!」


そう言って彼女は席に戻ろうとした。


だが、僕には聞かなければならない事がある。


「あの!」


「ん? 何?」


「えっと…あなたの名前、教えてもらってもいいですか?」


「……え?」


彼女と、クラス中が静かになる。


なんだ? さっきまでうるさかったのに……


「……知らないの?」


「はい」


「……同じクラスなのに?」


「は、はい」


「う、嘘…」


彼女は下を向く。割と本気で落ち込んでるな…


……流石に名前を聞くのは失礼だっただろうか。


彼女は下を向いていた顔を上げ…僕を見て言った。


「じゃあ、自己紹介するね? 私は 水野みずの 香夜かやです。 生徒会の副会長やってます」


水野香夜……それがこの人の名前か。


……えっ、生徒会? 副会長⁉︎ この人が⁉︎


「ちゃんと覚えてね?」


「は、はい。 覚えます」


「うん! じゃあ放課後にねっ! 」


香夜さんは最後に微笑むと、自分の席へと戻って言った。


それと同時にクラス中がまたガヤガヤしだす。


……放課後か、何を言われるんだろうか。




ちなみにあの後、カイに割と本気で肩を叩かれた。

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