第5話 「生徒会」

あれから普通に授業が進み、あっという間に放課後になった。


今クラスに残っているのは、僕、カイ、香夜さんとあと数名だけだ。


「おい雷斗、ちょっと来い」


「な、何さ」


僕はカイに手を引っ張られ、無理やり廊下に連れ出された。


カイは周りを見回し、誰もいない事を確認すると


「お前、水野さんといつ仲良くなったんだ?」


「……は?」


「だから! 水野さんといつ仲良くなったんだよ⁉︎ あの水野さんだぞ⁉︎

可愛くて成績も良くて副会長のあの水野さんが! なんでお前にあんな事言うんだよ!」


「……それ、だいぶ僕に失礼じゃないか?」


まぁカイが言いたい事は分かる。 分かるが、僕にも分からないんだ。


これまで香夜さんと話した事は一度もないしな。


「分からないよ、話した事もないしね」


「話した事がないのは俺も同じだ。 くっそ羨ましいなー!」


「ははは…でもカイが思ってるような事はないと思うよ。 どうせ雑用を任されるだけだよ」


「んー……でもなぁ…なんか大事な話のような気がすんだよな」


カイが急に真面目な顔になる。


「さっきお前と話してた水野さんの顔を見た感じ、告白って感じじゃなかった。 雑用を頼むんならわざわざ放課後に言う必要ないしな」


カイは本当に人をよく見てるな。 目の前にいた僕でも分からなかったのに。


「まぁ、話してみれば分かるよ」


「だな! でも安心しろ、告白される事は絶対にないからな!」


「はいはい」


「んじゃ、俺は先に帰るわ。 またな」


「うん、また明日」


その場でカイと別れ、僕は教室に戻る為に歩き出した。


本当に何を言われるんだろうか。


カイの言うことが確かなら、何か大事な話をされるのか? でも大事な話ってなんだ…?


教室の前に着き、僕は深呼吸をしてから扉を開けた。


「あ、来たね。 ごめんね、2人きりになるまで待たせちゃってさ」


「い、いえ」


教室には香夜さんしか居なかった。


さっきまで居た人達は帰ったのだろう。


香夜さんは自分の席から立ち上がり、僕の前まで歩いてきた。


「それで、話ってなんですか?」


「急かすねぇ…今結構いい雰囲気だと思わない?」


確かに今は夕方で、教室の窓から夕陽の明かり差し込んでいる。 そんな教室に男女が2人、確かにいい雰囲気だろう。


「そっちこそ勿体ぶらないで下さいよ。 告白じゃないのは分かってますから」


香夜さんが驚いた顔をする。


そして次には何か面白い物を見るような顔になった。


「あ、分かってたんだ。 なら話は早いや、勘違いされてたら面倒だったからね」


お、やっぱりカイの予想は当たってたのか。 やっぱり凄いなカイは。


「じゃあ……話をしようか、黒神くん。 ………いや、『雷くん』かな?」


「えっ⁉︎」


な、なんで香夜さんがその名前を……? だって、あの名前は掲示板でしか使ってないはず……


「不思議そうな顔してるね。 言ったでしょ? ”絶対に探し出すから、待っててね”って」


そうだ、言われた。 と言う事は……この人は…


「改めまして、生徒会副会長の水野 香夜です。 あの掲示板では『青』って名前だよ」


「う、嘘だろ…?」


「嘘じゃないよ。 私もあなたと同じだから」


……え? 同じって…香夜さんも殺されたのか…⁉︎


ここまで知ってるなら、信じるしかない。


「それで、今日君を呼んだのはね、紹介したい人達がいるからなんだ」


「紹介したい人…?」


「うん、その人達も君と同じだよ」


「まだ居るんですか⁉︎」


驚いた、僕ら以外にもまだ居たなんて……一体どうなってるんだ?


「じゃあ着いてきて」


香夜さんは僕の横を通り過ぎ、教室を出て行った。


「あ、待って下さいよ!」


僕はすぐに追いかけ、香夜さんの横に並んだ。


「あの…どこに行くんですか?」


「ふふ…まだ内緒」


そう言って香夜さんは微笑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「着いたよ」


「え? ここって……」


目の前には『生徒会執行部』と書かれた教室があった。


ここに僕と同じ人が居る…?


生徒会室は僕らの教室から結構距離がある。 何故なら生徒会室は違う校舎にあるからだ。


僕らの教室がある校舎は、『学習棟』と言って、普通の教室や、理科室、家庭科室など勉強専用の教室が集まっている。


そして生徒会室があるこの校舎は『部室棟』と言って、部活の部室が集まっている。


まぁ部室があるのは一階と二階だけで、三階には生徒会室しかないみたいだが。 三階にある他の教室は全て生徒会専用らしい。


「さ、入るよ」


「は、はい」


香夜さんが扉をガラッと開け、中に入る。


僕も続けて中に入った。


「し、失礼します」


「お、来たか。 ようこそ、生徒会執行部へ」


中には香夜さんを除いて2人いた。


まずは僕に話しかけて来たこの男子生徒……いや、この人は流石に僕でも分かる。


「始めまして、俺は東堂とうどう 凍夜とうやだ。 まぁお察しだと思うが、生徒会長をやってる」


東堂 凍夜。 僕と同じ2年生で学年トップの成績の人だ。

白髪で、イケメン。

しかも実家は大金持ちで、一人暮らしをしてるらしい。


「あっ、僕は 黒神 雷斗です。 よろしくお願いします」


「はいよ、よろしく」


そして次にもう1人の人物を見る。


「おいアリス、自己紹介してやれよ」


「アリス・イグニースよ」


「え、えっと、よろしくお願いします」


「……えぇ」


この人…なんか冷たいな…


アリス・イグニース。 長い金髪に綺麗な青眼を持つ少女だ。 アリスさんはイギリスからの留学生らしい。 この人も僕と同じなのか…?


「黒髪で、容姿は普通…良くも悪くもない。 つまらないわね」


「えっ…」


「お、おいアリス…その辺にしとけよ…」


「何よ凍夜。 本当の事なんだからいいでしょ」


「ははは……」


言い返す事が出来ず、苦笑いをしていると、アリスさんが制服のポケットから何かを出し、僕の前まで歩いて来た。


「え、えっと…?」


「これ、返すわね」


そう言って渡されたのは、僕の生徒手帳だった。


「え、なんであなたが…」


「調べるためよ。 あなたが死んでる間に持って来たのよ」


だから生徒手帳がなかったのか。


僕はアリスさんから生徒手帳を受け取り、自分の制服に入れた。


「えっと…それで、僕をここに呼んだ理由は…」


「あぁそうだったな」


僕がそう言うと、凍夜さんが立ち上がり、僕の前まできた。


現在僕の前には凍夜さん、僕から見て左にアリスさん、右に香夜さんが立っている。


非常に緊張する。


「香夜から聞いたと思うが、俺達もお前と同じ蘇った人間だ」


やっぱり、そうなのか。


「んで、俺達の役目は、能力者を保護、または正しく導く事なんだ」


「それは凍夜が勝手に決めた事でしょ」


「まぁまぁアリスちゃん…」


「そこで、だ。 黒神 雷斗」


「は、はい」


凍夜さんは右手を俺の方に向ける。


……なんだこれ、握手か…?


「お前も、生徒会に入らないか?」


「………へ?」


生徒会室に、僕の気の抜けた声が木霊した。

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