第3話 「検索」

あの後は大変だった。


鉄骨落下の後、当然のように人が集まり、あっという間に騒ぎになった。


僕は帰ることを許されず、警察が来るまで待てと言われた。


警察の人が来て事情聴取をされたが、僕に怪我がない事を確認すると警察の人は安心していた。


それから色々話した後、ようやく僕は解放された。


そして今、僕は家にいる。


僕の家はどこにでもある普通のアパートの一室だ。


部屋はワンルーム、キッチン風呂トイレ付きだ。


家具はテーブル、ベッド、本棚、パソコンと言ったシンプルな物のみ、模様替えなどは面倒くさいからやってない。


僕は帰ってきてからすぐに弁当を食べ、パソコンの電源を入れた。


「さて…調べるか。 出るか分からないけど」


僕はパソコンの検索欄に、『死 能力者』と打ち込んだ。


すると、一件だけ引っかかった。


「あ、あった……なんだこれは、掲示板…?」


それをクリックしてみると、普通のネット掲示板だった。 だれでも自由に書き込める物らしい。


作られたのは……5分前⁉︎


僕はとりあえずコメントを読んでみた。


『赤・皆いるか?』


『青・いますよ』


『赤・たぶんここもすぐに消される、早く情報交換をしよう』


『黄・そうだな』


どうやらこの人達は名前を色で区別しているらしい。


それにしても、消されるってどういう事だ…?


『黄・先週、黒が殺された』


『赤・本当か⁉︎ 誰に⁉︎ 特科とっか共か? それとも……』


『黄・罪人ざいにんだよ。 俺はなんとか逃げたが、黒は…』


この人達はなんの話をしてるんだ…? 特科、罪人ってなんだ?


それに、殺された……?


『緑・あ、そう言えば聞いた? 昨日、またあの女が1人殺したらしいよ』


『赤・またか⁉︎ 今月でもう何人目だよ、場所は?』


『緑・ん〜、公園って事しか分からないな』


昨日女に殺された、しかも公園。


なんだそれ……まるで……


『青・それで、その殺された人は、どうなったの?』


『緑・分からない。生き返ったのか、死んだのか。 ま、生き返る確率は低いけどね〜』


『黄・もし生き返ったんなら、サポートしてやりたいな』


生き返った……確信した。

この人達が話しているのは、僕の事だ。


そして、この人達も僕と同じだ。


この人達と会ってみたい。


そして僕は文字を打ち込んだ。


名前は…適当でいいか。


『雷・すみません、ちょっといいですか?』


『緑・ん? 誰〜?』


『赤・見た事ない名前だな』


『雷・その、昨日公園で殺されたのって、僕なんです』


言った、言ってしまった。


信じてくれるか……


『赤・本当か?』


来た、返信が来た!


『雷・本当です! あとなんか能力…みたいなのも出せるみたいで、どうすればいいか分からないんです!』


『黄・ほぅ、生き返ってもう能力を使えるのか』


信じてくれてる! 後は会うだけだ!


『雷・出来ればなんですけど、お話しできませんか? 住所は…』


僕の家に来てもらって、話をしよう。


この能力の事も……


僕は自分の住所を打ち込み、送信しようとした……その時…


『赤・馬鹿! やめろ!』


『黄・ダメだ!』


止められた。 なんでだろうか。


『雷・な、何でですか?』


『青・君は馬鹿なの? 住所なんて公開したら、殺されるよ? 君』


「…………は?」


殺される? なんで…?


『緑・あのね、僕らも君と同じ能力者だけど、悪い能力者もいるんだ。 住所がバレたら、悪い能力者に殺されちゃうよ?

今この瞬間も、悪い能力者はこの掲示板を見てるかもしれないんだから』


悪い能力者……


『雷・なら…僕はどうすれば…』


『赤・安心しろ。 君は何もしなくていい。 俺達が絶対に君を探し出す、それまで待っててくれ』


探すってどうやって……


『青・安心して、私達はあなたの味方だから、だから待っててね、雷くん』


分かりました。 そう打ち込み、送信しようとしたら……


「え? エラー?」


そう、何故かエラーが出たのだ。 何度押しても送信出来ない。


仕方なく一度ページを閉じてもう一度『死 能力者』と検索をした。 すると……


「ぜ…0件…⁉︎」


1つも引っかからなかった。


何故だ、何故急に消され……


あっ…さっき赤の人が言っていた”消される”って、この事なんだ……


「インターネットの記事を消せるのは……」


政府の人間だ。


政府は一般人に能力者の事を隠している…?


僕はたまたま消される前に記事を見つけただけ…


何故政府は能力者の事を隠しているんだ…? 考えれば考えるほど分からなくなる。


あの人達は僕に”待っていろ”と言った。 ”味方だ”と言った。


なら僕は待つだけだ、あの人達が僕を見つけてくれるまで……


そして、僕はパソコンの電源を切った。


そしてそれとほぼ同時に、僕のスマホが鳴った。


「ん? メール…カイからか」


『わりぃ雷斗! 明日の時間割なんだっけ⁉︎』


いつも通り、馬鹿みたいなメールだった。


僕は先程まで考えていた能力者の事を考えるのを止め、カイに返信した。

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