第4-2話 幻想の魔法の練習(2)
ペルシーは
「
『そのループでイメージが強調されて次元干渉の雛形になる』
「なるほど。そのループの帰還率を下げれば、必然的に魔法の威力も下がるんじゃないのか?」
『イメージを曖昧にしたまま魔法を行使するのは危険な気がするけど……、試してみる価値はある』
「イメージの曖昧さか……。例えばアイスニードルなんかは、曖昧なままだと駄目な気がするけど、ファイアーボールは曖昧なままでも使えるんじゃないか?」
『試してみるべき』
「それじゃあ、アイスニードルからやってみよう」
早速、二人はアイスニードルで試してみた。
「
ペルシーの前方にアイスニードルが造られ、目標の大木へ向って飛んでいく。
そして、大木に刺さらずに落ちた。
「やっぱり駄目か……。氷をニードルのように尖らせることができなかったんだな」
「それでも、氷はちゃんとできたのです。飛翔速度も問題ないのでございます」
『発動時間が若干早かったから、アイスニードルの劣化版として使い道はあるかもしれない』
「そうだな。敵を牽制するだけとかね」
ペルシーは具体的に戦闘するイメージが浮かばなかったので、この使いみちは保留ということにした。
「それじゃ、ファイアーボールだ!」
今度は木ではなく、岩を狙った。山火事になるのはまずいからだ。
「
ペルシーが放つファイアーボールは高温であるため青白く燃えていたのだが、このファイアーボールは紅く燃えていた。
そして岩に激突し、表面を黒く焦がした。
「おお~、成功だな」
「ペルシー様、これは精霊魔法のファイアーボールと同じくらいの威力なのです」
「もしかしたら、これで誤魔化せる?」
「でも、幻想魔法特有の残光があるのです」
心なしか、その残光も少なくなったようだが、魔法使いが見れば疑念を抱くかもしれない。
『やはり、ペルシーはマナの制御がヘタッピ。事象干渉するときにもっと少なめに制御すれば干渉力を弱められるはず』
「う~ん、結局は練習するしかないないのか……」
やはり、地道にマナの制御を練習するしか、魔法の威力を弱めることはできなさそうである。
「ところで、ペルシー様。先ほどから魔物に囲まれているのはご存知でございますか?」
「ああ、もちろんだ。魔物の種類は分からないけどな」
「おそらくバジリスクが五匹ほど私たちを取り囲んでいるのです」
「ひょっとしたら、石化能力があるやつか?」
「なぜそれを知っているのでございましょう?」
「いや~、なんとなくな……」
『どうするの? ペルシー』
「爬虫類っぽいから、ダイヤモンドダストで凍らせてやろう」
『了解ペルシー。シンクロ率は問題ない』
「
ペルシー達の周囲が急速に冷気を帯びて、一面の銀世界に豹変しはじめた。
熱帯地方特有の湿気を帯びた空気さえも凍りつき、太陽の光でキラキラと輝いた。
「まあ、綺麗でございますね~。こちらまで寒くなりますが」
「パジリスク達はどうなった?」
「凍結しているのでございます」
「寒くてかなわないから、さっさと離脱しよう」
「了解でございます」
ペルシー達は凍結した地域から十キロほど北に移動した。
周囲に魔物の気配はない。
「俺が今知っている魔法バリエーションだけで《はじまりの森》を縦断できそうだな」
「でも、魔物に接近されてしまったときの準備も必要だと思うのです」
「接近戦用の武器だよね……どうしようかな?」
中距離と遠距離での攻撃魔法は、このバリエーションがあれば殆どの場合対処できるだろう。しかし、予期せず接近された場合のことを考える必要はある。
「刀がほしいな。使ったことはないけど……」
ペルシーは《幻想魔法》の練習を兼ねて刀を作ってみることにした。
安直な考えではあるが、異世界なのでミスリスを錬成できるはずだ。
「なあ、クリスタ。この世界にはミスリルという金属は存在するのか?」
「はい、存在するのです。強力な武器や防具、そして魔道具に使われると聞いたことがあるのです。ただ、かなり高価な金属だとも聞いております」
「やっぱり高価な金属なのか。自然に存在するミスリルを集められたらいいな」
この辺りの土壌の中にも、微量だとしてもミスリスが存在するかもしれない。試してみる価値はある。
「パメラ、俺がイメージしたものを幻想魔法で錬成することはできるか?」
『もちろんできる。曖昧なイメージでも構わない。パメラが補完する』
「おお、それは素晴らしい!」
悠人は博物館で国宝級の刀を鑑賞したばかりだった。その中でも鎌倉時代に打たれた刀に一際美しい物があった。ペルシーはその刀身をイメージすることにした。
「ミスリル刀、錬成!」
パメラドールの助けで、イメージ通りの鋭利な日本刀錬成ができた。さすがに、本物の日本刀にあるはずの刃紋がないので、よく見ると偽物にしか見えないが。
刀を剥き身で持ち歩けないので、鞘と柄も錬成した。
「パメラ、ありがとう」
『お安い御用』
完成した刀は、魔物を相手にするのが目的なので、鍔は付けなかった。
それでも、鞘には何も施されていないので面白くない。まあ、今のところ誰に見られるわけでもないが、ペルシーの好きだったオンラインゲームであるナイトブルー・ディメンジョンの《NBD》を元に家紋風デザインにして刻印することにした。
「この刀は《斬魔刀》と名付けよう――」
「斬魔刀ですか。かっこいい名前でございますね」
「ただ困ったことがある」
「なんですか?」
クリスタが小首をかしげている。
「剣術ができない」
まあ、それ仕方ないだろう。
ペルシーは、いや
斬魔刀は脇差しにすると邪魔なので、背負うことにした。
ペルシーが実際に背負ってみると隠密のように見えて面白い――。
「これで冒険の準備はできたと思っていいかな?」
「魔法がこれだけ使えれば、後はなんとかなると思うのです。でも、食糧は如何しましょうか?」
「考えてなかった……」
「あ、いえ、大丈夫なのです。森の中には果物や木の実、それにキノコも自生しているのでございます。当面はそれで凌ぎましょう」
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