第4-1話 幻想の魔法の練習(1)
地球から召喚されて、ジュリアス・フリードに憑依転生した
魔法に関しては魔法人工頭脳パメラドールの知識を借りて、それ以外のことは光の妖精クリスタに助けてもらいながら、ペルセウスの冒険の旅がはじまる。
「ところで、ここはどこなんだろう?」
「ここは
「人が近づけないほど強い魔物というと、さっき俺達が倒した魔物もそうだよな」
ペルシーはまだこの世界に来たばかりなので魔物のことを知らない。
先ほど倒した魔物達は、地球人の常識からすれば半端なく強いのだが……。
もし、オーガ以上の魔物が地球に召喚されたら、大災害レベルの混乱が起きるだろう。
『そう。この世界に棲んでいる最強の種族達をペルシーは既に倒している』
「俺の常識からしたら、大災害が起こる程の強さだと思うけど、この世界の人達にとってはどうなんだろう?」
『もちろん、それは同じ。武器や魔法を使ったとしても、あれだけの魔物達を相手にできるものじゃない』
「ペルシー様、ジュリアス様から聞いた話によりますと、この世界の人間の強さは地球の人間とさほど違いはないそうでございます」
「つまり、俺が感じた脅威は、この世界の人達と同じ脅威だと考えていいわけだな」
「はい、仰るとおりでございます」
もし、魔物達が地球に出現したとしても、奴等に対抗する手段として軍事兵器がある。
魔物軍団が出現しても、町や都市に拡散しない限り対抗できるだろう。
だが、この世界はどうなのだろう? もし、剣や魔法しかないなら、どうやって奴等に対抗するのだろう?
「この世界には剣や魔法しか魔物に対抗手段はないのか?」
「大量破壊兵器のことでございますね? 残念ながら、そこまで文明は発達していないのでございます」
『魔物軍団に対抗できるのは、殲滅魔法しかない。でもそのような上級を越えた魔法を使える魔法使いは少ない。ペルシーの魔力は例外も例外』
「よく分からないけど……。人間にとって厳しい世界なんだな」
ペルシーにはまだ実感が無いようだが、この世界は人間にとってはハードモードなのだ。だから、組織立って助け合わなければ生き残れないはずだが……。
現実はそうではないことを、ペルシーは旅の途中で否応なく知ることになる。
「それで、人里に出るにはどっちへ行けばいいのだろう?」
「この森を北に抜けるとラーズ大砂漠がございます。そこを更に北へ抜けなければなりません」
「大陸を縦断するのか……。遠そうだな~」
「ペルシー様、出発する前に、魔法の訓練をしておいたほうがいいと思うのです」
「俺もまだ不安があるんだよな。パメラ、いいだろ?」
『分かった』
こうして、ペルシーはパメラドールとクリスタの指導のもとに
「最初に確認したいのは《時空振動波》だな。これが使いこなせるようになれば、限りなく無敵になると思うんだが」
『パメラも同意する。それにしてもペルシーは筋がいい。時空振動波をはじめから成功させるとは』
「成功しない可能性もあったのに時空振動波を発動させたのか? パメラ~!」
『発動できなくても問題なかった。面倒ならば逃げればいいだけ』
(まあ、そんなもんか。最初は逃げられないと思っていたけどな)
「いずれにしても、時空振動波は使い方を間違うと、とんでもない被害を与えてしまうのです。どれだけ絞って発動できるか訓練してみては如何でございましょう」
「分かったよ。クリスタ」
ペルシーは右手に意識を集中し、空間を振動させる波動をなるべく小さくイメージした。
パメラとの間でイメージの同期が繰り返され、正の
そして放出――。
すると、大爆発の時と同じように時空を振動させる波が発生し、二十メートルほど先まで森が蒸発した。
そして例のごとく虹色に輝く光の粒子が蒸発した森を満たした――。
「これは凄い威力だ。今はこのくらいまでしか絞れない……。でも、何でこんなに光り輝くの?」
『
「よく分からないけれど、そういうものなのか?」
『そういうものだから、気にする必要はない』
(でも、使う度に目立つな……)
「そう言えば、この魔法は威力が高くて影響範囲を限定しにくいので、ジュリアス様はあまり多用しなかったのでございます」
「まあ、そうだろうね……。たいして魔力を使ったつもりはないんだけどこの威力だからな。もう少し威力を弱くしたい」
(もし、味方が近くにいたら巻き込んでしまう危険性もある。威力の制御をもっと練習するしかないだろうな――)
「パメラ、
『
「そう言えば、精霊魔法のウインドカッターは空気の刃だから見えないはずだよな? それなのに
『でも、精霊魔法のウインドカッターと効果は同じ。正確には威力は数十倍以上ある』
「十倍以上か……凄いな。まあ、次元に干渉するほどの魔力を使っているから当然か」
『そう、精霊魔法は精霊を介して事象に干渉する魔法。
「パメラは、俺にとって精霊の代わりってことだな」
『そうよ。私は魔法精霊パメラドールなの』
「ペルシー様、パメラの言うことをすべて真に受けてはいけませんよ。以前は自分のことを妖精パメラドールと言ってましたから」
「パメラ、俺に嘘はいけないな」
『冗談を言っただけ。本気にするほうが悪い』
クリスタはさんざんパメラに騙されたのだろう。
というよりも、弄られていたのかもしれない。
『話を元に戻す。パメラを介するからこそ、
「だから毎回シンクロ率のことを言ってたのか。納得したぞ」
『そう、ペルシーとパメラは深いところで精神的に結ばれている』
「なんか、違う意味に聞こえるけど、そういうことになるな」
(学校で勉強した物理学の元素とか電子などがイメージできれば、
「パメラ、気になったんだけど。次元に干渉できると言うことは……時空魔法が使えるということか?」
『もちろん使える。時空振動波もその一つ』
「名称から時空魔法だとは思ったけど、他にもあるのか?」
『時空魔法で覚えておく必要があるのは、時空振動波以外に二つある。
それは共次元空間と空間転移』
「共次元空間って、俺の元の体が保存されているはずだ。それに、クリスタが千年間退避していたとも聞いている」
共次元空間に退避していたクリスタも、地球人の体が保存されているペルシーも複雑な気持ちだろう。
『そこは時間の次元がないので、保存庫として使うのにとても便利』
「それはそうだけどな……」
『空間転移魔法は、行ったことがある場所や見える場所へなら瞬時に転移することができる魔法』
「それは凄いな、ぜひ使ってみたい」
『ペルシーは、この世界に来てから殆ど移動していないから、もう少し旅をしたら試してみるといい』
「そうだな。そうするよ」
ペルシーは地球に居たときから空間転移ができたらどんなに素晴らしいだろうと思っていた。
それは通勤が苦痛だったからだが……、つくづく社畜だったわけだ。
それがこの世界では現実となる。
『ペルシー、次はファイアーキャノンを練習してみるといい』
パメラがそう言うと、ファイアーキャノンのイメージがペルシーの頭に流れ込んできた。
そして再びパメラとの間で
「それでは早速。ファイアーキャノン!」
ペルシーは前方の大木に炎の弾丸を叩き込むイメージを思い浮かべた。
すると、イメージした地点の空間が揺らぎはじめ、ペルシーの手から炎の弾丸が放出された。
炎の弾丸は光跡を曳きながら目の前の大木に飛んで行く。
「ドッカン!」という爆発音が響いて、大木が倒れて炎上した。
「耳が痛いです~」
クリスタが涙目でこちらを見つめいる。
「ごめん、ごめん。こんなに大きな音がでるなんて思わなかったよ。ちょっと威力が強すぎたみたいだね」
ファイアーキャノンは威力に注意しないと使用するのが難しそうだ。
火系統はもう少し考えてから実験した方がいいだろう。少なくとも、人や魔物が近くにない場所の方がいい。
「ウインドカッターと、雷魔法の
属性魔法はかなりの種類があるらしいが、とても覚えきれないので使いやすい属性魔法をパメラにピックアップしてもらった。
【単体に使う攻撃魔法】
・ファイヤーボール、ファイヤーキャノン
・アイスニードル、アイスキャノン
・ウインドカッター
・ロックニードル、ロックキャノン
・
【範囲攻撃魔法】
・ファイヤーストーム
・ダイアモンドダスト
・ウインドストーム
・
【防御魔法】
・ロックウォール
【回復系魔法】
・
・
【便利魔法】
・
パメラがこの世界にダンジョンが存在すると言っていた。
それにしても、これだけの魔法を使いこなすのは時間がかかるだろう。
だが、時間はたっぷりあるのだから、少しずつ練習すればいい。
『アイスキャノンという魔法を使ってみるといい。ウインドカッターみたいに血しぶきが飛んだりすることはない』
パメラドールからもう少し威力のある
例によってパメラから魔法のイメージを送ってもらい、
「アイスキャノン!」
ペルシーの手からテニスボール大の氷の玉が前方の大木に射出された。
もちろん、氷の玉は虹色の光跡を曳いている。
氷の玉が大木に当たると「ドッカン!」という鈍い音を出して、大木が引きちぎれて十メートルくらい後方へ飛んでいった。
「これも凄い威力だな」
「ペルシー様、これくらい威力がないと強い魔物には通用しないのでございます」
「それもそうだな。オーガくらいならどうだろう」
「オーガ族ならばウインドカッターで首を落とせるのでございます」
前回オーガと戦った時はサンダーハンマーで消し炭にしたけど、ウインドカッターでも倒せたのか。
「けれど、場合よってはアイスキャノンで吹き飛ばした方がいい場面も出てくるのでございます」
(ああ、なるほどね。接近戦ではM16アサルトライフルよりもコルト・ガバメントの方が有利なのと同じ理屈か)
「さっきから気になってたんだけど」
「何でございましょうか?」
『きっと、ペルシーはクリスタの胸が揺れ過ぎて気になっている』
「パメラちゃん!」
「それは気になるというよりも嬉しいのだけれど……」
「ペルシー様まで……、ひどいのです」
「ご、ごめんなさい」
ペルシーが気になっていたのは、クリスタの……ではなくて、
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