第26話 魔物大戦(7)大魔法炸裂! ペルセウス座流星群
「クリスタ、パメラ、プランBに切り替えて、あの魔法を使うぞ」
魔法の出し惜しみをしている場合ではなかった。
今こそあの魔法を使うべきだろう。
町に侵入した魔物の総数は八百匹ほどである。
ペルシーは魔眼を使って、巨人族を中心に大型の魔物を捉えた。
魔物たちは、ペルシーの頭の中の地図上では赤い点となって現れている。
「パメラ、俺の心にシンクロしてくれ」
『ペルシー、既にシンクロしている。いつでもいける!』
魔法AIのパメラドールは、幻想魔法を発動する準備を終えていた。
ペルシーを縛り付けていたロープが一瞬で蒸発して、ペルシーは両手を空に向けて突き出した。
「幻想魔法! ペルセウス座流星群!!!」
ペルシーが魔法を唱えると、成層圏より更に上空の空間が歪みだし、鉄鉱石が次々と出現した。
出現した石は重力で加速しながら空気との摩擦で燃え上がり、ペルシーによってロックオンされた魔物たち目掛けて降り注いでいった――。
ロックオンされたのは、ギガント、トロール、サイクロプスなどの的になりやすい巨人族だ。
五十個ほどの隕石となった石は輝度を増しながら魔物たちを貫き、その衝撃波が周りの魔物たちを巻き添えにした。
それはまるで、天の怒りをかって滅びたソドムとゴモラのようであった――。
シーラシア防衛隊は出遅れたため、巨人族がいた中心付近にはまだ到達していなかったが、その凄まじい衝撃波で大勢が吹き飛ばされることになった。
これほどの衝撃波だ、シーラシア防衛隊も無事ではいられない。しかし、屈強な騎士や冒険者たちのことだ。死ぬことはないだろう。
それほどの衝撃波でもなお、爆心地から離れたところにいた魔物たちが百体あまり生き残った。
シーラシア防衛隊と生き残った魔物たちによる掃討戦がはじまった。
今度の戦力差はシーラシア防衛隊が百五十に、魔物たちが百ほどである。
最初の戦力差から考えると、希望が持てる状況であるが、オーガやミノタウロスなどの強力な魔物もまだ数十隊残っている。
予断は許されない状況に変わりはないのだ。
ペルシーとクリスタは、上空で旋回しているグリフォンたちを叩き落とすために、上空へ転移した。
「ウインドカッター!」
「光子ライフル!」
ペルシーとクリスタの魔法が炸裂し、五十匹のグリフォンたちは次々と落ちていく。
二人発動した魔法の光が空いっぱいに満ちて、光の粒が少しずつ地上に降り注ぐ。
それは戦場に似つかわしくないほど幻想的な光景であった。
「今の状況を確認したい」
『ペルシー、南門付近は悲惨な状況』
「防衛隊はゴブリンやオークたちと戦っています」
「それは彼らに任せよう。オーガとかミノタウロスは残っていないか?」
「まだ数匹いるようです」
『状態異常を引き起こすバジリスクも数体残っている』
「それは厄介だな。そいつらを倒そう」
ペルシーたちは南門付近の建物の影に転移し、防衛隊の後ろからウインドカッターと光ライフルで危険な魔物たちを次々と倒した。
二人の魔法は光り輝くので、防衛隊はその魔法に気が付いたが、後ろを振り向いている暇などなかった。
もちろん、レベッカ、エミリア、ミゲルの三人には判っていたが――。
「よし、これでいいだろう。後は防衛隊に任せよう」
「これからどうしますか?」
「死んだ振りをしたかったんだけど、もうそれはできないか……」
『ペルシー、魔物に殺されたことにしたらいい』
「ジョルダンさんに相談してみようか」
ペルシーたちは絞首刑台のあったところまで転移した。
そこにはリディアとジョルダンの二人が遠巻きで、戦況を見守っていた。
「ペルシー様! ご無事でしたか!」
リディアが近寄ってくると、ペルシーの胸に飛び込んできた。
「あれ?」
「ペルシー様! 凄いです。あれ程の魔法は見たことも聞いたこともありません」
「このジョルダンも同じです。私のような老いぼれでも初めて見ました」
二人のことを忘れていた――。
ペルシー座流星群の発動を目撃されたらしい。
「なんのことでしょうか?」
「惚けても無駄ですよ、ペルシー様。プランBとか、あの魔法を使うぞとか、しっかりと聞こえていました」
「この魔法なら誰がやったのか分からないと思ったんだけど、目撃されちゃったか……」
「ご説明願えますか?」
「説明しましょう。その代わり、俺たちの計画に協力してください」
「犯罪まがいのことでないなら……」
リディアは急に真剣な顔になり「いえ、協力させてください」と言い直した。
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