第6話 手合わせ

魔王が手合わせをしたいと言うことで、全員は移動することになった。

着いた場所は広い中庭だった。 とんでもない広さがあり、ここで野球をしても問題無い位の広さだった。

明美は周りを見渡し、

「広〜〜い!! 凄い広さ!」

大声で叫び、遠くまで響き渡るかのような声を出す。

「広いだろ。 ここは私のお気に入りでな最近は一人でトレーニングしてるのだよ」

「他に一緒にする人はいないの?」

健也がそう聞くと、魔王は気まずそうな顔をして、

「一緒に手合わせしてくれるのがいないのだよ。 魔王様の服を汚すわけにはいかないとかで。 私はそこまで気にしないのに」

「そうか。 けど、今回は俺達がいるからね。 手合わせしようか」

「うむ。 気軽に受けてくれてとても助かる」

そう言って、魔王は少し離れて戦闘態勢をとる。

見かけだけでは只立っているだけのように見えるが、目をギラつかせ、まるで猛獣のように敵意を見せ付けている。

二人はその気迫に少し押されそうになるが、押されまいと魔王を睨み返す。

「では、始めようか」

魔王は静かに二人に言った。

二人は戦闘態勢をとり、自分の身を守れるようにしていた。

言った矢先、魔王が凄まじい瞬発力で一気に健也のそばまで距離を詰める。

そして、凄まじい勢いでハイキックを健也にめがけて放つ。 健也は反射的に両腕を蹴りの放っている方向に向けて防御する。 しかし、蹴りは凄まじく防御の上からでも痺れがくるほどであった。 魔王は蹴りを出した後で、一歩下がった。 白い矢を顔の目の前で通り過ぎたのだ。

「私を忘れちゃいけないよ」

「そうであったな」

明美はすかさず、矢を次から次へと放つ。 しかし、魔王は涼しい顔をしてかわしていた。

「矢の勝負でもしてみるか」

魔王は指を鳴らし、黒い矢を出し、白い矢に当てて行く。

明美は弓を放ち、魔王は指を鳴らし、お互いの矢は互いにぶつかり合って行く。

数秒の時間ではあったが、差は少しずつ開いていく。

黒い矢が押し気味になっている。

明美は負けじと弓を放っているが、反応が腕全体に対して、魔王は指二本で同じ威力の矢を出している。 効率がどちらがいいかは火を見るより明らかなことだった。

黒い矢の数本は明美のそばをかすめていく。

魔王は自分の有利な状況にニヤリと笑う。 しかし、その笑顔もすぐに消え去った。 魔王は危険を察知して上へ飛ぶ。 健也が拳に力を込めていて、殴ろうと思った瞬間の矢先に上へ飛ばれたため、拳は盛大に空振りする。 健也は急いで上を見ようとするが、上から黒い矢が無数に飛んできたのだ。 健也は慌てて防御態勢をとり、自分の身を守る。

黒い矢は健也に襲いかかり、召喚していた籠手がボロボロになっていく。 健也はそこで動けなくなってしまい、体の限界だったのか、膝を地につける。

魔王はそれを見て、標的を変える。

静かに、冷たい目線で明美を見下ろす。

明美は魔王を狙って弓を放とうとするが、魔王はその場からいなくなる。 明美は魔王が消えたことに驚きを隠せずにいられなかった。 魔王を探すために辺りを見渡す。

「ここだよ」

真上からの声。 明美は弓矢から剣に変えて召喚し、上を見ようとするが、

「遅い!」

魔王はすぐに着地し、明美の目の前に立っている。

そして、魔王は間髪入れずに拳を明美に向かって放つ。

明美は剣で防ごうとするが、間に合わない。

明美は歯を食いしばり、目を閉じる。

数瞬先に来る痛みに耐えるためだ。

しかし、拳は飛んでこなかった。

代わりに明美は頭を撫でられている。

「へ?」

拳が飛んでこないことに変な声を出して、明美は目を開ける。

「終了だ。 楽しかったぞ」

明美は笑顔になっている魔王を見ている。

「いい運動になった。 では、健也もこちらに連れて来るか」

魔王は笑顔のままで明美に言う。

明美は思った。

私達の負けだと。

魔王は予想以上に遥かに強かったのだ。

魔王は健也を連れて来て、一礼した。

「いい運動になった。 礼を言う」

「いやぁ、こちらこそ。 しかし、あんな猛攻撃食らうとは思っていなかったよ。 強すぎでしょ」

「ハッハッハ! 魔王は強くないといけないからな。 お前達も強いと思うぞ」

「本当か!?」

「ちょっとだけな」

健也はその答えに不服そうな顔をして、魔王はまた笑っていた。

「お前達は素質があるな。 ではこれからの話をしようか」

魔王は真顔になり、説明を始めようとする。

「では、お前達を狙っている者についての話を始めよう」



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