第4話 敵発見

明美達が夕焼けの見える町へ出てから、少しの時間が経過した。 まだ完全に暗い訳でなく、夕焼けが町を照らしている。

「さっき、何に当たったんだ?」

健也が聞くと、

「敵に当てたのよ。 確か、もう少しだけ先に行ったところね」

「その通りだ。 魔力の探知なら任せとけ!」

明美とペルは自信満々に言っている。

健也があの時窓から見える範囲では当てる物は全くと言っていいほど見当たらなかった。

そうやって考えている内に目的地の場所に着いたのだ。

着いた場所は薄暗い路地裏で人は一人だけいた。

一人の男は右腕を庇うように左手で抑えていた。

男の白いシャツが右腕の部分が血で赤黒く染まっていた。

「助けて下さい!」

男は健也達を見て、泣き叫ぶかのような声で助けを求める。

健也はその男に近くに寄ろうとしたが、明美は腕を伸ばし、男に近づくなと腕で示した。

「助けて下さい! 救急車を呼んでくれ! 早く!」

男は涙を流しながら訴える。

明美はその返答に返したのが、

「どこで怪我したの?」

「それはここで」

「じゃあ何で怪我をしたの?」

「……まさか」

「そのまさかよ。 盗み聞きなんて良くないわよ。 私が飛ばした矢の味はどうだったかしら?」

その答えを見せるかのように男の右腕が姿を変えていく。 右腕は手の部分が蛇の頭へと変貌し、腕の部分は鱗で覆われていた。

「そうか。 何が目的かは知らねぇがここで食い止めてやる!」

男は右腕を伸ばす。 すると、右腕が男の身長以上に伸び、蛇の頭の部分が今にも食いにかかろうとしている勢いで口を大きく開けている。

健也はその姿を見て、すぐに行動を起こす。

健也は籠手を召喚し、左腕に蛇を噛ませる。 蛇は左腕に食らい付き、硬い籠手部分を噛んでいる。 噛んでいると、鈍い音が発した。 蛇は食らいついてた左腕を離した。 蛇を見ると牙が欠けていた。

男は蛇を戻そうと、腕を引き上げようとするが、強い締め付けで引き上げることが出来なかった。 健也の右腕が蛇の首根っこを捕まえており、逃さないようにしていた。

「これで動けないな」

健也はニヤリと笑顔を作り、男に話しかける。

「どうするつもりだ?」

「こうするのよ」

男の問いに明美が答えて、弓矢を召喚する。 弓矢を男に向けて身構える。

男は弓矢を見て右腕を振るうが、健也は離そうとはしなかった。

明美は弓を放ち、男の左腕に命中させる。

「痛い! 痛いよぅ!」

男の左腕には矢が刺さっており、強烈な痛みを叫んで表現している。

「うん。 痛いよね。 それが?」

明美は表情が真顔のまま話す。

男は恐怖した。 この目の前にいる二人はヤバイと心の底から叫んでいる。

男は左手を上げて降参のポーズをとった。 顔は怯えた兎のようにブルブル震えている。

「知ってること全部話してもらおうかしら」

「話す! 話すから! 一体何が聞きたいんだ?」

「まずは誰から頼まれたの?」

「人から金をもらったから頼まれたんだよ」

「人? 魔族じゃないの?」

「人だった。 魔族にはとても見えなかったんだ」

「その人はどんな人?」

「そいつはーー」

男は話そうとした時、左手で頭を抑える。

「止めろ! 止めてくれ!! うわああああ!!!」

男がそう叫んだ直後に倒れこんだ。

「倒れちゃった」

「おそらく魔法をかけていたんだろうな。 バラそうとしたら呪われるとかそういうのを」

ペルが喋った後、カバンから降り、男の状態を確認しに行く。

ペルは首を横に振り、こりゃダメだと呟く。

「まぁ、これで分かったのが誰かに狙われているということだな」

「誰かって誰にだ?」

「分からん。 それを調べるのが今からの仕事になりそうだな」

ペルは答えて、男を見届けていた。 倒れていた男は砂に変わっていき、元の男の姿はなくなっており、全て砂になっていった。

砂の上には魔石が落ちていたのだ。 男が持っていたものであろう。 ペルは魔石を拾い上げ、嘴を大きく開けて、飲み込んだのだ。

「ごちそうさま」

ペルは満足した顔で明美のバッグに戻る。

明美はバッグを下ろし、ペルがバッグに入って行くのを見てから、バッグを持ち上げた。

「収穫は少なかったね」

明美がそう呟くが、

「一応あったからいいじゃないか」

健也が慰めるように答える。

「誰かに狙われているのが分かっただけでもいい情報だ。 ひとまず今回は解散というころで。 いいな?」

ペルの話に二人は頷き、今回は帰宅するということになった。

新しい情報は誰かが狙っている。 それだけでもヤバイ情報だと、ペルは苦虫を噛み潰したような顔をしながら考えていた。

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