第3話 説明会

二人と1匹は今、健也の家にいる。 話をするならということで手っ取り早いのが誰かの家ということだった。 しかし、明美の家に入るにも健也にとっては女の子の部屋というのもあり、そこは避けて、健也の家になったのだ。

明美は部屋にある物を見て、

「普通の部屋ね」

「そりゃあ普通の高校生なのだから普通の部屋だろ」

健也の部屋はシンプルな白の壁に、マンガ、ゲームと多少の娯楽用品と教科書や参考書などが置いてある部屋だった。

その部屋は散らかっていることもなく、全部綺麗に整理されていた。 どこからどう見ても普通の部屋であった。

「何か面白い物でもあるかと思ったんだがな」

ペルはケラケラ笑いながら部屋を舐め回すように見ている。

「面白いのはあったか?」

健也がペルに聞いてみる。

「ないね 。 何かあると思ったんだがな〜」

「あったらここには呼ばないよ。 では話を聞こうか」

全員がテーブルを取り囲って座り、話を始める。

「魔法少女の護衛をやってくれない?」

「護衛?」

「そう。 護衛よ。 私は今までペルを連れて戦ってきたけど、一人だと限界があるのよ。 そこで、健也君の協力があれば今までやってきたことの負担が減る。 あなたにとってもいい話よ」

「確かに一人でするには限界があるな」

明美の言うことは頷ける所があった。

一人だと限界がある。 ついさっき思い知らされたのだから。 もし、俺より強い相手が現れたらどうするのか。 逃げる事も出来ずにそのままやられてしまうという事もある。

健也は考え込んでいると、

「そういえば、お前は何が目的で戦っているんだ?」

ペルは健也に質問をする。

「それはここの魔族の治安が最近になって荒れてきたから仲介役として俺が行ってたのだよ。 昨日のも向こうがかなり暴れてたから正当防衛として止めに入っていたんだよ。 少し、やり過ぎたかもしれないけど……」

「その魔族はどっから来たとか分かるかい?」

「いや」

その質問は健也だけでなく、明美にも目で訴えている。 明美は分からないということを首を横に振って動作で示した。

「じゃあ、せっかくだし説明会をしようか。 明美にも聞いて欲しかったし」

ペルの話に二人は頷いた。

「じゃあ、魔族はどこから来ているかについてだな。 魔族は本来は魔界というところから来ているんだ。 その魔界からゲートを使って、こっちの世界に来ているんだ」

「ゲートって?」

明美がペルに聞く。

「ゲートってのはまぁ門だと思ってくれていいよ。 こっちの世界と魔界を繋げる門だな。 魔族はそのゲートってのを通ってこっちに来てるわけなんだ」

「それって誰でも通れるのか?」

健也が聞く。

「いや、一応条件があるにはあるのだが……。 その条件の中に争い事は起こさないという条件もあるはずなんだ。 最近はなぜか魔族のトラブルが増えている。 人手が足りなくて困っていたんだよ。 そこで健也に協力を求めているのだ」

健也は最近の魔族のトラブルが増えて、仲介役として呼ばれる回数が明らかに増えたのも実感している。 ここで断る理由もないという考えに行き着く。

「分かった。 協力しよう」

「ありがとう」

ペルは一礼する。 アヒルが一礼しているのを見ると嘴が足につくくらいに頭を下げている。

「はい! 協力決まったことだし。 私ね、聞きたいことがあったの」

「何でしょうか」

明美の言葉に健也が聞く。

「魔法は誰からか学んだの?」

「いや。 独学」

「何で使えるの?」

「なぜか使える。 詳しいことは分からない」

明美の質問に健也は淡々と答える。

その質問の答えにペルは不思議な顔をする。

「普通の人なら魔法を使うことはできないのだけどな。 まぁ、折角だし魔法の説明も少しするか」

ペルが言うと、再び話を始めた。

「魔法は本来は俺みたいな精霊から力を授けたりして、お前達に使えるようにしているんだ。 健也は異例ということだな」

「異例?」

「そう。 誰から魔力を貰った訳でもない。 つまり、身内で誰かが魔力を使った経験が健也に継承されている訳だ。 正直、独学で魔法を使っているのは健也が初めてなんだがな」

ペルは困ったなみたいな顔をして、羽で頭を掻いている。

「なぜ使えるかについては家族の誰かが魔法を使えるからってことか?」

「そういうことだな。 そうじゃないと魔法が使えることについての話ができないからな」

健也とペルが話をしていると、明美が机を軽く叩いて、

「話を戻していいかな?」

明美がふてくしながら話に割り込む。

「ああ、魔法の事だったな。 魔法は本来は俺達、つまり精霊の力によってもたらされるものだな。 魔族も魔法が使える者もいるけどな。 しかし、魔力を持たなくても魔法を使える道具がある」

「それが魔石なのよ」

明美は昨日、健也から受け取った赤い石を見せながら話の間に入る。

「この魔石で魔法を使おうとする者が出てきているの。 その魔族達をこらしめて、魔石を取り返すのが私達の役目よ」

明美の話にそうなのかと健也は頷く。

「これで話は終わりね」

「そうだな。 ここまででいいだろう」

ペルがうんうんと頷き、話を終わらせる。

すると、明美は窓を見ている。 まるで誰かがいるような感じで窓を見ている。

すると、明美は立ち上がり、窓を開ける。

「どうした?」

健也が不思議そうに聞く。

「少し、悪い子にはお仕置きしないとね」

明美はそう言って、弓矢を召喚し、外に向かって矢を放った。

その矢を放った音は遠くなり、少しの沈黙に流れる。

「当たったな」

「じゃあ、悪い子のところへ行こうか」

「当たったって何に?」

健也が聞くと返ってきた答えは、

「悪い子よ。 さぁ、今から会いに行くわよ。 みんな、出かけましょうか」

まるで、今からピクニックに行くみたいな軽い口調で明美は言った。

「さて、どんな話がくるのやら」

ペルは苦笑いしながら言う。

そして、三人は夕焼けの見える外に飛び出すように出て行った。

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