第12話
静かに流れる河を堪能する暇もなく、その間ひたすらフェブリスからの質問攻めでオーヴスの時間は奪われていた。
どうやって各種精霊の声を拾い上げているのか。ここに至るまでの生活はどうだったのか。どちらかと言えば、オーヴスの方がフェブリスの「今まで」を知りたかったのだが、目を輝かせて問いかけられては答えざるを得なかった。
「それじゃーさ、あと……」
「はいはい、話は尽きない所だけど、橋は終わりよ。気分を変えなさいね、魔族さんたち?」
フェブリスの話を遮って、リリヴェルが口を開いた。フェブリスは口をとがらせたが、素直に口を噤む。橋を越えた先に広がるのは、草原とその先に連なる森だ。
「ここから先は、貴方の方が詳しいのかしら、フェブリス?」
「まぁアンタらからしたら詳しいかもな。森の途中に、分かれ道がある。北へ行けば港町。そのまま西へ抜ければ更にアイル河へ続く橋だ。んで、南に行きゃあ、アイラン湖を臨めるな」
つらつらと行先を並べるフェブリス。たったそれだけの事なのだが、オーヴスは感心する。
裏を返せば無知を自覚したことになるのだが、今更嘆くこともない。
「んで、オーヴスの兄貴はどっち行きたいんだ?」
「ああ、えっと……港町の方、だったかな?」
ちらりとリリヴェルを窺う。リリヴェルは黙って頷いて見せた。臣下、として自分の立場を決めたフェブリスの手前、そろそろ口出しを控えだしたのかもしれない。
「おっけおっけ。じゃあ、大体三日位だな。上手く馬車とかに巡り合えたらラッキーだけど、橋の閉鎖が解除された情報が届くより早く着くだろーな」
「あらあら、主犯が言えた台詞じゃないわね?」
「うぐっ」
「まぁまぁ、リリヴェルもフェブリスもその辺で。仲良く行こうよ」
二人の間に割って入るようにして、オーヴスは仲裁する。嫌悪し合っているわけではないのだが、リリヴェルは核心をずばり突くのが癖だ。フェブリスは口をとがらせて、若干拗ねている。どうにも、先が思いやられる。とはいえ互いに悪意があるわけでもなし、楽観的に捉えているオーヴス自身がいるのも事実だ。
頭一つ分―下手をすれば一つ半ほど背の低いフェブリスの肩に、そっと手を置く。
フェブリスは機嫌を損ねたままの表情で、オーヴスを見上げた。
オーヴスは笑顔を向けて、フェブリスに告げる。
「案内、頼むよ。僕らには不慣れな地だからね」
「……おう」
にっと、少しだけ笑ったフェブリス。オーヴスの反対側を歩くリリヴェルには舌を出して反抗していたが、リリヴェルはつんとそっぽを向いたまま無視だ。
オーヴスは、深くため息を吐く。
(ここから先、大丈夫かなぁ……)
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