第十九話「……今後の進退」

あるところでは少年が竜と出会い、またあるところではもう一人の少年が級友を救った。

その数日後のことである。

「さて、久々三人で集まったな」

「いうほど久しぶりではなくないか?」

と、何かを成し遂げたような顔をする二人組と、向かい合うようにため息をつく少女の姿があった。

「はぁ」

「おいどうした、さっきからため息20回目だぞ。一時間足らずで20回だから三分 辺りに一回ぐらいため息ついてるぞお前」

「わざわざ数えてたのか⁉」

アメリア、藤堂、神宮寺の順に言葉が交差するがその次が続かない。

さっきからこの調子なのだ。

何を言ってもため息が返ってくる。

いったい俺たちが何をしたのだろうかと小声で神宮寺に話しかけるが分かるわけがないだろうと首を横に振る。

「水臭いぞ、何かあったら相談してくれてもいいじゃないか」

「その通りだ、俺たちは今二人とも気持ちと懐に余裕があるしな!」

「二人は将来……いえ、これからのことを考えていますか?」

ポツリと、下手すれば勘違いかと思うほど小さな声でアメリアはそう呟いた。

これからのことを。

「俺らはここに帰るヒントみたいなものがなかったらすぐに別の国に向かうつもり だがな」

「そうなの!?」

「そうなんですよ」

口調がむちゃくちゃである。

「じ、じゃあついていってもいいですか!」

「「落ち着け、何が何だかさっぱりわからない」」

俺達は二人そろってアメリアに事の顛末を聞いたのだった。

話を聞いた俺たちは二人そろってしばらく考えた。

どうしようかなとかではなく、おれ達についてきてこの子の将来本当に大丈夫なの?といういわゆる責任のようなものを感じ始めていた。

簡単に言うと商人である親から旅をして経験を積んだら商人の自分たちの地位を譲るみたいなことを言われたとか何とか。

本人は自覚がないがアメリアのところの家はまぁまぁ大きい商人の家の様だ。

その地位を譲るという事はその実権がアメリアにわたるという事。

「アメリア、その話俺たち以外にしたか?」

「多分もうみんな知ってるよ」

「神宮寺」

「何だ藤堂よ、俺も言いたいことはわかるがあえて言ってくれ」

「明日にはこの町を出る、準備急ぐぞ」

「まぁそうなるだろうな」

「アメリアを家に送り届けた後俺らも荷物まとめるぞ」

「了解」

「アメリア、明日の朝迎えに行くからそれまでに荷物まとめとけ」

おそらく、彼女が商会を継ぐということになればその立ち位置を狙っていた物からすれば目の上のたんこぶだ。

下手すれば殺されかねない。

こうすることで旅に出ざるを得ない状況を作ったアメリアの親には感心させられるが同時に本当に殺されたらどうするんだろうか、とも思う。

とりあえず今度アメリアの親に合ったら父親を一発しばくと心の中で決めながら俺たちはその日アメリアを家まで送り届けたのだった。



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