第十八話「しばらく狩りはごめんだな」

終わってしまえば案外あっけなかった。

俺がやったのは偶然任せの、いわば自分を守る気のない一発ぽっきりの戦いだったからだ。

運よく、ドラゴンのおかげで体は形を保っているがもしもあのタイミングで何も来なかったらと思うとぞっとする。

だが同時に俺はあのドラゴンのことが知りたくて仕方がなかった。

どこまでも透き通る体に何もかもを見透かしたような眼。

あの眼はまるで俺が遅羽得ていることを理解したうえで助けたかの長な錯覚を俺に与える。

当然そんなことはない。

ただの気まぐれだろう。

あの素晴らしくキレイでかっこいいドラゴンも。

あのカエルの化け物と同じように、狩らなければ自分が死ぬということはないのだから。

好奇心に任せて、楽しそうな方を選び攻撃してくる。

こちらの都合もお構いなしに。


 いや、一つ彼らに謝らなければならないことがあるとすれば今回はあのカエルから仕掛けてきたわけではないということだ。

俺が進行方向を変えるために攻撃を仕掛けて、最初はどうだったかは知らない。

俺の持っている武器が弓だけだろうと考えたかもしれない。

真相はいまだ闇の中だが、俺が先に攻撃したから向こうもまた俺のことを攻撃してきたのだ。

彼らからすればじゃれる程度のやり取りでもこちらから見れば一撃でもまともに食らえば致命傷にすらなりかねない。

今回のような特別な理由でもない限りモンスター討伐はごめんだな、と思い知らされた日になった。

その日から少しの間、俺は採取のクエスト以外をかたくなに断り続けていたが。

その後、藤堂から

「この間ドラゴンに出会ったんだよ、クエストのやつ。透明でキラキラ光ってて  さぁ‼」

と興奮気味に語られるのだがそれはまた別のお話。

もちろんそこからドラゴンについて朝まで語り合うというくだりも別のお話だ。


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