第十六話「その時神宮寺は」

地面を強く踏みしめる。

今から挑むのは、公式の依頼ではない。

なので、相手の強さもわからず誰かを頼ることもできない。

「……千里眼」

スキルを使用。

これは藤堂やアメリとアさんがいないときに得たスキルで遠くのものが見えるという単純なスキルだ。

俺たちのいた世界のようにコンクリートやガラスで作られた建物ばかりだと遮蔽物で遠すぎるところを見るのは難しいが今自分がいるような林の中であれば太陽光の光をさえぎる物こそあれ反射するものはない。


結論。

際限なく遠くを見ることができる。


自分がなぜ存在もしないクエストを受け林の中を走っているかというとそれは俺が彼女と離れた後から話は始まる。


彼女と離れて一日、二日立った頃。

俺は採取のクエストを受けて町の外の林を走り回っていた。

薬草だったり人工的な繁殖や生育をさせることができない種類の植物は俺らにはいい小遣い稼ぎになる。

「こんなもんか、帰ろ」

その日に集める分を一通り集め終わった俺は昼飯のことを考えていた。

その日は早朝のみ花を咲かす薬草などが多かったため午前中には仕事が終わってしまっていた。

食堂もいいし、ギルド内の酒場でもいい。

いっそのこと新しい店でも開拓してやろうかと思っていたのだ。

そんな瞬間のことだった。

低く、どこまでも低く大きなうなり声が森に響き渡ったのだ。

「なんだ?」

音のした方へと足音をお忍ばせて近寄り木の陰から音の発生主を観察する。

「マジかよ……!」

そこには、カエルのようなそれでいてカエルよりも断然筋肉を持つ俺の知らない生物がそこにはいた。

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