第二章 第十五話「竜の生態」

「森に帰ったんです……か?はい、そうですね。

 それを確認したということでしたら 討伐ではなく撃退ということになりますが ちゃんとクエストクリアですよ」

「はぁ、よかったです。取り消しできないって聞いてたのでどうしようかと」

本当に良かった。

「それにしても、竜種を相手にして無傷で戦闘もなく帰ってこられる方がいるとい うのには驚きました」

大体わかっていたがやはり竜を相手にするときはパーティーを組んでいくらしい。

大きさや種類によってはグループをいくつも集めて緊急クエストにでもするのだろう。

そう考えてみるとあの竜はやはり気前が良すぎるように思う。

「ちなみにあの竜ってどんな種類の竜だったんですかね?」

この質問はさっきもさりげなくしたのだがギルドの人もよくわからないようだった。

「クリスタルのようだったんですよね?」

んー。

「そうですね、さっきから聞いているとやはり竜にしては性格が穏やかすぎるというか……しゃべってましたし」

「もしかしたらなのでここだけの話になるんですが」

「はい、何かあるんですか?」

聞けるなら聞いておきたい、今はまだ誰にも見せてないがあの剣がどんな剣なのか調査する手助けになるかもしれないと思ったのだ。

「成竜の中でも特に長寿なもの。

 つまり、500年以上生きた者にとっては自分の力を見せることは特に意味のあるこ とではないようなのです」

「それは、自主的に争いをしたがらないとかですか?」

「その通りです。

 例は少ないんですがあなたのように竜に出会っても無傷で帰ってきた人はいるの ですよ。

 ……もちろん自分から戦いを仕掛けた人は無事にはすまないですけど」

まぁ当然だろうと少し笑う。

「仕掛けなくて正解でした」

「その通りです。話が通じたとなれば、わざわざ仕掛けないのが得策でしょう」

なるほど、覚えておこう。

「世間的には、ですが」

あれ?

「冒険者の方々を見守っている私たちからすると話が通じるのであれば、一先ず仕掛けてみるのもありだと思うのです。」

「それは、なぜでしょう?」

「力試し、ですよ」

楽しそうにその職員さんは笑った。

「さっき言った年齢ほどの成竜は大抵落ち着いているので、奇襲とかなしで誠意を見せればこちらから仕掛けても軽くあしらってくれます」

その後、一言続けて。

「確証はありませんが」

いや、確証はないのか。

仕掛ければいいのかそれとも仕掛けない方がいいのか。

「ともあれクエストクリアおめでとうございます!これをバネにして次のクエストも頑張ってください」

ギルドを出てから、剣の鑑定所がないかを聞くのを忘れていたのに気づいたが今日はもう疲れたので帰ることにした。

「……帰りにアメリアのところに寄って聞こう」

そういや、神宮寺のほうはどうしてるんだろうな。



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