第十三話「さて、どうしようか……?」
ドラゴンの討伐という、絶対的に初心者冒険者にはありえないクエストを受けることになってしまい俺は今森の中心に向かって歩いていた。
「どうするかな……」
心もとない軽武装に身を包みドラゴンを狩りに行こうというのだから本職のドゴさんなどからしてみれば笑うしかないだろう。
あの時、ギルドのお姉さんは……。
『とりあえず、様子見ってことでもいいので、いつでも逃げられるように 軽武装で行ってきてください』
ギルドのお姉さん、クエストの時も思ったけどかなり初心者でも容赦がない気がする。
『大丈夫か、藤堂?』
『私たちも何か援護に回れることがあるかもしれないですし、ついていき ます!』
神宮寺とアメリアは交互に言ってきたが、俺としては危険なところに下手に二人を連れて行くのはまずいと思い一人で行くことにしたのだ。
この世界ではドラゴンは相当強力な種族として扱われている。
RPGっぽいな、と思った。
……正直めっちゃ来てほしい。
その後、
『神宮寺』
『なんだ、藤堂?』
『……もし、三日間戻ってこなかったら、その時は頼むわ……』
『お、おう』
『アメリア』
『な、なんでしょうか?』
『俺、もしもこの戦いから返れたら……譲渡スキル習得するわ』
『藤堂、それはある意味死亡フラグだ』
『大丈夫だ、うん』
目のハイライトが消えた俺を励ますように二人はフォローを入れてくれ、控えめながらも手を振って送り出してくれた。
そして今。
こうして歩いてドラゴンが生息しているという森の奥に向かって歩いているというわけなのだが……。
ドラゴンほどの大きさのものが動き回っていたら森に何かしらの動きがあると思い、それを道しるべにしたかったのだが木にも、空にも一向に動きがない。
薄暗い森の中、草をかき分けて歩いていくと……開けた場所に出てきた。
一言でいえば、結晶で世界ができているようだった。
薄暗い森の中で鏡のように太陽の光を反射し、キラキラと輝いている。
その中に、クリスタルのような体を持つ、『それ』がいた。
「……ドラゴンか」
「何ものだ、こんなおいぼれに一体何の用だ?」
「しかも喋ることができるのか……」
「喋ることくらいはできる、何年生きていると思っている?近くを通りが かった人間の言葉。
一度では足りなくても、何度も繰り返せば言葉くらいのもの、理解する ことは可能だろう?」
「向こうの世界でも長く生きたけ粉などは喋ることができると聞いたこと があるな」
「何を言っている……、お前の目的は一体なんなのだ……?」
重く、直接頭の中に響いてくるような低音でドラゴンは語り掛けてくる。
眠りを邪魔されたのに腹が立ったのか、それとも別の理由かひどくめんどくさそうに俺の相手をしている。
回りくどくてもだめだな。
「竜討伐の依頼を受けさせてもらった」
その言葉にドラゴンの体がピクリと反応を見せたと思うと、さっきまでは開けようともしていなかった目を大きく見開いてこちらの姿を見ていた。
「その程度の武装でドラゴンを相手取るというのか……?老いたとはい え、軽く見られたものだのう」
「今日は目視で確認できる位置まで近づけたらいいと思ってたからな」
「ほう?」
「そうしたら帰ろうと思っていた」
「帰すと思うか?」
ドラゴンはその大きく美しい体をゆっくりと起こすと俺をまっすぐ見据えていった。
なので、俺もまっすぐ言い返すことにした。
「思ってないと、やってこないさ」
さて、ここからどうしようか……?
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