第十一話「マジですか?」
全体的に知っている料理がない。
絶望的にもほどってもんがあるだろう。
思わず俺は天を仰いでいた。
「どうした、藤堂。そんな絶望した顔をして、まさか……虫を使った料理 とかを見つけてしまったのか?忘れろ、それになかなかおいしいものと 聞くし……」
「……う」
「ん?聞こえないぞ」
「違うんだ、ことごとく知らないメニューだらけなんだ。どうしろという んだ?」
「ちょっと貸してくれ」
よっ、と声を上げながらメニューの受け渡しをするとすぐに神宮寺の顔も驚愕に染まった。
「知らないメニューだらけだろ?どうしようかな、アメリアに聞くしかな いよな……「藤堂、ちょっといいか」
「お、おう。どうしたよ?」
突然俺の言葉をさえぎるようにして深刻そうに言ってきた神宮寺に戸惑ういながらもそう返事をする。
「藤堂、これ……普通に前の世界にもあったわ」
「な、なんだってー!」
「どうしたんですか⁉」
隣の席でメニューを開いていたアメリアが慌てて尋ねてきたのを何でもないといいつつ、神宮寺に聞いてみた。
「じゃあこのボルシチって何?」
「ロシアとかで食べられているスープのようなものじゃあなかったか?赤 いんだよ」
「ということは……」
「この辺全部、何かしら向こうにもあったものだろうな」
「嘘だろ⁉」
とりあえず悔しかった俺はボルシチを頼むことにした。
……………。
「食べたなぁ」
「そうだな、やっぱり向こうと食べ物が変わらないっていうのはいいもの だ」
「久々にあの料理食べたけどやっぱりおいしかったです」
なんだかんだ言ってアメリアは最後まで甘いものを頼むか悩んでいた
が、泣く泣く諦めていた。
「これからどうするよ?」
神宮寺が俺に言ってきた。
「そうだな、帰るためにはもといここで暮らしていくにしても金は絶対に 必要だし、アメリア、なんか仕事ってあるか?」
「仕事っていうと冒険者……とかですかね」
「冒険者か……」
なかなかいい響きだ、ロマンにあふれている。
「でも冒険者としてやっていくには武器や防具なども必要ですし、まずは そこからですね」
……いきなり現実的な話に戻されたが、まぁいいか。
そうして俺たちは、ギルドのカウンターまで来たわけだが。
「じゃあ皆さん、採取クエストでいいですね?」
それにうなずくことで返答しあとはクエストの受注をまつだけだったはずなのに……なのに。
「あっ」
「……え?」
「間違えて、藤堂さんだけ高難度のクエスト受けちゃいました……」
「ま、マジですか……?」
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