第23話 最後の死闘! 洋上の大激突!
オロチが黒い炎を噴き出すために力をためた数秒の間に、
その巨体からは考えられないほど素早い動きで一瞬にしてオロチとの距離を詰めると、
ガツンと耳をつんざく音が鳴り響き、大きくオロチの顔が左に振られる。
激しい衝撃に、ヒミカは振り落とされないよう必死に耐えた。
「くぅぅぅっ!」
強烈な一撃を浴びてオロチが溜め込んでいた黒炎の力はあっけなく霧散してしまった。
「お、おのれ……」
ヒミカは怒りに顔を
オロチの口から鮮血がしたたり落ちている。
「な、何だと……?」
ヒミカは信じられないといった顔で目を見開いた。
漆黒の大鬼の拳は、先ほどまでとはケタ違いの威力を発揮していた。
満月に照らされた漆黒の海原の上、巨大な黒い鬼と長大な銀色の蛇がにらみ合う。
互いに主たる女をその身に乗せて対峙する2体の巨神の姿は、さながら神話の物語を
「立場が逆転したわね。今度はあなたが時間に追われる番よ」
「立場が逆転? 身の程を知れ。古の邪神たるオロチに刃向かう愚かな娘よ」
ヒミカは身を焦がさんばかりの怒りが憎悪と殺意となって怒髪が天を突くのを感じていた。
2人の間にそれ以上の言葉も視線も不要だった。
反対にオロチは
ギシギシと巨躯の骨がきしむ音が聞こえるほどの強烈な巻き付きに、
オロチは
先ほどよりもさらに大きな
鮮血が舞い散るのも構わず、
ヒミカは振り落とされて海中へ落ちそうになるが、とっさに呼び寄せたオロチの尾に乗って難を逃れる。
オロチは
だが、すんでのところで
その牙が肌を突き抜けて肉に食い込むのもかまわずに
オロチの
残された一本の牙も折れて
もはやオロチも
「くっ……何というバケモノだ」
絶対の存在だと長年信奉してきた邪神の傷つき果てたその姿を目の当たりにして、銀髪妖狐のその声からはすでに余裕も自信も失われている。
「死んでも……死んでも負けるわけにはいかないのよ!」
反対に
鬼留神社始まって以来の落ちこぼれ。
史上最弱の鬼
そう呼ばれ続けた。
「負けたくない」
そうした汚名への反骨心だけで
だが、
いつでも
「負けられない……負けたくない!」
その言葉に込められた真意はもはや以前とは違っていた。
信じてくれた
ずっと傷だらけだった
だからこそ
「
牙を抜かれてボロボロのオロチが苦しげな悲鳴を上げる。
オロチはその尾で
ヒミカはのた打ち回って苦しむオロチの体に必死にしがみついていた。
「くっ……私はこんなところで敗れるわけにはいかん!」
懸命にオロチの頭の上に再び昇ると、ヒミカは憎悪に満ちた視線を
オロチは牙を失った口を震わせながらそれでも大きく開いた。
「灰すら残らないほどに消し去ってやる!」
黒く絶望的な波動がオロチの口の中に充満していく。
だが、
高レートの妖貨をかけて力を高めたことにより、
そしてその炉が体の奥底から競りあがるエネルギーを生み出し、それが
たまらず口を開けた
「消え失せろ!」
ヒミカの叫びとともにオロチは充満した波動を巨大な黒炎に変え、
爆発音とともに黒炎は大気を焼きながら
「消えるのはそっちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
赤と黒の炎が海上で正面衝突し、風圧が海面を大きく波立たせ、海水を蒸気に変える。
戦いを見守っていた白雪たちが乗る船は転覆するかというほどに大きく揺れた。
ぶつかり合う炎は2体の巨神の間で互いを飲み込もうとせめぎ合っている。
激しい水しぶきが舞い上がり、
「なっ……何だと?」
眼前に迫り来る巨大な
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