第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!
第1話 初遭遇! ヒミカと響詩郎
「ようこそ」
その声がするやいなや目隠しを外され、
横転したバスハウスの中で結界に絡め取られた
意識を失っていたのが数十分間のことだったのか数時間のことだったのかは分からないが、目隠しの布を外されると、彼の目にまず最初に飛び込んできたのは大きなはめ殺しの窓だった。
その窓の向こうには黒い夜の海原が見える。
揺れは比較的静かであるため、まだ外洋には出ていないことは分かったが、それ以外は何も分からなかった。
視界が慣れてくると
部屋の中にはふたつのベッドが1メートルほどの間隔をおいて置かれており、その片方に
そしてもう片方のベッドの端に1人の女性が腰をかけていた。
最初に声をかけてきたのはその女性だった。
長く
頭髪からのぞく白い耳と、何よりもその独特の優雅で
あの日、密航に使われた船で
「俺を
「薬王院ヒミカだ。あいにくだが貴様をここに連れてきたのは別の理由がある」
そう言うとヒミカは切れ長の目を細めた。
偽名だとしても相手があっさりと自分の名を名乗ったことに
(やっぱり俺を生きては帰さないつもりだな。けど何でこんな回りくどい
内心の疑念が顔に出ないよう注意しながら、
「まあ、どんな理由であれ、あんたみたいな美人に呼ばれるのは悪くないね。ただ、このロープは外してくれないか? そういう趣味は無いんで」
そう言うと
両手両足はロープでかなり堅固に縛られ、立ち上がるのも困難な状態となっている。
だが、
「あんた心配性だな。俺にはあんたを殴り倒してここを脱出するなんて芸当は逆立ちしても出来ないぜ? こんなにガチガチに手足を縛らなくても大丈夫だって」
だがヒミカは
「フン。断る。私は抵抗できない相手をこうして見下してやるのが事のほか好きでな」
「……いい趣味してるぜ。で、俺を殺さずにこんなところまで連れてきたのはどうゆう御用向きなんだ?」
「貴様の相棒。あの鬼使いの
そう言うヒミカの声は話の内容とは対照的に楽しげだった。
「部下がやられた割にはずいぶんと楽観的だな」
「なに。奴らに力が無かった。それだけのことだ」
涼しげな顔でそう言うヒミカから視線を外さず、
「で、この楽しいお喋りの果てに俺をさらった理由を聞かせてくれるのか?」
「それを知っても貴様にはどうすることも出来ん」
端的なヒミカの言葉にこれ以上なく嫌な感じを受けた
彼女の言う通り、今はどうすることも出来ない。
「助けが来るなどと期待しないほうがいい。ここはまだ東京湾内だが、この船は絶海の孤島のようなものだ。意味が分かるか?」
ヒミカの問いに
「船ごと結界に隠しているのか?」
「そうとも。そんな芸当をなんなくこなせる優秀な結界士を私は味方につけている」
(どうりで
それだけの力を持つ結界士であれば、妖魔のニオイも完全にシャットアウト出来る。
「少しの間、ここにいろ。じきに自分が何をすることになるのか分かる。貴様に残された時間はあとわずか。それまではその
そう言うとヒミカは部屋に
入れ替わりに入ってきたのはカラスの妖魔・ヨンスだった。
「人生の最後をあんたみたいな暗い奴と過ごすことになるとは思わなかったぜ」
ヨンスは当然のように
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます