第8話 敵襲! 迎撃!
2体の妖魔らは姿を隠す結界の中に身を置きながら、目の前のバスハウスを見上げた。
「よかったじゃねえかサバド。意外にも早く復讐の機会が巡ってきたぜ?」
そう言ってフリッガーは相棒の顔を見た。
「あの女。必ず殺してやる」
サバドの目は血走っており、静かな声の中にも殺意が充満しているのが聞き取れる。
敵を討つことに集中している相棒のその様子に満足して、フリッガーは背後に立つ人間の少女に声をかけた。
「倫。もう結界を解いていいぞ。ここからは俺たちの仕事だ」
結界士・倫。
今夜の彼女の仕事は自分が突き止めた標的の居所に仲間を案内することと、その際に接近を敵に気取られないよう結界で彼らの姿を隠しておくことだった。
フリッガーの言葉に倫は黙って結界を解いた。
結界内の妖力を無効化することで気配やニオイを外部から感知されない強力な結界だが、その中にいる以上、妖魔らは本来の力を発揮できない。
人の姿から従来の妖魔の姿へと変身するためには結界の外に出る必要があった。
事前の打ち合わせ通り、サバドとフリッガーは倫の結界の外に出て妖魔としての姿を取り戻し、倫は彼らが出た後で再び結界を張ってその中で待機する。
灰色熊の姿に変貌したフリッガーは自慢の巨体を活かした体当たりを二度、三度とバスハウスの外壁に向かってぶちまかした。
轟音を立ててバスハウスが大きく前後に揺れる。
窓ガラスがいくつも割れた。
その様子を見ている白イタチの妖魔・サバドの目には相変わらずギラギラとした殺意がありありと見て取れる。
大きなバスハウスが横倒しになるのに、そう時を要さなかった。
フリッガーが四度目の体当たりを仕掛けたところで、バスハウスは土煙を
フリッガーは腕をボキボキと鳴らしながら、自分の最初の仕事が完了したことを見届ける。
その顔に満足感はなかったが、これから訪れるであろう修羅場への高揚感が漂っていた。
すぐに彼らが予期した事態はやってきた。
横倒しになったバスハウスの窓枠がガラスを粉々に
サバドとフリッガーが思わず身構える前方では、バスハウスの中から若い女が姿を現した。
それが昨夜一戦を交えた女であると分かると、サバドは憎悪の込められた目で彼女を
その
「よう。昨夜はコイツが世話になったらしいな」
フリッガーの言葉に
「何よ。仲間を連れて仕返しに来たってわけ? なら今度はまとめて地獄に送ってあげる」
「仲間の男はさぞかし【死の刻限】の恐怖に震え上がってるだろう? おまえがその体で優しく
そう言うとフリッガーは下卑た笑い声を立てた。
だが
「あいにくだけど
サバドは自慢の跳躍力で
それらはまるで罪人の斬首を行うギロチンの刃のように
一瞬でも油断すれば五体バラバラにされる。
その緊張感が寒気となって
光刃がアスファルトを削る硬い音を聞きながら、
彼女の後方に着地したサバドは光刃を今度はサーベルのようにして右手に握り、
「接近戦で私とやり合おうっての? いい度胸ね!」
そう言って自分の間合いに入り込んできた
「図に乗りやがって! 小娘が!」
サバドが手にした光刃で
光刃の切っ先はまるでムチのようにしなり、
しかし
しかも大きさは
「チッ!」
サバドは
フェンシングのサーベルのように次々と突き出される光刃を、
実際、
残り少ない予算を考えれば仕方のないことだったが、このような
いまや
サバドは徐々に劣勢に陥っていき、光刃で
「はぁっ!」
気合一閃。
「うおっ!」
虚を突かれて転倒するサバドを眼前にして、
「これがメリハリってやつよ!」
巨岩のような
だが、突然自分の頭上を
白い車体の軽トラックが宙を舞って、今まさに
「くっ!」
ガシャンと耳を
その
フリッガーはその自慢の腕力で、ワゴン車を
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