第10話

「鬼の宝は真の持ち主の元へ。」

「成程。真の持ち主は民草というわけか。」

「然り、然り。」

館近くの木の上で桃太郎と温羅、猿児とが話していた。一同は鬼を模した面をしている。

「あなた方の暮らしに多少用立ててもいいと思いますよ?名を騙られた慰謝料分として。」

「なるほどなぁ。余程困った時は使わせてもらおうか。だが、我らは我らの稼ぎで日ごろは十分潤っている。」

そう言って温羅は笑った。その笑顔を見て、桃太郎はやはり、同じ事を思う。どちらが鬼か、と。古来、鬼や妖として葬られた者達の、どれほどが真に鬼であったろう。鬼であるのは誰か、妖であるのは誰か。桃太郎は考えずには居られなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る