第9話

「盗賊だー!」

ある夜、街にある豪族の館が襲われた。館は上へ下への大騒ぎになった。だが、盗賊の姿は既にどこにもなかった。

 あったのは空になった倉庫だけだった。そして、その倉には壁に歌が残されていた。

「鬼宝還来、真主手中」

倉庫にあったのは豪族が鬼の名を騙り、不正に貯めた財であった。豪族はただ泣き寝入りするしかなかった。

 その夜を皮切りに、街の中では同じように不正を働いて為した財が次々に盗まれるという被害が相次いだ。

 そして、これは公にはされていないが、生活に困窮するものの元へ、一包みの金が届けられることがあったという。

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