第5話

 鳥の少年は焚き火で身体を温め、きびだんごを含ませるとすぐに意識を取り戻した。

 彼の話によると、彼はずっととある豪族に囚われていたのだという。最初は猟師の罠にかかり、見世物小屋に売られ、更に豪族に売られたのだという事だった。彼等の目的は、少年の持つ妙なる歌声と綺麗な羽だった。

 だが、ある日、彼は病にかかり、声も掠れ、羽の色も褪せた。怒った豪族は彼の羽の中でまだマシなものを全部抜き取り、彼を痛めつけて川に捨てたのだという。

 桃太郎は絶句した。

「人は…そこまでひどい事が出来るものなのか…」

「我もたくさんそういうことを見てきましたよ。人は自分と違うという存在をある時は恐れから、ある時は嫌悪から、迫害する生き物のようですねぇ。」

猿児が遠くを見るような目で言った。それは、半ば何かを諦めたような、そんな顔にも見えた。

「助けて下さるのは桃太郎様だけです。」

疾風も奥歯を噛み締めながら言った。鳥の彼は涙を流しながら言った。

「自分も皆と行きたい…お願いです…どうか…」

震える身体を疾風が抱きしめた。同じ痛みを分かち合うように。

「私達は鬼が島へ行く。危険かもしれないが…」

「桃太郎様。人間より危険なものなど、自分には無いように思う。」

鳥の少年はまっすぐに桃太郎を見て言った。桃太郎は何も言えなかった。

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