何気ない日常
「じゃあ、また後でな」
「うん」
学園内にはコースが定められており、
上から特進選抜コース、進学選抜コース、進学コースが存在する。
校舎も構造上分けられており図書館や学食などの施設のみが共同スペースとなっている。
その為、兄とは正門に入ってから別れるのがお決まりのパターンとなった。
「おっはよー!」
「ひゃっ?!」
そんなことを考えながら歩いていると後ろから思い切り背中を叩かれる。
「何よ、その腑抜けた声は。
朝だからってボーッとしてちゃ駄目よ」
あまりの痛さに背中をさすっていると元気な声が響いてきた。
「……美久ちゃん」
そう言って笑うのは同じクラスで仲良くなった
彼女は明るくて元気な性格をしており、誰にも話しかけられず戸惑っていたわたしに声をかけてくれて仲良くなった。
「おいおい。いきなり人の背中叩く奴がいるかっての!水瀬はお前みたいに野蛮で力の強い女じゃねぇんだよ」
「何ですって?!」
そう言う彼は美久ちゃんの
美久ちゃん曰く腐れ縁で、赤ちゃんの頃から一緒にいるそう。
「二人は本当に仲がいいんだね」
「「何でそうなるの(なんだ)?!」」
わたしの微笑みに対して息ぴったりに答える二人はやっぱり仲がいいと思う。
「はぁ…。もう馬鹿なこと言ってないで早く教室行くよ」
何だかデジャブのような美久ちゃんの発言に、わたし達は普通科進学コースのある校舎に入っていった。
教室は3階。6クラスあるなかでFクラスに属するわたし達は階段を上がってから右手奥に進む。
クラスに入ると時間が早いせいかまだちらほらとしか生徒は来ていないようだ。
まだ席替えをしていない為、残念なことにわたしは二人と席が遠い。だが苗字が近い二人は隣同士なのだ。
「何であんたと隣なのよ」
「それはオレの台詞だ」
そんな会話を後ろにわたしは席に着くと1限の準備をする。今日の1限はわたしの苦手な数学だ。ため息をついていると準備を終えた美久ちゃんがわたしの前の席に座った。
「そういえば数学の宿題やってきた?」
「うん。難しかったけど教えてもらいながら頑張ったよ」
「詩春のお兄さん頭いいもんね〜。
確かここの特進選抜で首席合格だったっけ?」
あー、怖い怖い。と付け足すと、美久ちゃんはわたしの机にある教科書を開いた。
「は?宿題なんてあったか?」
「ちょっとあんたは何しれっと会話に入ってきてるのよ」
そんな話をしていると、わたしの隣の席に神宮寺くんが座った。
「いいじゃねーか、別に。っていうか宿題って何だよ!」
「宿題は……」
「教科書15ページの問い1〜5までの練習問題、だったよね?」
わたしが教えようとすると、後ろから先に答えが返ってきた。
「なっ、蒼!」
「おはよう。水瀬さんに西園寺さん」
「おはよう、三上くん!」
「おはよー」
「って、オレを無視すんじゃねぇ!!」
盛大な神宮寺くんのツッコミさえも華麗にスルーをしてしまう彼は
彼も二人と同じ中学校で仲が良かったらしい。
「朝から恭弥はうるさいな。しかもそこは俺の席だから退いて。それに宿題やってきてないって…」
「忘れてたんだよ!昨日は面白いお笑い番組やってたからつい…」
「あ。あたしもそれ観てた」
「あれすげー面白かったよな!」
二人は完全にその話で盛り上がってしまっている。
「恭弥は宿題しないとまずいでしょ?
そんな話してる余裕があるってことは当てられても平気なんだ?」
そう言って笑う三上くんはなかなかに迫力がある。普段は天然な発言が多いが、中学生の時に学級委員を務めていただけあってこういうところはしっかりしている。
「ムリデス。ゴメンナサイ。オシエテクダサイ」
そうして神宮寺くんは強制連行させられた。わたしも美久ちゃんがわからない問題だけを教えていると、
「二人ともおはよう」
郁ちゃんがやってきた。
「おはよう!郁ちゃん!」
「おはよー。今日は珍しく遅いね?」
「今日は電車に乗り遅れて…」
彼女の名前は
席は美久ちゃんの三つ後ろで、とても真面目な性格をしている。わたしが忘れ物をした時に助けてくれたことがきっかけで仲良くなったのだ。
三人で他愛もない話をしていると、教室のクラスの前扉が開き先生が入ってきた。
「今日は全校集会があるからHRはその後行うぞ〜。お前ら取り敢えず適当に体育館に向かえ」
担任の
「全校集会少し憂鬱かも…」
「規格外に人数が多いのに全校集会だなんて本当に大変だな」
わたしの言葉に頷く郁ちゃんも人がたくさん集まるところは苦手なようだ。
「おーい、お前ら行こうぜ」
声の先にいたのは先程必死に課題にくらいついていた神宮寺くんと、その先生である三上くん。
「あんた課題終わったの?」
「おー、ばっちし!オレはやれば出来るかんな」
「恭弥、それはちゃんとやってきてから言おうね?」
「ハイ。ゴメンナサイ」
わたし達は笑いながら体育館に向かった。
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