長い長い時間



全校集会。

これはなんとも退屈な時間だ。


それに長時間立っていることはなかなかに疲れる。まして慣れない校歌を歌ったり、連絡事項を伝えられたら尚更だ。


一番辛いのはまさに今行われている学長のお話かもしれない。



「えー、ですから。人というのはお互い支え合って…」



「何この王道的なパターン!」とツッコミたくなるお話が先程からずっと続いている。



「では、これで学長のお話は終わりになります」



そろそろ足の方も限界、と考えていた時にようやく学長のお話が終わった。



「続いて生徒会長のお話です」



まだ続くの、と思ったところでハッとした。生徒会長の挨拶ならばお兄ちゃんが壇上に上がるということだ。


……大丈夫かな。



「えー、生徒会長の水瀬だ。これから話を始めるわけだが…」



マイクの前で凛として喋る姿。

トモちゃん。心配は必要なかったみたいだよ。



「面倒だから副会長に代わってもらう」



……前言撤回。

お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんだった。



「ってなわけで、バトンタッーチ!」



そう言うと兄はステージ袖にはけていった。



「会長!何を言ってるんですか!

そんな気まぐれで放棄するのは…」

「まぁまぁ、そんな堅いこと言わずに」



そんな声がステージ袖から聞こえたかと思うと、一人の男の人が出てきた。



「只今ご紹介に預かりました生徒会副会長の岩城斗真です。今回は僕が会長の代理としてお話をさせて頂きます」



その人は真面目を絵に描いたような雰囲気を持ち、饒舌に話し始めた。



「私達生徒会はより良い学園作りの為、日々活動をしています。一年生の皆さんは入学して三ヶ月経ちましたが学校には慣れてきていますか?」



そう言って副会長はわたし達一年生を見た。



「僕は中学生の時からこの生徒会に憧れていました。皆さんもこの学校で何か得られるものを一つでも見つけ、打ち込んでいって下さい」



そして、と続けると次は何故か舞台袖をちらりと見たかと思うと二年生と三年生に目を向けた。



「僕を始めとする上級生の皆さんは一年生の見本としてくれぐれも…。くーれぐれも、人に迷惑をかけることのないよう生活をして下さい」



そう言い終えると、



「これで会長代理の話を終わりにします」



一礼をして舞台袖に戻っていく。



——パチパチ パチパチ



先程にはなかった拍手が湧き上がると、



「おいおい最後は俺への当てつけか〜」

「ちょっ、やめて下さい会長!」

「斗真ちゃーん!ナイススピーチ!」

「深堂先輩もからかわないで下さい!」



舞台袖からも賑やかな声が聞こえてきた。



「これで全校集会は終わります。

HRは省略されますので生徒の皆さんは1限の準備をして下さい」



こうして、放送委員の一言により長かった全校集会は終わりを迎えた。


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