第7話(6)

(6)

2019年12月3日

成島佳子は何時もの様に、フェイスブックを眺めていた。結構、プロフィール写真の写りはいい。男が常に機嫌を取ってくる。正直、あまり興味はないが、素敵な人がいればという期待はある。

群馬の実家には戻りたくないが、フリーターで生きて行くのは大変だ、この不況のなか、風俗も値段が下がり、おまけに移民の外人が更に値段を下げて行く。

TPPと中国、ロシアとの冷戦は日本経済を滅茶苦茶にした。

正直、このアパート代も支払うのが大変だ。

今はもう皆が大学に行けるような時代ではない。今、19歳でこれから段々と自分の商品価値は下がっていくだろう。

少しいい感じの男がコメントしてきた。

その男のページに行ってみる、慶応大学と書いてある、結構好みなタイプだ。

メッセンジャーで挨拶してみる。

「こんばんわー」

佳子は基本顔文字を使わない、何時頃からか、顔文字やスタンプをやると馬鹿にされる風潮になった。

「こんばんは」

「暇だったんで、メッセしちゃいましたけど、迷惑ですか?」

「いや、可愛いな・・って思ってた子にメッセ貰って嬉しくない男はいないでしょ」

「慶応大学なんですか?」

「そうだよ、文学部」

「へー、慶応ってお金持ち学校じゃないですか」

「うん、オヤジが不動産を都内に結構持っててさ」

「え、そうなんですか・・凄いですね」

「スカイプ出来る?」

「はい、出来ます」

佳子はUSBのヘッドフォンを付ける。

「じゃ、IDはこれだから、掛けてみてよ」

「はい」

呼び出し音が長く感じる。

やっと繋がった。

「もしもし」

「はい」

「可愛い声だね」

「そうですか・・」

「うん、顔写真のイメージ通り」

「ありがとうございます」

「聞いていい?成島さんは既婚者?」

「いえ、違います」

「何歳?」

「19です」

「僕は21歳です。一浪しててさ、で、東京なんだよね?」

「はい、西荻です」

「そっかー」

「はい、山本さんも東京ですか?」

「うん、こっちは有楽町線の豊洲」

「そうなんですかー」

「成島さんは今何やってるの?ああ、仕事ね」

「言うの恥ずかしいけど、喫茶店のウェイトレスです」

「暇な日ある?」

「はい、明日早番なんで・・3時位には」

「オッケー、15時ね、会える?」

「はい!」

「じゃさ、渋谷にカステンドって、喫茶店あるの知ってる?」

「えーーと、分からないです」

「ハチ公像あるでしょ、着いたら電話して、番号交換しようか」

「はい」

成島佳子はふーとため息をついた。

本当に慶応大で不動産持ちならこれは当たりだ。

明日が不安でもある。

それから、喫茶店に風邪で休むと連絡した。

どんな服を着て行けばいいだろうか?

新調するか?

所持金は・・・・貯金を下ろすか・・・・。

清楚そうな恰好が良いだろう。

ドキドキしている。

フェイスブックを見る、山本さんは既に落ちたようだ。

私もビールでも飲んで早く寝よう。

友達に自慢したいが、止めて於こう本当に慶応生とは限らないし・・・。

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