第5話(4)

(4)

2019年12月2日

「これを飲め」

鈴木はマンションの部屋に帰るとそう言った。

「お、男前になったな」

馬鹿にしたような感じで佐藤さんが笑った。

俺は鈴木が差し出したコップを受け取った。透明な液体だ。なんだろう?

「えーと、これは?」

「安全だ、安心しろ、金が欲しくて来たんだろ」

「はい、飲みます」

それは甘い薬っぽい味の飲み物だった。

飲まないと言う選択は無かった。この部屋の男達は皆怖かったのだ。

だから、従うしかない。

鈴木が椅子を示して言った。

「座れ」

「は、はい」

俺は素直にふかふかの豪華な椅子に座った。

男達は佐藤と田中、鈴木はヘラヘラ笑いながらコッチを見ている。

「藤本、挨拶しとけよ、山本君に」

藤本と呼ばれた、PCに向かった男は顔を上げると、こっちを馬鹿にした顔で、言った。

「まぁ、よろしくな山本君、藤本だ」

「は、はぁよろしく」

「そろそろかな?」

「え、何がですか?」

「まぁ気にしないで」

藤本はそう言うとパソコンに目を移した。

佐藤が

「食いたいものや、飲みたいものあるか?」

と言ったので、「水くれますか?」

と言った。

佐藤は500mlのミネラルウォーターを渡してきた。

受け取ろうとしたが、手が上手く動かない。

「あれ?」

手が動かない、「え?」

鈴木が言った。

「効いて来たみたいだな」

「え、何がですか?」

「さっき飲んだ薬だよ」

「え、ちょっと待ってくださいよ」

「大丈夫、体が動かなくなるだけだ、藤本頼む」

藤本は机から立ち上がると面倒くさそうに、棚から大きめの箱を取り出す。

他の3人はニヤニヤしながらそれを見ている。

「ああ、携帯用意しといて」

藤本が言うと、佐藤が「了解」と言って、机の引き出しから携帯電話を取り出す。

スマートフォンだ。

「ちょっと痛いよ、我慢しろ」

藤本はデカいスポイトの様な針?注射器を持って近づいてくる。

「ちょ、ちょ、はぁめてくだしゃいぃ」

藤本は愉快そうに俺を見た。

「完全に薬が効いたな」

藤本はまず、首にスポイトのようなものを刺した、薬の性かあまり痛くない、次に腕、太もも。

「じゃ、一応拘束しとこうか」

椅子にあるでっぱりに皮のヒモで動けないように拘束された。

「頭は働いてるか?」

佐藤が言った。

俺は微かに首を振った。

「今、お前にマイクロチップを埋め込んだ。それからこの携帯だが、5メートル離れると、マイクロチップが致死量の毒をだすからな。それから、常に携帯はオンにしておけ、まぁ、マイクロチップにGPS機能やその他のセンサーが組み込まれてるから、俺たちに逆らったら、すぐに死ぬけどな。あ、マイクロチップは取ろうとしない方がいいぞ、即死する」

「・・・・・」

「お前、フェイスブックじゃ、結構人気ものだよな」

「・・・・みゃあ」

「んで、一週間に一度、女を連れて来い、ここにな、ここの隣の部屋を使っていい、お坊ちゃまの慶大生を演じろ。身分証も用意してやる。ターゲットが決まったら連絡しろ、良いな、役に立たなかったら、まぁ分かるだろ。それから、警察に行ったりしたらどうなるかわかるよな。ほら、40万ここに置くぞ、隣の部屋には一応、お前が住んでるように家具やパソコンは揃ってる。後な・・・・まぁいいか、兎に角、フェイスブックで出来るだけ若くて可愛い娘と仲良くなれ」

「そうそう、若いってのが重要かな?分かる限りの情報を聞き出して、仲良くなれよ」

鈴木が笑いながらそう言った。馬鹿にしたように。

俺は頷くしかない。口からは涎が垂れて、もう口が動かない。

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