第3話銀髪の仮面


「なんで…」


銀髪と青い目を光らせながらトオルの顔を見る


「ふふふ、本当に異世界人が…僕のところに」


あの可愛らしい顔立ちだったエルの顔は悪魔に似た笑顔で笑っていた

しかし、異世界人とわかる人間がいたのだ


「なら、話は早い!元の世界に戻る方法を教えてくれ!」


その言葉に顔をしかめ、首を横に振る


「帰らせないよ…帰らすわけないじゃないか…僕が生きてるうちに異世界人に会えるのは偶然じゃない…運命だったんだ…ふはは… 今日から君は僕の物だよ…」


早口言葉で何を言っているのは分からなかったが、最後の言葉だけ理解できた


「なっ…」

やばい…頭がいかれてる


椅子から立ち上がり部屋から飛び出す


「この城からは出られないよ」


「んなわけねぇーだろ!」


部屋のドアを開け窓の外を見ると先ほどまで日が照っていたのに今では月が光る夜であった


「は!?さっきまで昼だっただろ!? くそっ、あっちが入り口だったよな…」


城に入ってからの道を戻り、玄関先のドアを開ける

だが、開けた先には飛び出した部屋に繋がっており

エルが足を組み笑っている


「ふふ…おかえり」


「どーなってる…」


エルは立ち上がりトオルへと近づく


「この城は何かおかしいと思わないかい?」


確かにおかしい これだけ走り回ってまだエル以外には出会っていないということだ


「君は僕の城に入った時点で終わりなんだよ」


トオルはもう一度部屋から逃げようとするが、今度はエルも剣を抜きトオルの方へ追いかけてくる


「くそ、足早すぎだろ! なんかねぇーのかよ!!」


「ふはは!私の領地からは逃げれない!ましてやお前を助ける仲間など決して来ない!!」


トオルはその言葉に違和感を覚える

前にも聞いたことがあるフレーズ……

トオルは思わず呟く


「ーーーーフラグった」


その瞬間、誰かが窓をぶち破り二階の廊下、トオルとエルの真ん中に着地した

トオルとエルも足を止めその人物を見る


侵入して来た人物は青いフードを被り長細い剣を身につける

※※※※※※※※※※

窓を破り救世主が現れる

青いローブと被り顔は見えないが腕は細く、背が少し小さい


「やっと、本性を現したわね…エル・クラス」


その透き通るような声はその謎の人物から聞こえて来た、フードを取るとオレンジ色の髪の少女だった


「ふっ…まさかこのところ俺の領地をうろちょろしていたのがキャヴァリエ騎士団だったとは…面白い」


エルは狂気に満ちた顔が一旦治り、剣を下ろす


この少女はかなり名の知れた救世主なのかもしれない

と、希望を持つがエルの顔は再び笑い出す


「ふふふ、で?雑魚が一人増えてどうなる?」


確かに、エルのこの力はかなり手強い

凄腕の騎士だとしても勝率はおそらく五分五分

あと何人かいれば戦局は変わっただろう


「おい、あんたこいつ妙な力使ってくるぞ 多分、幻術だ!」


「幻術?」


エルは笑いながら剣をこちらに向ける


「アルプトラウム!」


剣の先から魔法陣が浮き上がり、エルの影から巨大な手が何本も浮き出て彼女に襲いかかる


「危ないっ!」


彼女は剣を抜き刹那に巨大な手を切り落とす

その姿は少女というより女神に見える


「…すご…いける!絶対に勝てる!」


トオルは確信する、この少女がいれば勝てるとエルの幻術ですら敵わないこの少女ならと…


それこそがフラグであった


急に彼女の様子がおかしくなる、剣を落とす


「おい!急にどうした!?」


トオルが駆け寄ると彼女は息が荒く声が震えていた


「光の加護が…」


「ん?どうしたのかな?急に倒れちゃって…ふふふ

まさか、今の幻術で参ったとかー?」


顔を傾け悪魔のような顔で笑い続ける


「まだまだ行くよ!」


再び、呪文を唱え幻術で襲う


「やばい、ほら逃げるぞ!…くそっ」


トオルは力が入らない彼女を抱え込み逃げ出す


「また鬼ごっこかい?」


幻覚の中ではいくら逃げてもあまり意味はない

それが分かっていても太刀打ちできる手札もない

救世主である彼女の様子もおかしくなり状況は逆に悪化した


「おい、あんた!幻覚破る魔法とかないのか!?」


「ある…けど…今はどうしてか使えない…」


トオルの背中で微かに聞こえるその声は先ほどの凛々しい声とは反対に少女のものだった


「くそっ、どうする…勝てると思ったのに!」


そう…勝てると確信した 彼女の剣さばき、凛々しい姿

あの圧倒的優位に立っていたはずのところで

何があった…


「フラグ…なのか…そんなのアホらし過ぎる でも…」


トオルは足を止め、彼女を下ろす


「悪い、ここで待っててくれるか?」


「なにを…?」


トオルはふらふらの彼女の手を握り笑う


「大丈夫!いい作戦思いついたから!」


作戦…いや、賭けだ



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異世界で俺は『一級フラグ建築士』 @Fuhehemaru

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