第1章〜聖籠の泉編〜
第2話城への手招き
一級フラグ建築士の定義を説明しよう
フラグが立つというのは「その場の雰囲気」「言葉」この二つが重なった時に起こるルートのこと
そして、気付いた時には案の定暗示した事が起こる
ここまでが、普通のフラグ建築士
その中でも
天賦の才がごとく無造作無差別無尽蔵にフラグを増築していき、老若男女おろか、二次元や三次元の壁すら越えるツワモノが存在する
※※※※※※※※※
巨大な城を目の前にして生唾を飲み込む
圧倒的な存在感で立ち尽くす城に思わず手を伸ばす
「ははは、こんなのアリかよ…」
「おい!貴様何の用だ」
門に近づこうとすると門番が一人鎧をまとった剣士が透の行く手を一本の槍で塞いだ
「用は無いんだけど、この城は入れないの?」
鎧を着た大男が一歩前に出てトオルを睨みつける
その顔は今日の朝見た向井先生に似ていた
「顔黒いっすね、目がどこか分からん」
「なっ!この無礼者、この場から直ちに消え失せろ
さもないと痛い目を見ることになるぞ」
腰の剣に手を重ねトオルを脅す
「ちょ待ってくれ!悪い冗談だ」
トオルがその脅しにビビり一歩後ろに下がると背中にドンっと誰かが当たる感覚がした
「ドーフ、何かあったのか?」
爽やかな声が聞こえ振り返ると銀髪をした美形の男性がトオルの肩を支えていた
「エル様!おかえりなさいませ!このよそ者が城の周りで怪しい動きをしていましたので話を聞いていました!」
トオルの肩を離し、顔を見てくる
この門番の態度とかなり高価そうな白いローブをはおって手にはいくつか宝石をつけているこの男
おそらく、城に住む人の一人だろうと推測できた
「いや、俺はただこの城が綺麗で見てただけだ!別に怪しいことなんてしてねぇーよ」
慌てて弁明をするトオルの目を見つめ、嘘は言っていないのと同時に彼はトオルの目の中に光る何かに目を奪われる
トオルの目の中にポツンと光るものが見えたのだ
「なるほど、もういいよ この城に招待してあげるよ」
「エル様!なにをお考えしなさるのですか!?この者は!」
「ドーフ、僕が招待するって言ったよね?」
門番の男はその言葉に口を閉じ、門は開かれ、エルに手招きされる
「さぁ、どうぞ」
「えと…こんだけ怪しい俺を入れるとか大丈夫なのか?」
これほど上手く事が進むとかえっておかしいと思い、頭に手を当てて笑い混じりに呟く
「ああ、ちょっと興味が湧いてね…」
「え、今なんて?」
「さっ、入って!」
エルは誤魔化すようにしてトオルの手を引き、城へと招待した
※※※※※※※
城の中は、外で見た時の期待通り素晴らしかった
床には赤いカーペットが敷かれ、部屋がいくつもあり廊下の一番奥がとても遠い
エルの後ろをついて二階の部屋に招かれた
客間らしきところだった、長テーブルが一つあるだけで他はなにもない
「さぁーどうぞ、座って」
トオルは手が指す方の椅子に座り少し離れた場所にエルが座った
「どうしたの?トイレかい?」
「いや、こんな広い部屋は初めてで落ち着かないだけですよ それにしてもすごい城ですね」
周りを見渡せば高そうな絵や花瓶が置いてあり、天井には絵画も描かれている
「この城を初めて見たのかい?」
「ええ、こんなの初めてで興奮しますよ!」
エルは机に肘をつきトオルの顔をじっと見つめる
「ふーん…やっぱりね…」
「やっぱりねって?」
「君、異世界からの使者だね?」
エルが笑いながら異世界という言葉を口にする
「なんで…」
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