第10話 気分転換に演奏を
なんか、うん変な感覚だな
学校の帰り道歩いてたかと思うと、違う世界にいて勇者?扱いされて、あまりにも色々唐突すぎて頭が追いつかない。
現にミヅキさんは顔がホヘーっとなってらっしゃいますしね。
「さて、まぁ現状のことを考えすぎると頭がパンクしそうになるしいっちょ、演奏でもして気分転換でもどうですか?ミヅキさん。」
「んん!!それはうんいいね!あっ、今ユーフォと鞄持ってくるからちょっと待って!」
「ほいよ」
演奏するか、と言うとあんなにあからさまに明るくなるなんてこりゃ完全に吹奏楽に毒されてますなって、人のこと言えないけどね。
ま、来るまでのあいだにチューニングとトランペットを温めておきますかねー。
にしても、楽譜も沢山あるなぁコンクール曲だけじゃなくて、今までの参考演奏とかの分もあるし、こりゃ選曲には事欠かなさそうだ
ケースの蓋を開けると、やっぱりワクワクした気分になるし、手に持てば落ち着けるしなんというか、どこにいてもこの感情は変わらないのはすごい事だな。
「....あの、勇者....さま?」
「はい?なんでしょう」
「それは....一体、何なのでしょうか?」
ふむ、まぁそうなるか。いくら王宮と言えど音楽隊でもない限り楽器なんて一生のうちで触ることもないだろうし、身近にある方が凄いことだもんね。
「これはですね、トランペットわかりやすく言い換えればラッパです、ここに来てからまだ色々、整理出来てないので気分転換に2人で演奏して、頭をクリアにしようと思ってて、なので良かったらそこで聞いていてください、聞く人がいる方が吹きがいがありますから!」
「あの、はい分かりました」
慣れた手つきで準備して、チューナーをベルに挟む薄くリップクリームをつけてくちびるを柔らかくして音を出す
「おっまたせぇー!って準備早!」
「まぁな、こっちの部屋だったし重い楽器じゃないしな」
「むー、そんなこと言ってもユーフォが居ないと成り立たない曲の方が多いんですからねー」
「何を仰る、先生に忘れられがちな楽器じトップを争うくせにー」
そんなことを言ってる合間にも、ミヅキはテキパキとユーフォニアムを組み立てて同じように準備を終えてゆく
「で!どの曲にしよっか!」
まったく、そのキラキラした目は面白いほどにワクワクが見えるじゃん、まぁ自分もそうだろうけどね。
「んー、そうだな.....、お、これなんかどうだ?『行進曲 SLが行く』」
「おぉ!これいい曲だよね!ユーフォメロディーやってるし、トランペットも出てくるし!」
「なら、決まりかな?一応はやった事もあるし尚且つ、チューバのとこはユーフォとパート被らないとこあるなら頼めるかな?こっちはクラのパートもやるからさ」
「あいあいさー」
明るいファンファーレと共に曲は始まって、イメージは今ぞ駅を出てゆく列車、そこから快調に進んで列車はトンネルに差し掛かるように低音が目立っていく、そしてトンネルを抜けると再び第1マーチが軽やかに走りだす。草原を静かに滑らかに進むように、第2マーチが始まって。鉄橋を渡るように本来ならドラムが入る、そして再びの主題、第1マーチに戻って華やかに段々と列車は終点に近づき始める、段々と音を上げて列車は完全に止まる。
うん、久々にやったし別パートもやったからおおっぴらにうまくいった!とは言えないし、絶対に高津先生が聞いたら怒るだろうけどでも、楽しく演奏は出来た、久しぶりに本当に心の底から楽しめた気がする。
「どうだった?ミヅキ?」
「うん!とっても楽しかった!」
「そっかなら良かった!」
まぁ、ミヅキも同じならよかった。
うん、そして約1名感激してるようで拍手が終わらない。
目まで潤ませてるし....
「.....!すごい......、素晴らしすぎます!私ひとりで聞いてたのが勿体ない!勇者様方は高名な楽器奏者だったのですね!」
「あっ、えっと、ご清聴ありがとうございました。で、うーんと高名な楽器奏者とかじゃなくてなんて言うかな自分の楽しみ?というかでやってるだけ?なんですけど...そこまで、感動してもらえて嬉しいやら恥ずかしいやらです....」
「まぁ!なんと!!でも、本当に凄かったです!次は、ぜひ陛下にもお願いします!!」
「まぁ、そうですね機会があれば.....」
(特殊魔法、
「ミヅキ、なんかいったか?」
「ん?別になんにも言ってないけど?にしてもさー、まさかあんな演奏でもこんなに喜んで貰えるなんて、嬉しいね!」
「そうだなー!また機会があったらやるか!」
「うん!」
多分、最後に部室で演奏してからそんなに時間経ってない筈なのに何だか、物凄い前回の合奏から間隔が空いた気がする。
それに、あれだけ頑張った曲も演奏できずに終わるのかなぁ。。。
今年の課題曲のマーチもいい曲だったし、自由曲は折角見せ場のあるパートだったのに両曲ともかなり良い所まで出来てたんだけど、本当に残念だな.....。
くよくよ考えても仕方ないけど....悔しさは残るかな、どうしても。
もし、帰れるのであれば帰ってコンクールに出たいその為には、練習もちゃんと続けなくちゃだな。
ミヅキもどことなく寂しげなのは同じように憂いてる感じか.....
「ミヅキ、今は先の事もどうなるか分からない日本に帰れるのかどうかも。でも、もし日本に帰れた時、そしてコンクールに参加出来た時の為に、練習は欠かさずしておこう」
「うん...、そうだね!カズトの言う通り練習しとかないとね!」
とりあえず、良かったかな?ミヅキも少し元気出たみたいだし、口に出す事で自分でも再確認になったから。
部屋就きのメイドさんに、滝のように質問された後に楽器をしまう。本当は軽く洗いたいけど水場がないからそれも出来ない。
楽器をケースに置いて、ふと眺めてるとクエスチョンマークが楽器の辺りに出ているのに気がついた。
なんだろう?とタップする真似をしてみると
ウィンドウが出てきた
「トランペット、異世界から持ち込まれたもの状態:良
今代勇者が演奏する事で、敵、味方に様々な効果の支援をつけられる。支援の種類は曲調に準ずる」
まぁ、異世界だから何かしらあるだろうと思ったけど、まさかこんな事まであるとはね....。
乾いた笑いをしながら、そっとケースの蓋を閉めてあとで女王様に聞こうと心の中で決めたのだった。
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