第4話 私が勇者!?
え、あ、えっ!?
「私が勇者っ!?」
「うむ、そうだ、勇者だ。」
「師匠、何言ってんの!?
ただ竜くんにベタつかれただけだよ?」
師匠、兵士さんになんか変な事
吹き込まれたんのかな!?
もしかして、あの兵士さん変な教団の人だったり!
「エルカ、少し落ち着きなさい。」
「師匠っ!」
落ち着けるわけがないじゃん!勇者って何?
お話の中で魔王を眠らせるやつだよね!?
私なんかに無理だから。
「あのね、エルカ。
竜くんにベタつかれただけと言ったが
それが大いに問題なのだよ。」
「へ?ちょっと、ちょっと待って師匠。
だって、いつも竜くんには頭なでたりするよ?
薬草を取りに行く時は......。」
「すまん、ちょっと水を飲んでくる」
師匠、頭を抱えて台所に行っちゃった.....
そんなに大問題なのかな?
竜くんとの触れ合いは......。
勇者....ねぇ、お話の中では2人いるんだよね。
1人は竜に乗ってお城に現れた勇者と
もう1人は、
王様がほかの世界から呼んだ勇者さん。
2人の勇者が力を合わせて
凶悪になっちゃった魔王を戻すために眠らせる
これが、私の知ってるお話。
「あっ!でも、師匠!私
聖属性の魔法、使えませんよ?」
そう、勇者の条件として聖属性の
魔法がなければ竜は寄り付かない。
「うむ、その事なんだがなぁ、
どうやら歴代の勇者達も大活性までは
聖属性の魔法が使えなかったものも居たようだ
しかし、大活性が近くなると
自然に使えるようになったそうだ。」
「へぇ.....なにげに師匠、
詳しいですねって感心してる場合じゃなくて
勇者なんて、出来ませんよ!
私、そんなに強くもないですし
出来るのは調剤くらいです.....」
ここまで言うと、
師匠は少し思案げにコップの水をグッと呷ると
「よし、エルカこれからギルドへ行こうか。
あそこであれば、魔法属性の測定も可能だしな」
ギルドかぁ、偶には回復薬の依頼が来るくらいで
あんまり、用事ないから久しぶりだなぁ~
「エルカ、プレート忘れるなよ?
一応登録はしてあったろ」
「大丈夫ですっ!師匠!
いつも首にさげてますから。」
「そ、そうか。」
私なんか、全然クエスト受けないから
ランクはブロンズのままだけど、
師匠のランクってどのくらいなんだろ?
そういえば、聞いたことも無かったなぁ
「ししょー、この人どうしましょうか?」
シャワーからあがった私の姿を見て気絶した兵士さんは
未だ、ソファーに横たわったままなのであった
「うむ、そうさなぁ揺すれば起きると思うぞ?
もうそろそろ、な。」
「兵士さーん!おはようございまーす、
朝ですよぉ?兵士さーん?」
「ん?んん......、あっ、そ、そ、の
おはようございます....」
「あの、これからちょっと用事が
出来てしまったので
もうそろそろ、出掛けたいのですけど....」
「あ、これは失礼しました!
では、これで失礼しますが
ナティルさん、例の件よろしくお願いします」
「まぁ、一大事だからなぁ
放っておく訳にも行かない、分かってる」
そういえば、
なんか釈然としないこの気持ちはなんだろうと
考えてると、
兵士さんが玄関で立ち止まって俯いたまま
「あ、あの!先ほどは....
その、すみませんでしたっ!
咄嗟の事でびっくりしたと言うか....
とにかくっ、ごめんなさい!」
それだけを結構大きな声で言って
物凄い勢いで頭を下げると、
門の方向へ駆けていってしまった
うん、でもまだなんか釈然としない.......
「まぁ、エルカあの青年はまだ若くて
純情なのだよ少しは察してやってくれ」
と師匠もなぜかフォローをしてるけど
「さて、それはそれとしてだな、ギルドへ行くぞ?
もう昼も過ぎてるからな、
夕方になると混雑するし
その前に済ませてしまおう。」
表へ出ると傾き始めの日に照らされた街は
緩やかな午後の様相へと移ろっている
いつも見慣れた町並みは、商人が行き交い
街に住まう人々が歩いている、
ごく平々凡々としたもので
それがまた、平和であることの幸せを表している。
師匠について、ギルドへと着くと
早めに終わるクエストを済ませてきたのか
冒険者がテーブルを囲んで寛いでいる
「おや、これはナティルではないか。
珍しいねぇ、君がここへ来るなんて。
明日は雪でも降るのか?」
「ほぅ、まだギルドで受付をやっていたとは
驚きだクラリス」
また、なにやら物騒な軽口というか.....
そんな軽口を叩けるような仲なんだろうけれど
ちょっとだけハラハラするのは
気のせいではないよねぇ。
「んで?ナティル。今日は何の用かな?」
「いや、なんて事無い
"私の自慢の弟子"の
魔力測定を行おうと思ってな」
「ほぅ、そうか.......。まぁ良い、こっちだ」
ギルドのカウンターを通って一つの扉に入ると
そこは、小さな採光窓が高い位置にある部屋だった
壁は真っ黒で、最高硬度を誇る魔黒曜石らしくて
荘厳な雰囲気の中に幾ばくかの威圧感が漂っている
たしか、魔黒曜石は1度だけ魔術の刻印を施すと
その効果は半永久的に続いて行くという特殊な鉱石
と記憶しているけど、合ってたかな....?
部屋の真ん中には、
八角形の台座が一つだけ置いてあり
記憶に間違いがなければ、
これが属性の検査器具だった気がする。
「ほら、エルカ真ん中に手を置いて
少しづつ魔力を流し込んでご覧」
師匠にそう促されて、
八角形の台座の真ん中の手形に手を重ねる
自分の体の中に意識を向けて、溜まっている魔力を
右手へと集めてゆく
すると、台座の手形から各点へと伸びている筋が
だんだんと光を放ち始めた
一つの筋は、触れれば火傷しそうなくらいの赤色に
その隣はか細い黄色が筋を示してる
揺蕩う綺麗な川のごとく一つの筋は水色に輝いて
通り抜ける風の涼やかさを感じさせる緑色が並ぶ
その後の筋は光を放たず一番最後の筋は
綺麗な白色を目一杯に光らせている。
火、雷、水、風、そして、光。
今まで無いと思っていた聖属性が顕現した
今まで、そう、調剤をしていた今までは
それこそ、火、雷、水、風の四属性しか適性がなくて
しかも、雷属性はあまり向いていなかった。
それがいつの間にか、聖属性が加わってる。
うん、やっぱりこれって師匠が言ってた
勇者って事になるのかな........。
「ほう、これほどまでに綺麗な聖属性の光は
久しぶりに見た
そして、火、水、風と物凄い適応が
高いではないか。」
「だろだろ、これが私の自慢の弟子だ!」
どうだ~!とばかりに胸をはられると
むず痒くて、少し気恥しい感じがある。
「まぁ、それはそれとして。どうだい?エルカ。
自分に聖属性が出たっていうことに
納得は出来たかな?」
「まぁ、これを見てしまうと......」
なんだろう?このなんとも言えない、気持ちは。
不安の方が強いけど、
それでもその中にやる気というか
やる気とは違うけど頑張ろう!という
気持ちが入り混じってる
「さて、では属性もしっかりと分かったし
帰るとするかね」
そう言って、測定室から出ていく師匠の背中を追う
ギルドから出る間際、師匠がふと足を止めた。
「そうだ、クラリス。
もしルクスが来たら伝えといてくれ
『再びの旅路へ付き合ってやる!』とな。
まぁ、多分クラリスにも
声は掛かっているだろうけどね。」
それだけ言うと、スイングドアを押して外へと出ていった
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