ペン子さんと放課後デート……かと思いきや、まさかの秋葉原!

 そして、放課後である。


「あ、あのっ……ゆ、ゆゆゆ雄太さんっ」


 帰る準備をしていると、朝の会話以来ずっとテンパった状態ののペン子さんから話しかけられる。


「な、ななななんでしょうか? ペン子さん」


 かく言う俺も、テンパっていた! 弥生め……なんか妙にペン子さんのことを意識してしまうようになってしまったじゃないか。


 その弥生はというと、「今日はボク、用事あるからっ♪」とか言って、さっさと帰ってしまった。乱すだけ乱しといていなくなるとはっ。


 そして、乙女は風紀委員の会議らしい。あいつは家に帰ってからは道場で剣道の稽古だし、その上「女の娘戦士」までやっているのだから、ほとんどプライベートな時間なんてないんじゃなかろうか。本当に真面目なやつだ。


 ま……そういうわけで、今日の放課後はペン子さんとふたりっきりになってしまうというわけなのだが……。


「あ、あの、そ、その……ええと、きょ、今日の放課後、時間ありますか?」


 そして、ペン子さんから思いもがかけないことを言われる。


 ま、ままま、まさか、まさかまさかまさかっ! で、でででデートのお誘いでしょうかっ!? ペン子さん、見かけによらず、大胆なっ!


「じ、じじじっ時間ですか? あ、ありますけどっ……」


 つられて挙動不審になりながら、答える。


「そ、そうですかっ……! そ、それでは、そ、そのっ……! ちょ、ちょっとっ、一緒に来てほしいところが……あ、あるんですっ……!」


 な、なんだろうか、そこは。い、いいところだろうか? なんだか妄想が広がっていってしまう!


「りょ、了解です! い、行きます! 行きましょう!」


 俺は胸が高鳴るのを感じながら、ペン子さんと一緒に教室を出た。

 もちろん、背中越しに「リア充爆発しろ!」だの「藁人形追加注文するわ……」「世界が滅べ」などの声が聞こえていたが。



 変に意識してしまっているので、並んで歩いていてるだけでも胸が苦しい。


 ……そりゃ「好き」とか言われたら――たとえ「ライク」だとしても――意識してしまうのが、年頃の男女ってやつだ。


 や、やっぱり、ペン子さん、綺麗だし、かわいいし、性格最高だし、あらゆるテクニックを持ってるし。彼女にするなら、こういう女の子が一番なんじゃなかろうか?


 つい、ペン子さんの横顔を盗み見てしまう。……と、ちょうどペン子さんと目が合ってしまった。慌てて、お互いに目を逸らした。


 ……な、なんだこの甘酸っぱい感じはっ! 男女交際とは無縁だと思っていた人生が、急にここまで変化するとはっ!


 というか、いかんぞ、これは……。ペン子さんとは四六時中一緒にいるというのに、こんな意識してしまっては。これじゃ、お風呂で背中を流すとか一緒の部屋で寝るとか無理ゲーすぎだろっ! 俺だって、年頃の男なんだからっ!


 ……ううむ、ずっと無言というのもつらい。ここは、話題を振らねばっ。


「え、ええと、ペン子さん……こ、これからどこへ行くんですか?」


 向かっている場所は、家とは正反対。駅のほうだ。


「あっ、はいっ! そ、それはですね……え、ええとっ……団体本部ですっ」

「……団体本部? それって、男の娘推進団体の本部ってことですか?」


「は、はいっ……。一度、本部との顔合わせをしたほうがいいかと思いましてっ。す、すみませんっ、先に言っておくべきでしたよねっ、ごめんなさいっ!」

「いえいえいえ、無問題ですっ」


 そうか……男の娘推進団体の本部に行くだけか。なんか、変に意識してしまっていた俺がバカだった気がする。てっきりデートだと思ってしまっていた。


 ちょっと、頭を冷やそう。ペン子さんは、あくまで、俺の支援をしてくれる職員なんだから。


 ……しかし、いったいどんな場所なのか、本部とは。前にペン子さんが言っていたことからすると、全員男の娘好きらしいが。


「あ、し、心配しなくても大丈夫ですっ、み、みんな、いい人たちですからっ。……ちょっと、変わっているかもですがっ……」


 ……楽しみなような、不安なような。

 ともかく、俺はペン子さんの手持ちの資金で切符を買ってもらって、電車に乗った。場所は、東京にある某駅だ。


 ……というか、ぶっちゃけ、秋葉原駅だ……。

 なんで、アキバに男の娘戦士推進団体本部があるんだ……。


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