第27話【超能力者の証明】

 自宅の前、そこには古泉一樹がいた。制服に通学鞄、完璧な下校途中スタイル。

「こんにちは」

 いったいお前はいつから俺の友人だ。そらぞらしい。古泉は馴れ馴れしく手を振りながら、

「いつぞやの約束を果たそうかと思いまして。帰りを待たせてもらいました」

「約束?」

「少しばかりお時間を借りていいでしょうか。案内したいところがあるんですよ」

「ハルヒがらみで?」

「涼宮さんがらみで」

 ほどなく俺の家の前に黒塗りのタクシーが停まる。古泉は俺にも乗るように促し、二人ともに乗り込むとタクシーは動き出す。目的地は日本有数の地方都市、その中心部。そこで車を降りる。


 人、人、人。


 その場で古泉に目をつむらされ手を引かれ一歩、二歩、三歩。

 目を開けていいと言われ、目を開くと——

 そこは灰色の世界。

 古泉に拠ればそこは次元断層の隙間で〝閉鎖空間〟なのだ、という。ハルヒの精神状態が不安定になるとこの空間が発生する、という。

 

 その謎の空間にいたのは——青く光る巨人。周囲にある建物を意味もなくただひらすらに破壊し続けていた。その謎の巨人のことを古泉ら『機関』に所属する人間は〝神人〟と呼ぶ。

 古泉ら『機関』に所属する連中は閉鎖空間の中に発生する〝神人〟を狩るのが役割だという。赤い光の玉に姿を変えた古泉とその仲間達が〝神人〟を狩る現在進行形の戦いを俺は見ている。

 古泉に拠ればある日突然この能力が身に付いていることが解ってしまったという。説明などしようがない。解ってしまうんだから仕方ないとしか。


 〝神様を狩っていいのかね〟、俺は率直にそう思うが。

 だがその神様を暴れるに任せておくと閉鎖空間が広がりいずれ現実世界にとって代わられるのだと、そう古泉は言う。それを防ぐため、現れた神人を片っ端から狩っていくのだそうだ。

 青く光る巨人は切り刻まれ、その各々の部位はモザイク状に煌めきながら消えていく。巨人がその姿を消したその後、閉鎖空間がガラスのドームが崩壊するように消滅する。俺はその一部始終をこの目で見た。

 古泉は紛れもなく超能力者だった。



 だがこれを他人に、それはつまりハルヒということだが、吹聴する気が起こらない。俺が催眠術に掛けられ、ありもしない幻でも見せられただけなのかもしれない。そんなことを言われた時俺には効果的な反論が思いつかないのだ。


 ともあれこれで『宇宙人の証明』『未来人の証明』『超能力者の証明』が出そろったことになる。自分の目で見たことさえも信用できなくなったら俺は何一つ信じられない人間になるから、当面それらについては信じようと思う。

 だが他人を、いや『ハルヒ』と言い切っていいと思うが、ハルヒにこれを信じさせる事は難しい。ヘタをすれば俺が〝残念な人〟になるだけで終わる。


『あなたが彼女に言ったとしても彼女はあなたのもたらした情報を重視したりしない』か。

 まったく長門はよく言ってくれたもんだ。

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