第23話【超能力者の事情】
この日の授業中、不機嫌なオーラを八方に放射するハルヒのダウナーな気配がずっと俺の背中にプレッシャーを与えていて、いや、今日ほど授業のチャイムが福音に聞こえた日はなかった。山火事をいち早く察知した野ネズミのように、俺は部室棟へと退避する。
部室で長門が読書する姿は今やデフォルトの風景であり、もはやこの部屋と切り離せない固定の置物のようでもあった。
だから俺は、一足先に部室に来ていた古泉一樹にこのように言った。
「お前も俺に涼宮ハルヒのことで何か話があるんじゃないのか?」
この場には三人しかいない。ハルヒは今週が掃除当番だし朝比奈さんはまだ来ていない。
「おや、お前も、と言うからにはすでにお二方からアプローチを受けているようですね」
古泉は、昨日図書館から借り出した本に顔を埋めている長門を一瞥する。すべてを知ってるみたいな訳知り口調が気に入らない。
「場所を変えましょう。涼宮さんに出くわすとマズイですから」
古泉が俺を伴って訪れた先は食堂の屋外テーブルだった。途中で自販機のコーヒーを買って俺に手渡し、丸いテーブルに男二人でつくのもアレだけども、この際仕方ない。
「どこまでご存知ですか?」
「涼宮ハルヒがただ者ではないってことくらいか」
「それなら話は簡単です。その通りなのでね」
これは何かの冗談なのか? SOS団に揃った三人が三人とも涼宮ハルヒを、人間じゃないみたいなことを言い出すとは、地球温暖化のせいで熱気にあてられているんじゃねえのか。
「まずはお前の正体から聞こうか」
宇宙人と未来人には心当たりがあるから、
「〝実は超能力者でして〟などと言うんじゃないだろうな」
「先に言わないで欲しいな」
古泉は紙コップをゆるゆると振って、
「ちょっと違うような気もするんですが、そうですね、超能力者と呼ぶのが一番近いかな。そうです、実は僕は超能力者なんですよ。そして超能力者は僕一人だけじゃありません。僕らは仲間と共に『機関』という組織を作っているんです」
==(中略)=====(中略)=====(中略)=====(中略)==
詳細は『涼宮ハルヒの憂鬱』(第一巻) P163〜P171参照
==(中略)=====(中略)=====(中略)=====(中略)==
「長々と話したりしてすみませんでした。今日はもう帰ります」と言って古泉はにこやかにテーブルを離れた。
俺は軽快に去りゆく古泉の背中が見えなくなるまで見送って、ふと思いついて紙コップを手にとった。
コーヒーを口に含みながら思う。ずいぶんあっさりと〝己の正体〟を言ったものだと。むろん今回も物的証拠は一切無い。
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