第2話【話しかけてみる】
「なあ」
と、俺はさりげなく振り返りながらさりげない笑みを満面に浮かべて言った。
「しょっぱなの自己紹介のアレ、どの辺まで本気だったんだ?」
両手を組み下を向いていた涼宮ハルヒが少し驚いたように顔を上げた。
「自己紹介のアレって……?」
「いや、だから宇宙人がどうとか」
「あなた宇宙人なんですか……?」
大まじめな顔で訊きやがる。
「……違うけどさ」
「違うけど未来人だとか?」
「……いや、そうじゃない」
「だったら話しかけないで……、あなたの時間が無駄になってしまうから……」
涼宮ハルヒになにかと何やかやと話しかけるクラスメイトも中にはいた。
だいたいそれはおせっかいな女子であり、新学期早々クラスから孤立しつつある女子生徒を気遣って調和の輪の中に入れようとする、本人からすれば好意から出た行動なのだろう。
「ねえ、昨日のドラマ見た? 九時からのやつ」
「見てないけど……」
「えー? なんでー?」
「知らないから……」
「いっぺん見てみなよ、あーでも途中からじゃ解んないか。そうそう、だったら教えてあげようか、今までのあらすじ」
「ごめんなさい」
話しかけられてもこんな感じなのだ。涼宮ハルヒは俺の後ろの席のため、そのやり取りは聞きたくなくても自然耳に入ってくる。
こんな調子を続けていたらそのうち話しかける奴もいなくなるのでは? 他人事ながらそう思ってしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます