涼宮ハルヒの純清(憂鬱な溜息編)
齋藤 龍彦
第1話【涼宮ハルヒ】
サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった————
んなことを考えつつ学区内の県立高校に初登校し、入学式を経て、一年五組という俺のクラスになった教室の中に、俺はいた。
担任の岡部なる若い青年教師は、ほぼ全編ハンドボールの話しを終えるとこう言った。
「みんなに自己紹介してもらおう」
頭でひねっていた最低限のセリフをなんとか噛まずに言い終え、やるべきことをやったという開放感に包まれながら俺は着席した。
替わりに後ろの奴が立ち上がり——
「あの……東中学出身の……、涼宮ハルヒです」
うん、柔らかそうで、なんか優しそうな声だな。そういう女子の声だった。
「——ただの人間じゃない人に興味を持ってます。この中に宇宙人な人、未来人な人、超能力者な人がいたら、わたしのところに来てください……以上です……」
さすがに振り向いたね。
戸惑ったような表情を見せながら、しかしクラス全員の視線は容赦なく彼女を射抜き、彼女は立ちすくんでいるように見えた。
長く真っ直ぐな黒髪、カチューシャを付けている。顔はこの上なく目鼻立ちが整い、芯が一本ビシリと通ったような強い意志を感じる瞳を長い睫毛が縁取り、だがその一方で薄桃色の唇は半開きになっていた。えらい美人がそこにいた。
涼宮ハルヒという女子はそれでもひるむことなくクラス中を見渡し、最後に大口を開けて見上げている俺の目を一瞬じっと見つめるとこれ以上は何も言わずに着席した。
一瞬目を合わせてしまった俺だから解る。
これはギャグではない。笑うところでもない。
涼宮ハルヒという女子はいつだろうがどこだろうが冗談など言わない。
常に大真面目な女の子だった。
のちに身をもってそのことを知った俺が言うんだから間違いない。
こうして俺たちは出会っちまった。
沈思黙考する。これはとてつもない幸運なのか、はたまたとてつもない不幸なのか。
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